鳥羽差市の裏側、サバト。
そこの元締めであり、今まで行方をくらましていたリズさんと、ついに再開することができた。
「バフォメットは、その時の元締めと初めて出会った時に話したんだって。自分の娘を、作るためにって」
10年前、バフォメットは本当にキャンプ客を殺害していた。
「でも……そのせいで……10年も苦しみ続けている人がいるんだよ!?」
「でも、そのおかげで……マウはイザホと出会えた」
だからこそ、ワタシは存在し続けている。
10年前の事件がなければ、ワタシは作られず、マウと出会うこともなかった。
“リズさんは、この事件の犯人が誰か、知っているの?”
「!!」
それを教えてくれたリズさんも、なにかを隠しているみたいだった。
「そうだな……よし! もう白状しよう!! ふたりとも、席についてくれ」
瓜亜探偵事務所に戻ってきたワタシたちは、フジマルさんの推測を聞いた。
マンション・ヴェルケーロシニ……そこで起きた裏側の世界。
ハナさんに羊の紋章が埋め込まれた画用紙を渡せたのは、マンションの住民である可能性が高いこと。
そして、目星のついている相手に対する確かな証拠を見つけるため……フジマルさんは他の黒魔術団とともにサバトに戻ることになった。
その夜、フジマルさんの耳が隣の部屋に住むナルサさんに届けられた。
マンション・ヴェルケーロシニの前で見つけた人影を追って、ワタシは途中で合流したスイホさんとともに鳥羽差署までたどり着いた。
そこにあった羊の紋章から裏側の世界へ……さらにサバトを挟み、また別の裏側の世界へと移動していった。
道中、知能の紋章を失って元の猫に戻ってしまった、シープルさんも見かけた……
その中で、スイホさんは語ってくれた。
「……イザホちゃん。たしかにあなたの胴体の持ち主は……この女性よ」
スイホさんは大学の学園長の娘であったこと。
その大学を阿比咲クレストコーポレーションが買い取った際、交渉に出たのがその弁護士……ワタシの胴体にあたる人物だったこと。
買収された大学が使っていた山の中の紋章研究所は……今は廃虚になっているはずだ。
「……説明してほしいのは、こっちのセリフだよ。スイホちゃん」
「ずっと……ずっと……握られていた……あの時は幼稚園の……ガキだったのに……」
そんなスイホさんは10年前……その弁護士を殺害していた。
他の5人が殺されたことに……便乗して。
「私は……私はね……あの時のことを……それでも知られたくないのよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooo!!!!」
「イザホッ!! 危ないッ!!」
スイホさんの放った弾丸に、マウは撃たれた。
そして……ワタシの目の前に立っていたのは……
「私は……この鳥羽差市を愛しているッ!!」
インパーソナルとなった、フジマルさんだ。
フジマルさんの……命が……人格が……存在が……消滅してしまったことを……理解して……
「……!! イザホ!!」
目の前から、マウが消えてしまった。
マウ……どこに消えたの……
マウ……いたら返事してよ……
マウ……お願いだから……
マウ……マウ……マウ……