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不死鳥が訪れる街、アンダイイング 6

 リシュアとローゼリアの二人は、教団内部へと侵入していた。

 そして、信者達が副葬品を墓荒らしに盗掘させていた理由。そして、盗掘させていた副葬品がどのように使われているかも知った。


 それは、不死鳥の彫像の前に佇んでいる影に包まれた巨大なデーモンだった。

 山羊の骨に無数の腕が生えたような悪魔が、この場所に現れている。

 つまり、此処は悪魔教信者の場所だったという事になる。


「どうする? ローゼリア?」

「決まっていますわ。あの巨大な悪魔を倒しましょう」

「どうやって?」

「貴方の光の刃があるでしょう?」

「迂闊に踏み込めないだろ。あれは」


 ローゼリアはいかにも、戦闘狂といった風情で、刃を取り出して信者達の中へと突撃したがっていた。だが、リシュアは経験的に、あの巨大な悪魔が極めてヤバい存在なのだという事に気付いていた。おそらくローゼリアでも危険だろう。だから、もう少し様子見をしなければならない。


 信者達は副葬品を悪魔の骨の腕に渡す。

 副葬品は様々なものがあった。宝石から記念品と思われるペンダントやブレスレット。それから街中で買える聖典の類などもあった。生前の故人の想い出が詰まっている品だ。それらを悪魔は口に入れると、身体が増大していく。


<お前達に不死を約束しよう。この地に訪れるであろう、不死鳥に代わってな>

 悪魔はそう叫ぶ。


 信者達は跪いて頭を下げる。

 余りにも不気味な光景だった。

 ただ、その光景を見て、リシュアもローゼリアも腹立たしくなっていった。副葬品は生前の者達の想い出だ。そして遺族達の想いの品でもある。それらを口にして強大な力を付けていく化け物、何とも赦しがたいものだった。生理的な嫌悪感を覚える。


「やっぱり、行くとするか。ローゼリア」

「ええ。その言葉を待っていたのですよっ!」

 リシュアも刃を懐から取り出す。

 光の刃が生え出てきた。


 リシュアは遠距離から、悪魔の山羊の頭骨へと向けて攻撃する。ヒドラのように脈打ちうねる光が、巨大なデーモンへと襲い掛かった。


<曲者か>

 デーモンは叫び、眼から炎を生み出す。

 その声は怒りに満ちているみたいだった。


 信者達は各々、悲鳴を上げて、自分達の信仰している強大なデーモンを抑えようとしたが、この場にリシュアとローゼリアという曲者が入り込んだ事によって怒り狂っているみたいだった。


 デーモンは山羊の口を開く、

 口から、緑色の吐息が漏れた。その吐息に触れた信者達は次々と身体が溶けて崩れ去っていく。後には骨だけになっていった。そして骨と化した者達は立ち上がって、リシュア達の方へと向かっていく。


「やっぱり、此処における“不死”への願いは、ネクロマンシーによる施術でしたわ。それも召喚した悪魔からのっ!」

 ローゼリアは叫ぶ。

 ローゼリアは途中に立て掛けられてあった鎧の手にしていた槍をつかみ取る。長いリーチだ。ローゼリアは、槍を振るって、スケルトンの怪物と化した信者達を振り払っていく。幾度、バラバラにしても、スケルトン達は元通りの肉体へと戻っていく。リシュアが援護射撃として光の刃を放った。すると、スケルトン達は全身に光の魔法を帯びて次々と消滅していった。


