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サイドストーリーNo.19 安心できる場所

 少し前、バスの中でマウとホウリさんに包帯を巻いてもらっていた時……


「ねえホウリさん、前から気になったこと、聞いていい?」


 マウはホウリさんを見てたずねた。


「どんなことですか?」

「えっと……ちょっと聞きにくいことかもしれないけど……」


 至って穏やかな表情のホウリさんに、マウは一度だけ目をそらす。


「ホウリさんって、どうしてサバトと鳥羽差市で性格が変わるの?」

「……」


 あまりに直接的過ぎたのか、ホウリさんは戸惑ったように視線をあちこちに向けていたけど、すぐにうなずいてくれた。


「その質問、よく言われるんですけど……アタイ、サバトの方が落ち着くんですよ」


 ホウリさんは、まるで居心地がよさそうに胸に両手を当てる。


「……このサバトが?」

「ええ……鳥羽差市では……あまりいい思い出がなくって」


 おととい、共に裏側の世界に引きずり込まれた時のクライさんの話が、紋章の中で再生される。

 ホウリさんは、10年前の事件で父親を失っている。殺されたわけではなく、責められることに耐えきれなくなって……自ら命を絶ったんだっけ。

 たしか、ホウリさん自身もいじめにあって、それであのような性格になっていたとクライさんから聞いた。


「アタイは、このサバトに迷い込んでから……こっちの方が過ごしやすいって思ったんです。陰口でどこから責められるかわからない鳥羽差市より、相手に不快だと思われたらすぐに殺されるこちらの方が、気が楽なんですよ……」


 窓の外に映る森を眺めながら、ホウリさんは笑みを浮かべていた。


「……それじゃあ、どうして鳥羽差市で占い師を?」

「ええ……アタイを助けてくれた人が、ぜひそうしろって言われて……よくわかっていないけど、やっているんです。占い師を」




 ワタシは、初めてホウリさんと出会った光景を、胸の中で再生する。


 ――ホウリは疑われることには敏感だが、信用してくれる人に対しては――

 ――恩義を感じることができるやさしさを持っている――


 フジマルさんの、言葉だ。




「……なあ、ホウリ。もうそろそろいいか?」


 そのフジマルさんは、まだ向こう側の窓を見ていた。


「ああ……もうそろそろ外の景色も飽きてきたんだが」


 シープルさんも、同じ状況だ。




「もうふたりとも、とっくに着替えちゃっているよ!!」




 マウのツッコミに、ホウリさんは心からの笑みを浮かべた。

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