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向日葵と濡烏
あまま やました
現実世界青春学園
2024年07月19日
公開日
26,584文字
完結
――お前の描く絵が嫌いだった。私の嫌いな絵を描く癖に。そう思う私が嫌いだった。

先輩と後輩、ぜんぜん違うのに寄り添った、叶と愛歩。
今年で卒業する叶になんだか距離を置かれてる気がして、愛歩は不安を抱えていた。

――これきりにしよう、と小さい言葉が、雨音にぽつりと放られた。

※pixivで過去に投稿した百合短編小説になります。

 柔らかな風が心地よかった。

 一面に揺れる向日葵が、お前の手でキャンバスに写し取られていた。真っ青に抜けた空と、陽だまりに浸かる花々。花畑を見下ろせる小さな丘に、あつらえたような木陰があった。その陰の際で携帯式の椅子に掛けたお前を、私は陰の中心の幹に背を預けて、じっと見守っていた。真夏の大気は厳しく、木陰でさえ背がじっとりと汗ばんでいた。

 お前はせっせと手を動かして、景色よりもずっと美しく、風景を切り取っていった。いや。多分、それがお前の目に映る世界だった。私よりもずっと綺麗に世界を見られるお前の絵を、けれどそのときはなぜか、心から、綺麗だと思った。

愛歩あゆみ

 振り向いたお前と、その前のキャンバスと、その向こうに広がる向日葵とが、私の目に眩しく焼き付いた。私はお前の絵を、好きになったのか。掠めた自問を無視した。

「お前、上手くなるよ」

 続けるとお前は目を見開いて、それから細めて、それは嬉しそうに笑った。

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