 吐息で身体を溶かされずに生き残った信者達が、次々と手に手に魔法を放っていた。主に炎系の攻撃魔法で、リシュアとローゼリアの二人は逃げるしか手立ては無かった。


<余の名誉にかけて、絶対に生かして帰すな。我々に牙を剥いたらどうなるかを知らしめてやるのだっ!>

 デーモンは怒り、叫んでいた。

 このままだと、ジリ貧だった。

 大量の炎の魔法がリシュアへと向かっていく。


 その時だった。

 天井の窓が割れて、何者かが降ってくる。

 真っ黒なドレスをまとったエシカだった。

 エシカは地面に着地すると、リシュアを抱き締めて、炎の攻撃から守る。


「おっ! おい、エシカッ!」

 リシュアは恥ずかしそうにしていた。


「いつも私は守ってばかりではいられませんっ! 私だってリシュアのお役に立ちたいのですっ!」

「そ、それもいいけど。エシカ、少し距離が近過ぎるよ…………」

 リシュアは顔を真っ赤にしていた。

 背後では、炎の魔法が照射され、ローゼリアは巧みに全身をアクロバティックにひねって、その攻撃をかわしていた。


 ラベンダーが巨大なドラゴンの姿になって、口から稲妻の吐息を吐き散らしていた。そして、信者達に応戦していた。


<多分。デーモンを顕現させているのは、この教団に集まっている者達の“信仰心”だ。信者達の息の根を止めるか、最低限、気絶させれば、何とかなるかもしれないっ!>

 ラベンダーは冷静に状況を把握していた。

 デーモンは咆哮する。

 ラベンダーは冷静な表情で、リシュアの方を眺めていた。


<リシュア。俺とお前の二人で、あの山羊の骨の化け物を食い止めるぞっ! エシカとローゼリアの二人は、信者達を気絶させていってくれっ!>

 その作戦で、四名は動いていた。


 リシュアは、光の刃を次々と伸ばしていく。ラベンダーは稲妻を天井付近にあてて、大ホールを崩そうとしていた。巨大な悪魔は連携された二人の動きに手間取っているみたいだった。


 その隙を付いて、エシカは炎の魔法を信者達に飛ばしていき、ローゼリアはナイフを投げ付けていた。いずれも致命傷にならないような攻撃だ。信者達は肩や腰にナイフが刺さったり、身体に火が付いたりして混乱していた。


 リシュアが接近して、戸惑う信者達を次々と叩きのめしていく。

 信者達の何名もが、気絶していった。


 明らかに、悪魔は弱っているみたいだった。

 信者達が存在し、死しても仕える者達が、その信仰の意思を持つ事によって、この怪物はこの世界に顕現している。ラベンダーの読みはどうやら的中しているみたいだった。悪魔は緑色の吐息を吐き出そうとする。


<お互いに吐息(ブレス)対決といこうじゃないか>

 ラベンダーも同じように、吐息を吐き出す。

 ラベンダーの稲妻の吐息はすさまじく、悪魔はかなり押されているみたいだった。悪魔は複数の骨の腕を持って、新たな魔法を放とうとしていたが…………。

 悪魔の身体がどんどん透けて、影に飲み込まれていく。

 どうやら、エシカとローゼリアの二人が頑張って、信者達をあらかた気絶させたみたいだった。


<おのれ、おのれ、おのれっ! だが、まだまだ余は貴様らを亡き者に出来る程の力を持っているぞっ!>

 悪魔はけたたましく叫ぶ。


<さて。それはどうかな>

 ラベンダーは何処までも冷静沈着だった。


 悪魔はエシカとローゼリアの二人を狙っていた。

 その骨の腕で二人をつかみ取り、手から生えたカギ爪で二人を切り裂こうとしていた。だが、それもリシュアの手にした光の刃によってはばまれる。

 ラベンダーが稲妻の吐息を再度、吐き出す。


 悪魔の全身は影へと押し込まれ、影の中へと消え去っていってしまった。

 そして後に残されたのは、気絶した何名もの信者達と、破壊された不死鳥の像だった。


<さてと。此処で盗まれた副葬品を持って、警備兵達の処へ向かうぞ。この邪教は一網打尽だな>

 ラベンダーは小さな体躯に戻って、ふうっ、と疲れた顔をしていた。


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