前線を行くテルス達とその後ろを召喚獣に乗りながら行くレナジェが、遠くから見えた。
……あぁ、あんなに遠くなって……。
「グシャートたん?」
サイルの声で我に返った僕は、他チームの
彼らの注意を引きつけるのが僕の……役目だ!
他の盾役達もそれぞれのスキルでモンスター達の注意を、ある程度の数引きつけている。
僕も負けじとスキルを放つ。
「ライトニング・アイ!」
スキル名を叫び、剣から光を放ってモンスター達の注意を引く。
かなりの数が引っかかってくれた。よし!
「サイル!」
「わかってるのん! フレイム・ダイブ!」
サイルが勢いよくジャンプして、炎を槍に纏わせ文字通りモンスター達の中心にダイブし、炎の波状攻撃を放つ。
僕もスキルで一時的な無敵状態を作り出し、サイルの攻撃に耐える。これで、僕が引きつけていたモンスターの半数は消し炭となった。
残りの半数を、サイルと手分けして倒して行く。サイルは槍術で突きを放ったりしながら、僕は盾でモンスターの攻撃を防ぎつつ剣で斬り裂く。
その合間に、攻撃スキルを挟み、確実にダメージを与えて行く。
順調に敵を制圧していた……はずだった。
「おい! 何か吹き飛んでくるぞ!」
同ランクの誰かが叫ぶと同時に、吹き飛んできたのは……テルスの新しいパーティメンバーの一人だった。
一瞬にしてその場に動揺が走る。前線で戦っているはずなのに? なぜ?
その疑問は、すぐに解消されて
レナジェが深手を負ったテルスとスセを、召喚獣であるバハムートに乗せて退避してきたのだ。
「治癒系スキルを持つ人達ぃ!? 今すぐ、集まって治療を! 早く!」
いつになく切羽詰まったレナジェの声色に、嫌な予感がする。まさか……テルス?
「おい! 勇者、意識がねぇぞ! それに凄い怪我だ!」
「ど、どうなっているの!?」
動揺の声がAランクやBランクの治癒系スキル持ち達から聴こえてくる。それほど、ひどいということだろう。
そうしている間にも、モンスター達は襲ってくる。
だからこそ、僕達Cランク以下は、これ以上テルス達に手出しをさせないよう、身をていして盾となり、猛攻を防ぐ。
だが、圧倒的すぎる数のモンスター達に、次々と他パーティが倒れて行く。……このままじゃ……敗北だ。
だから……いやこの場面だからこそ……僕は僕の
「サイル」
「ど、どうしたのん? グシャートたん?」
「……今まで、ありがとう。レナジェ達にもそう伝えてくれ」
僕はそれだけ言うと、加速スキルを使いモンスター達の合間をすり抜け前進して行く。
「ぐ、グシャートたん!? ま、まってなの!?」
叫ぶサイルに心の中で謝りながら、僕は進み……進軍してくる敵達との境界にある小高い岩山へ登ると、剣を天に掲げて大声を張りあげる。
「今、ここに! 騎士グシャートの誓いを果たす! エンシェント・ホーリーアイズ!」
この技は……騎士という称号を持つ者だけが使える――最上級にして最凶のスキル。
この場における全ての敵の標的となり……その全ての攻撃を一身に受ける。
……当然、使えばただじゃすまない。いや、それどころか使用者は死ぬだろう確実に。
「……これが、僕の……償いだ!」