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サイドストーリーNo.6 趣味

 警察署に向かう道中、ワタシは今日の朝ご飯のことを思い出していた。




「イザホ、そろそろコンロを止めたほうがいいね」


 台に乗っているマウの意見に従って、ワタシはIHコンロを止める。

 コンロの上にはフライパンがあり、目玉焼きがジューという音を立てて乗っていた。


 フライ返しで目玉焼きをすくい上げると、黄身を潰さないように皿に移した。

 皿にはすでにレタスとキュウリ、ミニトマトという先客がある。


 その時、ちょうどトースターがチンと威勢のいい声を上げた。




 ダイニングルームのテーブルに並んだのは、コーンスープにサラダと目玉焼きが二人前、そして一人前のチーズを載せた2枚のトースト。

 これ全部、ワタシとマウで作ったんだ。


「うーん、初めてにしてはなかなかおいしいよ、イザホ」


 コーンスープをスプーンですくっていると、箸を手にマウが感想を言ってくれた。

 マウの目玉焼きは半分がなくなっていて、黄身が皿の上に流れている。


 よかった。実はちょっとドキドキしていたんだよね……

 うん、自分も食べてみてなかなかの味。あとちょっと味付けを濃くしたいとは思うけど。


「イザホ、その顔……料理を趣味にしたいって思っている?」


 あ、やっぱり顔に出ちゃった?


「いいんじゃない? ボクは趣味は何個あってもいいと考えているし」




 ワタシがお屋敷にいたころ、いつもお母さまが料理を作ってくれた。

 そのころ興味があったワタシも手伝ったことはあるけど、お屋敷のキッチンにはガスコンロがあったから、お皿を洗ったぐらいしかしていない。

 本当に、火だけはダメだから……


 その点、このマンションのコンロはIHコンロで助かった。

 火じゃなくて電気の熱で暖めるから、怯えずに料理ができる。

 一度でも料理をしてみたかったワタシは、その点でメール越しのフジマルさんにそれだけは実現するように頼んだんだっけ。




 ワタシはもう、残りわずかとなったコーンスープだけだった。


「さて……ようやく巡り会ったね、マンゴーちゃん」


 一方、マウはコーンスープもサラダも目玉焼きもすべて食べ尽くしていた。

 残っていたのは……トーストの代わりの、昨日食べそびれてしまったマンゴーコッペパンだ。


 ……マウはすごい嬉しそうにほっぺを桃色にしながら、一口。


 一口ごとに桃色のほっぺに手を当てながら、「うううーん」と幸せそうな声を出していた。




 全部ワタシとマウが作ったといっても、今回の朝食のコーンスープは実はインスタント。


 昨日も自炊が出来なかったからトーストにしたけど……いつかは自炊したご飯と手作りの味噌汁を食べたいな。


 この趣味が上達したら……マウのためにマンゴーを使った料理でも作ってみようかな?

 もちろん、マウのマンゴーのルールに則ってね。

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