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小学生の頃、何を思ったのか、私は新聞についてくる広告のチラシを細くちぎってこよりみたいにして遊んでいた。

「お母さん、こっちの耳、聞こえない~」

「えっ?」

母が大慌てで私を自転車の後ろに乗せて、耳鼻科に連れていった。

「聞こえないのはこっちの耳?」

お医者さんがそう聞いて、ライトで照らしながら私の右の耳の中を覗き込んだ。

「なんかつまってるな・・・」

細いピンセット登場。

「なんだこりゃ」

くしゃくしゃの色つきの紙が幾つか。

「あー、よく聞こえる!」

私は耳を指でほじりながら言った。

「これなに?」

お医者さんが優しく聞いた。

「新聞の広告。丸めて遊んだ」

「お母さん、子どもは気を付けとかないとなにするかわかりませんよ。たまに耳の中にドングリ入れる子がいたりするし・・・」

「えっ?まあ!すいません」

母がお医者さんに謝った。私は怒られもせずにまた自転車の後ろに乗せられて家に向かった。

「耳の病気じゃなくて良かったね」

「うん」

母のお腹に両手でつかまりながら、上を向いた私は鱗雲の空を不思議な気持ちで見ていた。

なぜ広告を耳に詰めたりしたのか、自分でもよくわからなかった。

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