テルスとスセのパーティと別れた僕達は、改めて竜の元へと戻ることにした。
正直、気が重い。というか、気が進まない。
だってさ?
自分を助けたことで生前は賞賛されたのに、死後になって情勢的理由から不名誉極まりない扱いを受けたんだよ? それも恩人が。
……そんなの僕だったら……耐えられない……。
憂鬱な僕と珍しく静かなサイルの後ろを、いつも通りにしか見えないレナジェが着いてくる。
その距離が……また辛かった。
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【……そうか】
僕達の報告を聞いた竜は、静かにそう呟くと目を閉じた。竜が何を考えているのか、僕にはわかりっこない。
だけど……いや、だからこそ。
サイルに対して、答えを出してやってほしいと思った。
しばらくの静寂が僕達を包む。焦る気持ちと不安がないまぜになって落ち着かない。そんな僕の傍らで、サイルはいつもの百倍も大人しかった。
【……理解した。だが、故にこそ……納得できるものではないな】
落ち着いた声の中に、確かな嘆きと怒りを感じられた。これは……やっぱり……。僕がそう諦めた時だった。ずっと静かに竜を見つめていたサイルが口を開いた。
「竜たん。ルルーシュタさんの名誉、取り戻さない? ウチと、いっしょに!!」
当の竜は、目を丸くした後静かに告げた。
【……それは悪くない。だが……見るにそこの盾の男は、まだ己を認識できていないな? そのような者が、ルルーシュタの名誉を取り戻すなど……どう信じられよう?】
「えっ。ぼ、僕ぅ!?」
まさかの名指しに、僕は思わず間抜けな声を上げてしまった。そこはサイルじゃないのか!?
動揺する僕に視線をやることなく、竜は告げた。はっきりと。
【そこの盾の男が、己を正しく認識し、また、娘が更なる成長を為した時、我は現れよう。必ずな?】
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宿屋に戻った僕は、沈んだ気持ちで一直線にベッドへダイブする。その姿をみて、同室のレナジェが呆れた声を漏らす。
「はぁ~。アンタねぇ? そういうとこよぉ、そういう~」
グサッ。今日すでに竜に抉られた心の傷に更なる傷が与えられる。やめろよ……こっちはマジで落ち込んでるんだぞ!
あの後。
竜は僕達の前から飛び去り、サイルは「もっと成長するのん!」と意気込んでいたが、レナジェからの冷たい視線を浴びたのだ。
うっ……確かに、途中でサイルに嫉妬したり……いや、そもそもここまで堕ちたのも自業自得だけどさぁ……。それにしたって、あんまりじゃない?
半泣きになりながら枕に顔をうずめる僕に、再度レナジェが声をかけた。
……先程までとは違う優しい声で。
「……グシャート。本当のアンタを、思い出しなさいなぁ?」