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第一章 第4話「ガラスの美女を救い出せ!」

 俺はスライムの端っこをハンマーで軽く叩く。スライムがそこを引っ込めようとした瞬間に端からガラス化が始まる。ゴブリンは一瞬で全身ガラス化したけど、理由はわからないけどスライムのガラス化は遅い。

「あっ……」

 御崎さんが声を出した。

「固くなった」

「いまスライムがガラスになりました。これから少しずつ砕いて、落として行きます」

「さっき、ゴブリンにやったみたいな……あれって、君のスキル?」

「よく知りませんけど、たぶんそうなんだと思います……終わるまで動かないでくださいね、ガラス刺さるといけないから」

「ねえ。あたしまで、ガラスにならないよね?」

「人間はなりません。理由は、よくわからないですけど」

「君、名前は?」

「空吹圭太です」

「何であたしの名前知ってたの?」

「国交省の人に会いました」

「無事に出てくれたのね、あの人たち」

「はい。たぶん」

 新ルートの分岐口から出たら、あとは一本道なのでふつうは迷うはずがない。

「ねえ、人間はガラスにならないって……それ、もしかして試したの?」

「何かに喰われて片腕だけ落ちてたことがあって、それで試してみたんです」

「生きてる人間は?」

「ありません。でもいま御崎さんはガラス化してませんから、やっぱり人間には効かないんだと思います」

 話しながら俺はガラススライムを端から叩いて割って砕いて、手で御崎さんの体から剝がして落とす。御崎さんの片方の腕が全部出たところで、いきなり胸のあたりから『ぼろっ』と大きな塊が剥がれ落ちた。

「うわあ!」

 あせってそれを両手で受け止めたけど、それで御崎さんの胸を真正面に見ることになった。ブラジャーがガラスと一緒に剥がれ落ちたので、御崎さんが自由になった腕で隠すまで俺の目の前でものすごいボリュームのモノがぷるんぷるん揺れていた。

