その教団は、信者達がみな鳥の仮面を付けていた。
高台に見た祭り用の仮面とは違う。
何か被っている仮面は、不気味な感じがした。
「一般人が入る事は出来ますの?」
さっそく、ローゼリアが教団の前にいる守衛達に話し掛けていた。
守衛達は鎧をまとい、不気味な仮面をかぶっている。
「無関係なものは入場料として、必ず教団に寄付して戴きたい。大丈夫かな?」
守衛は少し傲慢そうな口調で睨んでいた。
結局、四人分、寄付を募る事になった。
門番をしている者達以外の守衛が一人現れて、教団の中を案内していく。
まずは、中庭だった。
眩い光が降り注いでいる。
庭の中には、色取り取りの花が咲いていた。
エシカは庭の景色を見て、思わずうっとりとした表情をしていた。
「とても素敵な庭ですわね」
エシカはどうやら教団に対して好印象みたいだった。
「此処は魂が移ろいながら通る道とされているからな」
守衛はそう答える。
そして、大ホールへと案内される。
そこには、巨大な不死鳥の像が建てられていた。
像は金や宝石によって色鮮やかに装飾されており、この不死鳥の像は、この街にある不死鳥を象ったどの像よりも巨大だった。
“信仰”の結晶そのものとも言えた。
信者達は像に対して、お祈りをしている。
何やら聖句を唱える者達もいた。
オルガンの音が鳴り響いている。本当に此処は神聖な教会なのだろう。まるで不正を行っている場所だとはとても思えなかった。なら、墓荒らし達がこの教会に雇われていたというのは彼らの虚言だったという事なのか。
<どうする? もう少し調査してみるか?>
ラベンダーがみなに訊ねる。
「そうだな。路銀はもう貰った事だし、墓荒らし達は衛兵達に連れて行かれた。これ以上追及してもあまり意味が無い事かもしれないな」
リシュアは鼻を鳴らす。
「でも、もしこの教団が黒だとしたら、また墓荒らし達が現れるのでしょう? それは副葬品を奪われるご遺族の方々の苦しみは無くならないと思うのですが…………」
エシカが口を挟む。
「まあ。エシカはそんなんだよな」
<人助けがしたいのだな>
二人は頷く。
<なら、夜中にでも侵入するか? 二手に分かれて動いた方がいい。俺とエシカ。リシュアとローゼリアのペアはどうだ? 俺達はこの建造物に侵入、リシュア達は教団の周辺を見張るのはどうだ?>
ラベンダーは人員の配置と計画を提案する。
「では、それで行きましょうかっ! 夜が楽しみですねっ!」
エシカはウキウキとした表情をしていた。
人助けがしたくて仕方が無い。そんな様子だ。リシュア達はそれを見て少し苦笑する。エシカはいつだってそうだった。空回りする事もあれど、何とか人の役に立ちたい。そういう人間だった。それを見て、リシュアは彼女に安心感を覚える。
「まあ。それにしても、夜まで時間はまだありますわ。これからティー・パーティーでもしません事?」
ローゼリアはそんな提案をする。
<違いないな。此処の店のコーヒーショップにでも行きたい。勿論、茶葉も見たいな。俺の口に合うといいんだけどな>
ラベンダーは億劫そうな感じだった。
おそらく、上空から墓荒らしを見張るという行為が面倒臭かったのだろう。エシカのテンションに辟易しているみたいだった。実際、この教団の闇を暴いても一銭の得にもならないかもしれない。それでも、エシカは“人助けをしたい”と考えている。
「“災厄の魔女”と呼ばれ続けるのが、そんなに嫌なのですのね」
ローゼリアは、エシカに聞こえないようにラベンダーの耳元でぽつりと言った。
<言うな>
ラベンダーはそれだけ念を押すように、ローゼリアに告げた。
「計画を練り直そう。侵入するのは俺達でいい。エシカ達は見張りをしてくれ」
リシュアはラベンダーとエシカの二人にそう告げたのだった。
彼なりの気遣いなのだろう。
エシカを少しでも危険な目に合わせたくないのだろう……。
†
月の光の照らされる中、エシカはラベンダーの背中に乗っていた。
目指すは『永遠の鳥』の本部だった。
エシカの真っ黒なドレスがはためいている。
エシカは、今日は、旅用の服ではなく、荘厳なドレスに身を包んでいた。理由は特に無い。まるで聖なる対象に挑むかのように正装をしただけだ。
ラベンダーは窓へと張り付く。
<信者が何名か見張ってる。………………何か奇妙な行動をしているな>
エシカは窓から教祖らしき人物の姿を見つけた。
何やら、柩のようなものを二人がかりで持って移動しているみたいだった。
みな、鳥の仮面を被って、フードのようなものをまとっている。
夜に見ると、より一層、不気味な姿に見えた。
<もう少し先に窓がある。そこから先を見てみようか>
二人は屋根の上を移動する。
ラベンダーはしゅるしゅる、と、小型のドラゴンの姿へと変わっていった。
そして二人はゆっくりと気付かれないように、そして特にエシカは建物から落ちないように屋根の上を移動していく。
窓の一つ一つを覗き見降ろしていく。
何やら、鳥の仮面を被っている者達は、あの大ホールに深々とお辞儀をしているみたいだった。あの巨大な不死鳥の彫像なのだろうか?
だが、どうも違うみたいだった。
何やら不気味な影のようなものが彫像のある場所の前に広がっていた。
その影は明らかに、禍々しい、巨大な魔物の姿をしていた。
この窓からは見えないが、明らかに彫像の前に巨大な魔物がいる。
教団の信者達は次々と柩を開いていく。
それは明らかに、墓荒らしを雇って盗んだであろう、沢山の墓地にある副葬品と思われるものだった。
「…………やっぱり…………」
<何か禍々しい者達への貢ぎ物として、墓の副葬品を盗んでいたみたいだな。もしかすると、ただの金銀財宝ではなくて、墓に収められていたという事実によって何か“邪悪な力”を得られると考えているのかもしれない>
ラベンダーは見下ろしながら、考察していた。
「リシュアとローゼリアの二人は大丈夫でしょうか? 隠密行動で、後々、教団の中へと侵入する手筈でしたよね?」
<ああ。二人が心配だな。何とか合流出来ればいいのだが。もう二人共、中へと侵入しているのだろう>
ラベンダーはカギ爪を顎に置いて考えを巡らせていた。
†