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第2話

葉月の背後から来た見知らぬ男子生徒は足早に近寄ってくると、男子生徒と葉月の間に割って入ってくれる。

月矢でも無ければ、知り合いでも無かったが、不思議とこの男子生徒からは恐怖を感じられなかった。

葉月の腕を掴んでいた男子生徒の手を払うと、そのまま葉月を背に庇ってくれたので、葉月は助けに来てくれたこの男子生徒をじっと見つめる。

袖のラインから月矢と同学年の男子生徒なのだろう。うなじにかかるかどうかの黒髪に、第一ボタンまできっちり止められた制服。腕に付けた赤い腕章には「生徒会」と書かれていた。


「せ、生徒会長……!?」


葉月の手を掴んでいた男子生徒が呟いた。そんな生徒会長と呼ばれた男子生徒に怯んだのか、男子生徒たちは及び腰になって距離を取ろうとする。


「自分のクラスを放ってこんなところでナンパか? それともここまでこの子を連れ込んで、いかがわしいことでもしようとしたのか?」

「な、何もしてないですよ。な、なあ?」

「ああ、道に迷っていたみたいで声を掛けただけだ。そうだよな?」


男子生徒らに同意を求められて違うと言い掛けたが、男子生徒たちは余計なことを言うなというように無言の圧をかけてくる。

これ以上、話を大きくしたくないと葉月は渋々頷いたのだった。


「そうか。迷子なら、生徒会である俺が放送部まで連れて行く。お前達は文化祭に戻れ」


生徒会長が顎で追い払うと、男子生徒たちは脱兎の如く逃げ出す。

完全に姿が見えなくなると葉月の膝からは力が抜け、頬を涙が伝ったのだった。


「ど、どうした!? やはり、あいつらに何かされたのか!?」


葉月は泣きながら、何度も首を振った。説明をしたくても言葉が嗚咽になって上手く話せない。

そんな葉月を前に生徒会長は隣に膝をつくと、泣き止むまで側にいてくれたのだった。

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