「……続けて」

 冷静な御崎さんの声で麻痺が解けて、俺はもう震えながら片方の腕にとりかかった。

「ガラス屋って……言ってたわね」

「家が……昔から、飾りガラスとか、作ってる工房です」

 俺は心臓がバクバクで、息も苦しかった。

「ガラス職人が、どうしてダンジョンで掃除屋やってるの?」

「掃除専門ってわけじゃなくて……何つーか、なりゆきです」

 俺は御崎さんの上半身からガラスを剥がし終えて、深呼吸してから下半身にかかる。胸と同じことが起こったら大変なことになるので、すごいプレッシャーだった。

「自分でやっちゃだめなの?」

「絶対、手切りますよ。叩きかた間違えると刺さるような破片も出ますから」

「そう……」

 御崎さんはちょっとため息まじりに言った。

「まあ、傷モノになったら君に責任取ってもらうからいいわ」

「えっ?」

 俺は思わずハンマーを引っこめた。

「冗談よ」

 笑いを含んだ声が頭の上から降ってきた。

「空吹君、いくつ?」

「16です」

「え? 高校生?」

「いま、休学してます。家業、継がないとならないんで」

 ハンマーで叩くたびに、御崎さんの白い脚が露出してくる。恐れていた通りの状態で、御崎さんの下着はガラスと同化してどんどん一緒に剥がれ落ちる。

 腰の左半分からガラスを落とし終えたところで、御崎さんはワークブーツだけの超ヤバイ状態になることが見えてしまった。

「あの……」

「どうしたの?」

「だめです……あの、パン、ティ、も……」

声は震えるし、息は苦しいし。それ以上にパンツの中がきゅうくつになって痛い。

「いまさら止めてとも言えないでしょ? いいから続けて、あいつらが戻ってくる前に」

 それもそうだった。ビデオカメラもライトもバッテリーもそのままなのだ。回収しに戻ってくるに決まっている。俺はできるかぎりの速さでハンマーを使う。

「ところでさ……外出るの、どうしたらいいかな?」

「あ……」

 御崎さんのぷるんぷるんで頭の中が一杯になっていて、俺は今ごろそれに気が付いた。

「ガラス粉入れるでかいクラフトの袋ありますから、ガムテープとそれで何とか」

 さすがに、死体袋に入ってもらおうとは思わなかった。

 下半身の右半分もガラスを砕いて払い落として……そして最高に危険な部分だけが残ってしまった。

「御崎、さん。あの……ここ……取れない、です」

 おヘソから下の『デルタ地帯』を覆っているスライムガラスは、たぶん御崎さんの「下の毛」と合体しているのだ。ハンマーで叩こうにも、ガラスの下が御崎さんの下腹部だから強く打てない。かと言ってそのままじゃガラスが刺さるから歩けない。

「取れ、ない?」

 御崎さんが恐る恐るそこのガラスに手を触れて、剥がそうとした。

「うっ!」

 痛そうに表情をゆがめて体を屈める。

「ホントだ、どう……しよう……」

「ガムテープ剥がすみたいに、思い切って……」

 俺が言うと、御崎さんは泣きそうな表情で小さく首を振った。

「だめ。下の方……ちょっと、入ってるの」

 一瞬、御崎さんが言った意味がわからなかった。それから思い切り動揺して顔が熱くなった。毛だけじゃなくて、もっと下の方からヤバイ部分にガラスが入っているのだ。

「あ……あ、あ……だめ。だめだめ、恐くてできない」

 脚の間に手を入れて、御崎さんはまた泣きそうな声を出した。

「これさ……下の。バキッって、折って取れない?」

 俺は御崎さんの肌に触らないように、危険な部分のガラスを調べてみた。

「手で折れる厚さじゃないです。前と一緒に取らないと……」

「それじゃ、君にお願いするわ」

「はあ?」

「それ、引っぺがしちゃって。あたしが悲鳴上げようがなんだろうが、力任せに取って」

「え? え? えっ?」

 恐ろしいことを頼まれてしまった。でもこれを外さないと御崎さんは歩けない。そして時間が過ぎれば過ぎるほど奴らが戻ってくる危険が増す。覚悟を決めるしかなかった。

「わかり、ました。やり……ます……」

 御崎さんは俺の前で体を屈めて、少し脚を開いて俺の肩にしがみついた。

「すい……ません。も、少し……脚、開いて、ください」

「こ、こんくらい?」

「はい……」

「君が……無垢な少年で、よかったわ」

 俺が無垢なのかどうなのか自分じゃわからないけど、いろいろ経験がありそうな美人がそう言うなら俺は無垢なのだろう。

「あの……下の方。中に、手。入れ、ちゃって……いいん、ですか?」

「いい。もう、全部まかせるから。でも指入れちゃだめよ」

「え?」

「いいから、はやくして!」

「はいっ! し、失礼……しま、す」

 心臓が爆発しそうで、体中に汗が浮いて震えがきていた。御崎さんの、開いた脚の間に手をさしいれてガラスをつかんだ。御崎さんの「危険な部分」の感触で、俺は体中に鳥肌が立った。

