昨日、バフォメットの前で気を失ったワタシは、丸1日起きることがなかった。
目が覚めると、ワタシは不笠木総合病院の病室にいた。
どうやら、廃虚の前で倒れていたワタシたちを、フジマルさんたちが発見して救急車を呼んでくれたらしい。
「俺様の顔に見取れている死体さんよ、話してもらうぜ。どうしてこんなところに帰ってきているんだ?」
病室でワタシたちの前に現われたのは、不笠木総合病院の院長であるジュンさんだった。
「アイツはもう死んだんだ。体をバラバラにされて、脳みその機能が停止した瞬間に……」
ジュンさんはワタシの右足……10年前の事件で命を落とした男の子の父親だった。
そして、10年前にお母さまの要望でワタシを作ったのも、ジュンさんだ。
「こんな時に休みをとるなんて、不謹慎ですよね……」
そして、この不笠木総合病院に訪れたのは、リズさんたちの担任教師であるテツヤさんだった。
テツヤさんは以前からストーカー被害に悩まされており、そのことを友人のジュンさんに相談するために有給休暇をとって会いに来たのが……建前。
「……なっ……テツヤ……てめえ……ッ!!」
「私の相談は……ジュン、君に作品の一部になってもらうことだよ」
テツヤさんは、仮面の人間のひとりだった。
ジュンさんを地下駐車場に誘い出し、殺害してインパーソナルにしようとしていたのだ。
「嫌だぁ!! 作品にはなりたぐないッ!! 作品にされる側には立ちたぐないぃッ!! 作品を作る側になりだいんだあああああぁぁぁぁぁぁッ!!」
「もうキミに待つ人なんていないよ。罪という見えない紋章は取り消せない。死人に口なしだからね」
ジュンさんの殺害に失敗し、仲間によってインパーソナルにされたテツヤさんは、裏側の世界でワタシたちによって死体となった。
その裏側の世界では、テツヤさんが事件に関与した理由、彼を始めとした仮面の人間をまとめる人物の存在、そして……
「……どうしてなの。“フジマル”さん」
「イザホ……マウ……休めと……言っただろう?」
黒いローブを身にまとった、フジマルさんだった。
フジマルさんは、なにも言わず、ワタシたちの前から姿を消した。
「イザホ、だんだんそろってきたよね」
不安な出来事が続くけど、その分事件の内容が明らかになりつつある。
ワタシの目的も……確実に近づいている……
そんな気持ちを胸にマンション・ヴェルケーロシニの1004号室に帰ってきたワタシたちを待っていたのは……
「リベンジッ! マウキィーック!!」
「ひぎゃあ!!?」
……占い師の、ホウリさんだった。