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第一章 星明りの街、シャイン・ブリッジ。 3

しばらくの間、教会は二名と一体を置いてくれる事になった。

 ただ、しばらく経った後は事情を話して、然るべき他の施設なり、何なりに行かなければならないと言われた。事情があり故郷を追われた者の場合は仕事を斡旋して貰える場所に行かなければならない。


「何日か教会に置いてくれるって言っていたから、俺、街を見て回りたいな。エ……ルナもそうだろ?」


「周りに人がいない時はエシカでいいですよ」


「ダメダメ。魔女エシカの名前は大陸中にとどろいている。災厄の魔女が出現してから、大陸中の人間は我が子にエシカって名前を付ける奴はまずいないって聞いている。呪われた名前だからな」

 リシュアはエシカの迂闊さに呆れ声で言う。


「私、本当に大変な事をやってきたんですね…………」


 エシカは立ち止って考え込んでいた。


「償えるなら、償いたい…………。どうすればいいのでしょうか。償いの代わりに、私は記憶を消され、闇の森の中に何十年も封じられてきた…………」

 結局の処、この何十年もの間、自分が何を償っているのか分からなかった。

 そもそも記憶を消されたという事は、自分の罪さえも分からないという事なのだから。


「わかんねーけどさ。何か人から感謝される事を沢山しよう。そういう事を積み重ねていけば、償うって事が何か分かるかもしれないぜ?」

 リシュアは明るく言った。


 エシカからはリシュアがまるで太陽の光のように思えた。



 教会の神父であるフェザーは、しばらくの食費と言って二人に生活費を渡してくれた。

こんなに親切な人間がいるものなのかと驚いたりもしたが、フェザーは沢山の慈善団体との繋がりもあるらしい。


元々、リシュアはある程度、路銀を持って城を出た為に今の処、生活費には困らなかったが、迷った末に、礼を言い、フェザーからの施しを受け取る事にした。

 ……これから長い旅になるだろう。路銀は少しでも多く持っていた方がいい。


「まあいいや。お昼ごはんにしよう」


 この街で安くて美味しい店は何処かと道行く人に訊ねたら、此処を紹介された。


 肉料理にスパイスが効いていて、とても美味しい。

 しばらく食事が済んだ後、リシュアは店員の一人に思い切って訊ねてみる事にした。


「なあ。俺達、旅人なんだけどさ。この街って狼男が出るって本当? 教会の人の話を聞く限り、なんか月の夜に人を喰うらしくて、物凄く怖いんだけど」

 リシュアは気さくに店員に話し掛ける。


「狼男か………………」

 話し掛けられた店員は腕を組んで、少し困った顔をしていた。


「お前ら、旅の者達だと言ったよなー」

 レストランの奥の席で声が聞こえた。


「狼男は人間に化けて街の中に侵入しているらしいんだ。まさかとは思うけど、お前らじゃないよな?」

 そう言ってきたのは、年齢を重ねたいかつい顔の男達だった。


「もし、俺達だったら、自分から聞き出す事なんてしないだろ?」

 リシュアは叫ぶ。


「成程、それもそうだなっ!」

 男達は昼間から酒を飲んでいるみたいだった。

 そして店内で、トランプ遊びの賭け事をしているみたいだった。


「俺も混ぜてくれないか?」

 リシュアは男達に訊ねる。


 男達は何だか嬉しそうな顔で、リシュアを遊びに招き入れたのだった。


 しばらくして、リシュアはかなりお金をすられたみたいだった。

 男達からしてみると良いカモだったのだろう。

 リシュアは不貞腐れながら、エシカの元へと戻る。


「もう帰るか。アホらしい」

 リシュアは悪態を付いていた。




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