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第六話 漫画みたいなボクの日常(2/6)


驚きの展開が起こったのは、その日の放課後だった。


あの後、移動教室の帰りにたまたま妹の沙耶と廊下でバッタリ会ったから「サイン書いてもらったよ」って伝えたんだ。

そしたら、昼休みに友達と二人で受け取りに来て、ボクはクラスの廊下で二人にサインの書かれた色紙を渡した。


その時確かに、米倉さんは廊下を通りかかったんだよね。

それで「ピシャーン!」と派手な描き文字付きの、レトロな少女漫画風の効果を出してたのは視界の端に入れてたんだけど。


それがまさか、こんなことになるとは……。


米倉さんは、放課後、校門を出ようとするボクたちに声をかけてきた。


「佐々田くーん、よかったら一緒に帰らない?」


それは無理じゃないかな。

だって米倉さんボクたちとは方向が全然違うよね?


「え、でもボクこっちに帰るから……」

米倉さんは何やらキラキラ……いや、ギラギラした背景を背負っている。


「今日私用事でそっちに帰るの、だから一緒に行ってもいい?」

米倉さんは、ふわっとした長い髪を揺らして可愛くおねだりするようなポーズをくり出した。


おおお、すごい。

背景まで完璧で、これは間違いなく可愛いんだって、ボクにもハッキリ分かる。


……でも、なんでボク?


「じゃあちょっと皆に聞いてみるね」

「皆って……えっ? その三人も一緒に帰るの!?」


なんで驚くの?

「だって皆同じ帰り道だし……」


ボクの後ろから亮介がコソッと耳打ちする。

「わりぃ、俺、自分ちの方向教えてなかったんだわ。全然違うって知ったら気にするかと思ってさ……」

ああ、それで驚いたのかな?

「皆、どうする?」

皆の顔を見回すと、清音さんはサッと人差し指二本でバツ印を出した。

亮介は何とも言えない顔をしてるなぁ……。

内藤君も静かに首を振る。

そうだよね、ここに米倉さんが入っても、亮介がしんどいだけだよね。

おさそいを断るのって苦手なんだけど、ここは皆の為にも頑張ろう。

ボクは心の中で気合いをいれて、米倉さんに向き直る。

「米倉さん、ごめんね。えっと、他をあたってもらえるかな」


「ええっ!?」

えっ、そんなに驚くとこ?

「あ、じゃあ佐々田君だけ、一緒に帰ろうよ!」

そんなにキラキラしたまま詰め寄られると、ちょっと怖い。

妹も朝からこんな感じで迫ってきたけど、ボクと同じくらいの身長の米倉さんと違って、妹はまだ僕の胸あたりまでしか背もないからここまでの圧迫感はなかった。

「な、なんで?」

ボクの質問に、米倉さんのキラキラの後ろにメラメラ燃えるものが見える。

「私……、佐々田君と二人っきりで話がしたいな、って思って」

「はぁ!?」

大声をあげたのは、亮介だった。

背景を見なくてもわかる。これは怒ってる。

ていうか、あれ?

清音さんと内藤君も怒ってない?


「仕方ない、場所を変えよう」

内藤君の提案に、ボクと清音さんが頷く。

だって、校門前で話すボクたちは、さっきから少しずつ周りの子たちの注目を集めてるから。

歩き出した内藤君に、亮介が「……しゃーねーな」と呟いて歩き出す。


「米倉さんも、来てもらっていいかな?」

米倉さんを振り返れば、米倉さんは「内藤君って、先生に当てられなくてもふつーに喋るんだ?」とポカンとした顔で驚いていた。

ボクたちは内藤君の後を追うようにして、体育館の脇を抜けて、プールと校舎の狭い隙間を一列で通る。内藤君、亮介、清音さんの後ろがボクで、米倉さんはその後ろだ。

「背もけっこー高いし、低い声かっこいいし、無口なインテリ……いいかも……」

静かな校舎裏で、ボクの耳に後ろの小さな呟きが聞こえてしまう。

多分背の高さが同じくらいだから聞きやすいんだろうな。

まあでも、内藤君は無口じゃないし、米倉さんには亮介っていう彼氏がいるんじゃないかな?

そう思うとなんだか胸の辺りがムカムカしてきて、他の三人が怒るのも当然な気がしてきた。


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