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第二話 神様からもらったもの(3/4)


なんだか面白いことになったぞ?


ボクは今回の席替えで、クラスの二大話しかけづらい子の隣と後ろになった。

でも、二人はどうやら、人に話しかけられるのは嫌ではない……というか、むしろ嬉しそうだ。

けれど、二人の態度では、それは相手には伝わらない。


――はずだった。


相手がボクでなければ。


もしかして、この能力って、ボクが思っている以上の可能性を秘めてるのかも?



前では先生が黒板に曲名を書いていた。

「学年合奏曲はこの三つから投票になるけど、クラスで歌うのは好きな曲でいいからね。歌いたい曲がある人は手をあげてー」

担任の山村先生がボクたちを見渡す。

ボクの前と右でピコンと電球のマークが出た。


えっ、二人はもう思いついたの?

続いて、一人、二人と小さく電球マークが出る。


「アイデアはどんどん出してねー。投票にするから」


ピコンピコンピコンピコンピココココココッッッッ!!

いきなり、内藤君の頭から数えきれないくらいの電球が出た。


横の清音さんからも三つ四つと電球が出ている。


「ほーら、なんかないのー? 先生が好きな曲にしちゃうわよー」


誰も手をあげないのを見て、先生が一つ、二つと曲名を並べる。

二人とも、そんなにアイデア出てるのに、言わないの?


ポツポツと手をあげる人が出て、黒板に曲名が増えてゆく。


「合唱曲はないの? 合唱曲はー」

先生が黒板を眺めて不満げにこぼしている。

確かに並んでいる曲はアイドルの曲とかネットで流行ってる曲ばっかりだ。


内藤君と清音さんはまだ手をあげそうにない。


内藤君はずっと不穏な葛藤の渦みたいなのに包まれてるし、清音さんは、ぱあっと花が舞ったら、今度はどよんと縦に線がかかり、急にキラキラと星が舞って……、またどんより縦に線がかかるような事を繰り返している。


「他になければ、ここから決めちゃうよー?」


先生の声に、なんだかボクの方が焦ってきた。


「清音さん、何かアイデアがあるの?」

ボクは思わず聞いていた。

清音さんは真顔のままボクを見て、大きな『!』を浮かべる。

「えっと……、何かあるなら、紙に書いてみる?」

ボクが言うと、清音さんはメモ帳を出してサラサラと曲名を並べた。

「へえ、色んな歌を知ってるんだね」

コクンと、小さな頷きが返ってくる。

「歌うの好きなの?」

ボクの質問に、ぱあっと嬉しそうな花が舞う。


「もう無いねー?」

先生の言葉に、ボクは焦った。

「もしよければ、ボクが先生に言ってみようか?」

清音さんはコクコクと頷いて、メモ帳のページを破るとボクにくれた。


「はい、先生っ」

「佐々田君」

ボクはメモを片手に、先生に曲名を伝える。

って、これ五曲もあるんだけど?


「ああ、良い曲よね、このクラスにも合ってるし。お。それはなかなか良いチョイス。あらぁ、その曲知ってる人って、なかなかいないわよ?」

先生はどの曲も知っていて、一つ一つにリアクションをくれる。


クラスの皆の反応はバラバラで、わからない人は全然わからないみたいだ。ちなみにボクは一曲だけわかった。


「知ってる?」「えー、わかんない」と囁き合う声の中、先生が手を叩いて皆の注目を集める。

「それじゃこの五曲については今から先生が一曲ずつ説明するわね。佐々田君、ありがとう」

言われてボクは席に着く。先生はなんだかいつもより嬉しそうな効果を背負ってる。


後で清音さんから聞いた話では、ボクがもらったメモ帳は山村先生が「お友達と筆談するのに使って」と新学期初日にくれたものだったらしい。


先生の曲説明を経て、投票に入る。

一人につき二曲選んで手をあげるやり方だ。

手をあげる間、皆は机に顔を伏せた。


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