「しっかりして! 手、震えてるよ」

「は……はい……」

 ゴクッと喉が鳴った。何をどうやっても指は御崎さんの「危険なところ」に触れてしまう。次に右手で、御崎さんのおヘソの下あたりからガラスとお腹の間に指をおしこむ。

「う……」

 御崎さんがうめいて、ちょっと体を震わせた。左手で御崎さんのお腹にガラスのパンティが食い込まないように押さえながら、下の方を引き剥がした。

「あう……」 

 御崎さんの息が俺の耳にかかって、肩をつかんだ指に力が入った。俺の顔が半分くらい御崎さんの髪に埋まって、ものすごくいい匂いがして体中がドクンドクンしている。

「下の……方。とれ、ま、し、た」

「一気に。遠慮しないで、やっちゃって」

「はい」

 肌を傷つけないようにガラスの縁を両手で押さえて、強く前に引いた。

「いっ……」

 御崎さんがビクンと体を震わせる。爪が、俺の肩に食い込んだ。もう一度、強く引っ張る。

「あああああーっ!」

 御崎さんの悲鳴で耳鳴りがした。『ブチブチブチ』と毛が抜けるか切れていく感触が伝わってくる。

「痛い痛い、痛ぁーい!」

「うぐう……」

 両腕で頭を抱きかかえられて、顔が御崎さんの谷間に押しつけられた。俺は息ができなくなった。頭を振ると、右も左もふにゅふにゅした物体にめりこむ。

「あ……あっ、あっ!」

 もうガマンできなかった。俺の体の中でものすごい圧力が炸裂した。手が痙攣して、ガラスのパンティを一気に引き剥がしていた。

「あああーっ!」

「あっ、あ……」

 スライムガラスは御崎さんから全部取れたけど、俺は動けなくなっていた。美女に抱きつかれている夢のようなシーンだけど、現実はひどく格好が悪い。

「取れた? もう動いて大丈夫?」

「あ……はい」

 御崎さんは何度か大きく息をして、俺の肩に両手を置いて体を起こした。それから手で顔中に流れている涙を拭って、思い出したようにデルタのところをおさえた。

「ごめんね、こんなことさせちゃって」

「いえ……」

「これは……全部抜けたかもね」

 御崎さんは、デルタのあたりを指先でなでながら言った。それでまた、俺は鎮まりかけたドクンドクンが再発してしまう。

「おっきな、袋? あるんだっけ?」

「はい、カートに……」

 そう返事はしたけど、俺は動ける状態じゃなかった。何とか腰を上げて、変に前屈みの姿勢でカートまで行ってクラフト袋とガムテープを取り出した。

「ああ、いいから……あたしがそっち行く」

 御崎さんが開き直ったみたいにどこも隠さないままカートまで来て、俺の手からクラフト袋とガムテープを受け取った。その視線が、俺のジーンズを中から押し上げている盛り上がりをかすめていった。少しだけ、しみがにじみ出していた。

「空吹君……彼女、いる?」

「いえ……」

 中学高校とそんな相手はいなかった。当然、いまもいない。

「それが……なにか……」

 暴発させられた上に、何で彼女なしまで自白させられるのか。隠そうとしたけど声に不愉快さが出てしまった。

「いいの。いないんだったら、謝る相手がいないから」

 ショートブーツの中にもガラス片が入ったのか、脱いで逆さに振りながら御崎さんが行った。言っていることは何となくわかったけど、やっぱり納得できるものじゃない。

 俺はスライムガラスの屑をかきわけて、さっきチラッと見えたスマホとピンクの財布を掘り出した。財布はファスナーで閉じるタイプだから、中のお札は無事だと思う。大きなガラスの固まりには、御崎さんの下着なんかがいろいろ一緒に固まっている。

「これ……放っておいたら、やっぱマズいよな」

 クラフト袋とガムテープで何とか着る物を作ろうとしている御崎さんを見ないようにして、カートからホウキとちり取りとクラフト袋を引っ張り出した。

「スマホと、財布……ここに置いときます」

 スマホにはまだガラスのかけらがこびりついていたけど、まだ画面は点灯していた。

「ありがと」

 御崎さんのリアル胸型になっているガラスと超エロいアートのようになっているガラスのパンティは、壊れないようにそっとクラフト袋に収容した。ガラスの中にネックレスとドックタグが閉じ込められていたので、慎重にガラスを砕いて取りだしておいた。

「それ、どうするの?」

 残ったスライムガラス片を掃き集めていると、御崎さんが俺の手元を覗きこんで聞いた。クラフト袋を切って、水着みたいなモノを作ったようだ。

「これで、カフェとかの内装に使う飾りの特殊ガラスを作るんです。ネックレス……ありました。まだ細かいガラス付いてるんで、今はつけない方がいいです」

「ありがと……」

 クラフト袋製の水着みたいなものは、何とか御崎さんの危険な部分を隠しているだけでかえってエロい気がする。

「それで……どう、やって?」

「近くのコインパーキングに車があるの」

 この格好で電車やバスに乗るのではないと知って、俺は変に安心した。

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