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第28話 地上一階キャンプ(2)ドラゴンハーフエルフの双子騎士

「そこの細工師の少女、なぜ人間がここにいる?」

 ウリブがラミハを指差し、強い口調で詰問した。

「な、なによ。後から来て偉そうに。人間で悪いかよ」

「おおう……。確かにこれは、粗野な人間の振るまいだな、サリブよ」

「そうですね、姉さん」

 双子は口元を隠し、狐のように目を細めた。

「お前ら、彼女への無礼はゆるさん!」

 ゴン!!

 黒騎士が二人同時に、脳天にゲンコツを喰らわせた。

「ギャッ!」

「あうっ!」

「彼女は、俺の嫁の親友の侍女だ。ちなみに、俺の嫁も、魔王陛下の奥様も、人間だ。この場で人間を侮辱することは、俺や陛下……じゃなくてアキラを愚弄することと思え。二度とするんじゃない。よいな!」

「「申し訳ございません~~~~~~(泣)」」

「ラミハ殿、私の部下が大変失礼な事を申した事、このハーティノス、心よりお詫び申し上げる」

 黒騎士はラミハの前にひざまずき、頭を下げた。


 双子が二人でこそこそと言い合っている。

「う~~、なんかそういうハーティノス様、なんかヤダ……」

「ヤダね……。もしかして、退役して人と交わって堕落した?」

「ああやっぱ、なんかアレなものが移っちゃったんじゃ」

「となると、魔王様まで……? あわわ、それは……それは……」

「もしかして、魔王国の危機?」


 こっそり近づいた魔王が、二人の長い耳を引っぱり上げた。


「「ぎゃあああ!」」

「全部聞こえてんぞ、おめーら。そんなに不愉快なら帰れよ」

「いえそのようなことは……任務に私情など……」

「私もそのようなことは……」

「おめーら挟みまくりじゃねーかボケ。だいたい、そんなにドラゴルフとかいうのがエライのかよ。俺様が一番エライんじゃねえのかよ。ああん?」

 魔王はものすごく邪悪な目で双子にガンを飛ばした。

「「お許しを~~~~~!」」

 涙目で命乞いをするウリブとサリブ。

「言ったそばからお前らは!! 陛下にお詫びしろ!!」

 ゴン!! ゴン!!

 黒騎士は双子の脳天に二発のゲンコツを喰らわせ、二人を土下座させた。

「「申し訳……ございません」」

「やれやれ。こいつら大丈夫なのか? ハーさんよ」


「腕はたつのだが……なにせドラコニアンとエルフの血筋故、とんでもなくムダに気位が高いが仲間からはハンパ者と蔑まれ……。

 まあ、とにかく扱いにくいのだ。先の大戦でも、こいつらを従えることの出来たのは俺だけで。それでも……まあ、いろいろと」

 黒騎士が苦虫を噛み潰したような、渋い渋い顔をした。


 魔王は少し思案して、ゆっくり話しはじめた。


「とにかくお前らが、自分らより低いヒエラルキーの存在をバカにして、精神の安寧を保っていることだけは分かった。

 だが、己の腕と功績、そしてハーティノスの部下であったことを誇りに思うなら、下を作って踏み付けるような、自分を穢すようなことは金輪際やめろ。分かったか」


 双子は核心を突かれたのか、拳を握りしめ、牙を剥き出しながら歯を食いしばり、悔しさを隠そうともせずに魔王をにらみ返した。


「よし。それでいい。お前らが見るのは俺だ。下じゃあない。生まれ持った才能と、お前等の得た技術、俺のために使え。そして栄誉と誇りを積み上げろ。高く高く積み上げて、下など見えぬぐらいにだ。お前等なら、出来るのだろう?」


 ウリブは不敵な笑みを浮かべた。

「もちろんでございます、陛下」

 サリブは真顔に戻った。

「人と交わり腑抜けたなどと無礼を申し上げたこと、お許し下さい」

「我等、陛下のため、この身を捧げる覚悟、古より違えたことはございません」

「存分にお使い頂き、武勲を上げさせて頂きたく存じます」

「「御身のために!!」」


 魔王は腕組みをし、満足げに二人を見下ろした。

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