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不死鳥が訪れる街、アンダイイング 3

 そして、次の日。

 昨日、待機していた場所と反対側の場所で待ち構える事にしたら、ラベンダーが合図をならして、見事、近場で墓荒らしらしき者達を見つけた事を告げた。


<どんな目に合わせて差し上げましょうかしら?>

 ローゼリアは爛々と眼を輝かせていた。


「一応。程ほどに頼むぜ」

 リシュアは苦笑する。


 そして四名は墓場の中に入る。

 真っ暗闇の中の墓場は不気味だったが、それよりも死者の遺族達の気持ちを踏み躙る墓荒らし達への怒りで、墓荒らし達のもとへと向かっていた。

 墓荒らし達は透明になる魔法で姿形を隠している。

 だが、ラベンダーとローゼリアの二人は、魔力の痕跡から、透明化した者達の居場所を探り当てる事が出来た。


 飾り付けが丁寧に施された墓の一つが、地面を掘られている形跡があった。

 ローゼリアは周辺に刃物を投げ付け、ラベンダーも口から小さな稲妻の吐息を吐く。


 すると、それらの攻撃に命中して、見る見るうちに、五名の人物が姿を現した。


「お前らが墓荒らし達だな?」

 リシュアは訊ねる。


 墓荒らし達は黒装束の姿で、まるで暗殺者のような格好をしていた。彼らは手に短刀を持っていた。


 素早く動いてくる。

 リシュアも短刀を出す。

 ローゼリアはうきうきとした顔をしていた。


 墓荒らし達がこちらに襲撃してくるが、リシュアもローゼリアもまるで墓荒らし達の攻撃を受けずにさばききり、リシュアは相手の得物を叩き落としていく。ローゼリアは何度か相手の身体に自身の手にする刃を刺していた。


 ローゼリアは楽しそうな表情をしていた。

 まるで、敵が苦しむのを楽しんでいるかのようだった。


「おい。ローゼリア。やり過ぎるなよ?」


「ええ? こんなのは久しぶりですから。私、とっても楽しみたいのですけれども……」

 ローゼリアは何度も何度も、苦しめるように墓荒らしの一人の身体に刃を突き刺していく。それを見て、墓荒らしの一人が手から得物を落として降伏する。


<お前らは一体、何者なんだ? そういう犯罪者集団か? 裏に何かいるのか? ちゃんと答えないと命は無いと思え>

 ラベンダーが恫喝するように告げる。


「お、俺達は『永遠の鳥』という組織に雇われた者達だ…………。彼らの為に働いて賃金を得ている…………」


<ほう? 『永遠の鳥』とはなんだ?>


「こ、この街にある宗教団体だよ。お前らは知らないのか?」

 墓荒らしの一人が、焦った表情をしていた。


<まあいい。お前ら、此処でお縄になれ。でなければ、そこにいる桃色髪の女が、お前らをとてつもなく苦しめて息の根を止めるぞ>

 ラベンダーの声音はとても冷たかった。


 墓荒らし達は涙声で命乞いを始めた。

 それだけ、ローゼリアは容赦が無かったからだ。

 ローゼリアと戦った墓荒らしのうち、二人が全身をいたぶられながら刃物で刺され、虫の息だった。ローゼリアは血塗れの短刀を舐めながら、倒れている墓荒らし二人を見下ろしていた。

 この吸血鬼の娘は、戦いになると歯止めが効かない……。



 墓荒らし達を捕まえたお陰で、街の者達からかなりの感謝の声が上がった。

 リシュア達は、しばらくの旅で困らない程の報奨金を貰った。


「なんだか、人助けも悪いものではないな」

 高級宿に帰って、部屋の中でリシュアは笑う。

「そうですね。リシュア、今回、私は何の役にも立てませんでしたが…………」

 エシカは少し気まずそうな顔をしていた。


「いいよ。エシカが危険な目に合わなければさ」


「私の事はもっと褒めちぎっても宜しいと思わないんですか?」

 ローゼリアが二人の会話に口をはさんできた。


 ローゼリアの戦い方は残忍だった。

 その為に、墓荒らし達は早々に降伏した。

 多分、あれ以上、墓荒らし達が抵抗していれば、ローゼリアは彼らを残虐に殺害しただろう。だから、墓荒らし達は命拾いしたと言える。


 それにしても彼らが言っていた『永遠の鳥』という組織か。

 リシュアはそれが少し気になっていた。

 なんにしろ、この街には、しばらくの間、滞在するつもりだ。

 いずれ、その組織の事も知る事になるだろう。

 ただ、問題事に、今は首を突っ込みたくない。

 もう少し、この街で色々な場所に行って羽を伸ばそうと思った。


 そう言えば、みなで不死鳥が降り立ったとされる高台にも行っていない。

 明日は、その高台に行こうと思う。


「とにかく夜通し、見張っていたんだ。疲れたな」

 リシュアは天井を見ながら、大欠伸をしていた。

 隣では、エシカの寝息が聞こえる。

 彼女は安らかな表情で寝ていた。

 ローゼリアは刃物を研いでいた。

 ラベンダーは窓の外の景色を見ながら、ぼうっとしているみたいだった。

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