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夏の体育でプールの授業があって、なんだか耳がぶあーん、と音を響かせていた。

「耳に水が入ったみたい」

「頭を傾けてピョンピョン跳んだら出るよ」

友だちに言われてやってみたけれど、耳の中の水は出なかった。

熱くなったコンクリートの段差に耳をくっつけてじっとしていたら、ふいに水が流れ出た。不思議だった。

「一応、綿棒で耳かきしておく?」

更衣室で友だちが持っていた綿棒をくれた。濡れた耳垢が白い綿棒にくっついてきた。

「少し湿っぽい」

「私はお風呂上がりとかに綿棒使うよ。」

「ふうん」

「耳が乾燥気味の人は普通の竹製の耳かきを使うけど、耳の中がウエットな人は綿棒かな・・・」

「そういう人もいるんだ・・・」

「綿棒も良いよ」

「うん。ありがとう」

私はその日、母にねだって買い物の時に綿棒を買ってもらうことにした。

「明美。黒い綿棒もあるよ」

「えっ!本当だ」

びっくりした。清潔で、取れた耳垢がよく見えるらしい。

「黒い方を買って!」

「はいはい」

母がクスクス笑いながら買い物かごにお徳用の黒い綿棒を入れた。

飽きっぽい私はどのくらいその綿棒を使っただろうか?そう頻繁に耳が汚れる訳じゃないし、毎日の雑事に忙しかった。

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