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【  あとがき  】そして【  エピローグ  】


 いかがでしたか? オロボ46です。


 最後まで【  章紋のトバサ  】を読んでいただき、ありがとうございます!

 イザホとマウの物語は、あなたにどんな紋章を残したのでしょうか。


 去年の9月に連載を開始して、はじめてTwitterに手を伸ばし……

 その後、いろんな方と出会えて……配信などもはじめて……

 そしてついに12月31日、久しぶりの完結に至りました。


 途中、作品のオマージュ具合に悩んだり、執筆速度が落ちてしまったりしてしまいました。下書き共有ギミックも、まだまだ最大限に実力を引き出したとは言えないかもしれません。


 それでも、たくさんの方々に支えられ、完結まで駆けつけることができました。


 月並みの言葉になりますが……

 ゲーム「Deadly Premonition」を始めとしたこの物語に大きな影響を与えた作品の作者・制作者さま、

 読書配信、朗読配信で読んでくださった配信者のみなさま、

 そして……ここまで読んでくださったみなさまに、改めて感謝の意を述べさせていただきます。




 【章紋のトバサ】、そして【フランケンシュタインの魔女】の物語はひとまずここで幕を閉じますが、少しずつ進化していくので、ちょくちょく鳥羽差市に遊びに来てくださいね。




 この物語を気に頂けたら、この物語の感想、お待ちしております!






 最後までふたりの物語を見届けてくれて、本当にありがとうございました!








 また次回作で会いましょう!!









