初めてのお酒で、私は結構酔っ払っていたんだと思う。でもふらつくほどではないし、なんとなく身体がぼんやりとあったかくなってきた程度でお酒に強く産んでくれた両親に少し感謝した。
横で飲んでいた侑希はそこまで強くはないみたいで、ぼんやりしているのが分かった。本人は気づいていないようだけど、言うこともいつもみたいにハッキリしてないし、足取りもおぼつかない。そんな様子が可愛くて愛おしくて、何度も好きって言いたくなったけどグッと堪えた。お酒が入ると歯止めが効かなくなりそうになるのが自分じゃないみたいで少し怖かった。
侑希は私がお酒に強いとわかると少し安心したようで、そのままグイグイとお酒を飲んでいった。ここまで酔っていたら少しくらい甘えても大丈夫だろう。そう思って彼女の肩に頭を預けた。私の考えは当たっていたようで彼女に拒否されることなく受け入れられた。忙しかったしなんと言えば良いかわからなくてここ最近は侑希に触れられていなかったから、久しぶりに触れた彼女の体は心地良くて離れたくなかった。
しばらくそうしていたが彼女の方が眠そうなので、私もつられて眠りそうになる。缶を持ち上げると半分くらい中身が残っていて、私はそれをグイッと飲み干した。鼻を通り抜けるアルコールの味にはまだ慣れない。そうして私たちは寝る準備をするために歯を磨きにいった。
鏡の前で2人並んで歯を磨いた。付き合ってるカップルみたいだな、となんとなくそう思った。毎朝こうやって2人揃って歯を磨いて、鏡越しに笑い合えるそんな未来は来るんだろうか。アルコールで赤くなってる侑希の顔を鏡越しに見ながら、私はふいっと顔を背けた。これ以上彼女のことを見ていれば、思いが溢れてしまう気がしたから。先に歯を磨き終わったらしい侑希は洗面所を出て、私も遅れて部屋の方に戻った。
洗面所から戻ると、先にベッドに腰掛けていた侑希の横に、ほとんど距離を取ることなく座った。なんとなく、もう歯止めが効かないんだなって分かった。遅れて回り出したアルコールは私の思考を着実に奪っていった。最後に一気に飲み干した缶を思い出して少し後悔したけど、その後悔すらあっという間に忘れてしまった。
すぐそばに侑希の顔があって、甘くて優しいシャンプーの香りがどうしようもなく鼻腔をくすぐって。
結局私は、自分の欲望に逆らうことができなかった。
彼女の唇の柔らかさを感じて、じんわり伝わってくる温かさを感じた後、そっと近づけていた顔を離した。
「んー、もう。やめなさいよ」
侑希に拒否されるかと思っていたのに、帰ってきた反応は意外なものだった。よく考えれば私たちがキスするのは初めてじゃない。付き合ってないのにキスしてたんだから、今の状況も高校生の時のあの頃と何一つ変わっていないのかもしれない。
「まだ酔ってる、っぽい」
「もう寝るわよ」
「やーだっ」
横にいる侑希のほっぺを両手で挟み込む。もう一回近づけた顔は、侑希の手によって防がれた。
「これ以上は、だめよ」
「なんで」
ムスッとして、私は侑希の手をぺろっと舐めた。
「ひゃっ、な、なにするのよ」
「うるさい」
もうどうにでもなれと、噛み付くように彼女の唇にキスをした。パシパシと肩を叩かれるけど、決して引き剥がそうとはしない侑希。形だけの抵抗なんて聞いてやるものか。
私はそのまま唇を喰み、彼女の口がうっすら開いた瞬間を見計らって舌を入れた。
舌を入れたのは初めてだった。
私の腕の中で力が抜けていく身体を支えながら、私は彼女に夢中になっていた。何もかもがどうでもよくなっていた。とにかく、目の前の彼女が欲しかった。