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月華の儚き恋
手毬 茉莉花(夜霞)
文芸・その他ショートショート
2024年07月20日
公開日
5,493文字
完結
月明かりの下で、今も、君を想う。

かつて、わたしは恋をしていた。
今でも忘れられない恋だった。

とあるお屋敷に住む異なる世界からやってきたと言われている女性ーー「かぐや姫」に。

ある時、そんな「かぐや姫」が病に侵されている事を知った。
「かぐや姫」を助ける為には、とある山にしか咲いていないと噂されている、白い光を放つ特別な花ーー月下美人の花が必要だと。

わたしは「かぐや姫」を助ける為に、その山に入って行ったのだったーー。

そうして、わたしは月下美人の花言葉通りの、一夜だけ咲いて萎んでしまう恋ーー「儚い恋」を経験する事になるのだった。


————————————————————
月下美人自体は、実在しています。
これは、そんな月下美人の花言葉にまつわるお話です。

第1話

もう幾日、歩いたのか覚えていなかった。

最後に食事を摂ったのはいつだったか。

最後に喉の渇きを潤したのはいつだったのか。

わたしは額を流れ落ちる汗を何度も拭いながら、ゆっくりと月明かりの下で輝くそれに近づいていく。

この一輪を見つける為だけに、わたしはこの地を彷徨った。

途方のない森を抜けて、獣が横行する山の中を歩いて。

見つからないのではないかと、諦めかけて帰ろうとした時もあった。

けれども、わたしは全く後悔していなかった。

それも、この花を見つけた時に全て忘れた。探し続けた甲斐があったからだった。


ーーこの一輪で、君が元気になるのならば、わたしはどんな事も成そう。


そうして、わたしは光輝く白い花を手折ったのだった。

手折った時に、白い花から漂った優しい匂いと雪の様な細かく小さな光が、周囲に漂ったのだった。

白く大きな花びらを広げた月下美人ーー月華の花を。

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