 最後に、








 この物語が――




















【後書き】














「待ってよー、イザホー、クライさーん」


 ワタシがクライさんとともに、バックパックの紋章に収まりきれない荷物を車の荷台に積めていると、紙袋を抱えたマウが走ってきた。


「あ……悪いね……マウちゃん……」

「まったくもー! クライさんがここまで買うなんて思わなかったよー!」


 謝るクライさんに対して、鼻をブッブッと鳴らすマウ。

 そんなマウに、ワタシは喉に埋め込んだ声の紋章で話しかける。


「だけど、道の駅に寄っていこうって提案したのはマウだよね?」

「まあね。でもボクは食事していくつもりで言っただけで……近くにホームセンターがあるなんて聞いてないよ」




 お母さまに、ワタシの声を聞かせてから7時間後の11時……


 鳥羽差市への帰路の途中、ワタシたちは昼食を取るために道の駅に訪れていた。

 その道の駅の隣に立っているホームセンターを見た瞬間、クライさんは寄ってみないかと声をかけたのだ。




「まさかクライさん、登山始めるなんてね」


 自動運転で走る車の中、マウは後ろの荷台に載せた紙袋を振り返りながらつぶやいた。


「前から興味があってさ……自分も……やってみようかなって……この時期に……」


 運転席でクライさんは照れるように缶コーヒーを飲む。


「ふーん、それじゃあ紙袋の中にあったネックレスは誰の?」

「ごぶっ!!」


 驚きすぎて気管に入ったのか、クライさんは咳き込み始めた。


「あのネックレス……クライさんが付けるとは思えないからなあ……包装紙も、誰かにプレゼントするような高級そうなものだったし」

「べ……べつに告白するわけじゃないからな! これはお世話になった人にあげるだけで……結婚を前提に付き合ってくださいなんて、絶対に言わないからなっ!!」


 今まで見せなかった、顔を赤く染めたクライさんを見て、ワタシはマウとともに笑い合った。


「ボクたちも、帰ったらいろいろ準備しなくちゃね」


 マウの言葉に、ワタシはうなずく。

 そして、喉に埋めた声の紋章を青色に光らせよう。


「これから結婚式の予定に……探偵の仕事を再開する計画だったよね」


 ワタシは声を出すとともに、口を動かす。


「……口、うまく動かせている?」

「うーん、ちょっとずれていたかな?」


 ワタシは10年間、しゃべったことがなかった。

 だから、口の動きと声がうまく合わせることが難しい。これから、練習していかないと……




「あ、そうそう……たしかイザホのお母さんの代わりに、クライさんがボクたちの所有者になったんだよね」

「うん……そうだけど……」

「え!?」


 思わず、口を開かずに声を漏らしてしまった。


「イザホ、ボクたちは法律上、お母さんのペットという扱いだったでしょ?」

「うん。だからお母さまが死んだ後でも、親戚のフジマルさんが……」


 そこまで言って、ワタシは喉を手で塞いだ。

 フジマルさんは……もういないんだった。


「だから、代わりにクライさんが引き取ってくれることになったんだ。昨日、イザホがぼーってしている間にそう約束してたんだよ」

「自分が勤まるかどうかはわからないけど……最善は尽くすよ……フジマルさんの事務所での仕事もできるように……やってみるから……」


 ……そういうことだったんだ。


「だから……なにかあったら自分に相談して……依頼のことでも……生活のことでも……」

「……ありがとう。クライさん。クライさんもなにか事件があったら、ワタシたちに相談してほしいかな」

「あー! それボクが言おうと思ったのにー!!」


 悔しそうに耳を立てるマウの頭を、ワタシは撫でてあげた。









 窓に映る景色は、青く染まった空から、




 暗闇へと、染まった。








「……まさか、また渋滞に巻き込まれるなんて……」


 マウはうんざりしたように鼻をブッブッと動かしていた。

 今さっき、鳥羽差市に入ったばかりだけど……時間は19時。すっかり遅れちゃった。


「おなか……減ってきたね……どこかで食べようか……」

「うん。またこの前みたいに、紋章が消えそうになる羽目はごめんだから」


 ワタシが冗談を言ってみたりしていると、




 マウのスマホの紋章から着信音が聞こえてきた。




「……うん。うん! わかった!」


 マウは通話を切ると、嬉しそうな眼差しをワタシとクライさんに見せる。


「ふたりとも、喫茶店セイラムに行かない?」











 車から降り、森の中をマウとクライさんと歩く。


 やがて……喫茶店セイラムが見えてくる。



 その窓からは、たくさんの人影が見えた。


 そのうちの小さな人影がひとつ、ワタシたちを指さして席を立つ。


 それとともに、人影たちは喫茶店セイラムの扉がある位置へと移動して……




「イザホさーん!! マウさーん!! クライさーん!!」




 扉を開けた紋章研究所の職員であるアグスさんが、大声で呼びかける。




 その後ろにいたのは……




 両手を挙げて、こちらに手を振る小学生のアンさん。


 めんどくさそうにあくびを開ける、紋章整備士の二足歩行の猫、シープルさん。


 遠慮がちに手を振る、占い師のホウリさん。


 腕を組んで笑みを浮かべている、病院長のジュンさん。


 ジュンさんの足元で、片手を上げる犬のナース、コーヴィンさん。


 そして、笑みを浮かべてうなずく喫茶店の店主……イビルさん。




 みんな、仕事終わりに喫茶店セイラムを訪れたら、たまたま被ったらしい。


 そこで、せっかくだからワタシたちも誘おうと、ジュンさんが提案してアグスさんが連絡してくれたんだ。




「3人ともー! 早く来るっすよー!!」




 アグスさんの言葉に、マウとクライさんは歩きはじめる。




 そして、マウが立ち止まって振り返った。




「イザホ? 行かないの?」

「うん……」




 声を出した声の紋章に、手を当てる。


 実は……不安だった。

 この現代の事件の犯人であるウアの声を移植したワタシの声を、聞かせることが。


 まだこの街全体にウアが犯人だったことは広まっていないと思うけど、それでもこの事件で命を落としたことは、みんな知っている。


 だから……この声を拾うすることに、まだ勇気がでない。




「はやく行こうよ。イザホ、マウ」




 背中を、誰かに押された。


 思わず振り返ると……




「……リズさん!?」「もうだいじょうぶなの!?」




 マウとともに、思わず声を漏らしてしまった。




「うん! 今日1日だけ許してもらった!」




 サバトの元締めであり、喫茶店セイラムの店主の娘であるリズさんは、ワタシの首に埋め込んだ声の紋章を見つめていた。




「その声……ウアの声だけど、イザホ独特のイントネーションがあってステキだよ」




「……そうかな? ワタシの声……ステキかな?」




「うん!! だから、みんなに聞かせてあげてよ!!」




 ワタシとリズさんで会話を交していると、「ねえ……」とクライさんの声が聞こえてくる。




「みんな待ってるよ……早く行こう、イザホちゃん、マウちゃん、あとリズちゃん」




 ワタシたちはうなずいて、クライさんとともにみんなの元へ向かった。









 喫茶店セイラムの入り口に、順番にひとりずつ入っていく。









 最後にワタシが、開いていた扉のドアノブに手をかける。







 そして、誰もいない後ろに……







 だけど、どこからかワタシたちを“物語”として見てくれている、見えない誰かに向かってこう呟いた。

















「この物語が、誰かの紋章になりますように」















 ワタシは店内に入り、扉を閉めた。









 カランカラーンと、心地よい音が響いた。


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