『ルルーシュタ』の足跡を探すこと数時間。
なんの成果も得られないまま、無駄に時間を消費していた。そうとしか思えない僕とは裏腹に、サイルはずっと真剣に文献を漁っている。
ここは諦めよう。そう彼女に声をかけようとした時だった。
「ちょっとぉ、グシャート? アンタぁ、また馬鹿なこと考えているでしょう?」
レナジェが僕にそう声をかけてきて、思わず固まってしまった。えっ? 僕はそんなにわかりやすいのか?
そんな疑問に答えるかのように、彼は続ける。
「丸出しもぉ丸出しよぉ? ……ちょっと表に出ましょうかぁ?」
熱心に未だ資料を読みふけっているサイルのことを館長に任せて、僕達は一回外に出た。人気のない路地裏で、向かい合うとレナジェが呆れたため息を吐きながら、僕に向かってはっきりと告げた。
「アンタぁ、みっともないわよぉ?」
ぐさり。その言葉は僕の胸に思い切り突き刺さった。「みっともない」……その通りだ。
「レナジェ……」
「いい? アンタのその諦め癖はぁ正直もう治しようがないけどぉ。だからってサイルにそれを向けるのはぁ、愚かよぉ?」
またしても突き刺さるその言葉に、僕は思わず顔を伏せる。全て、全てその通りなんだ……。
そう、僕はみっともなく……サイルに嫉妬している。あのまっすぐさが眩しくて辛くなって。これじゃあ、前とちっとも変わっていない。
「なぁ、レナジェ……。僕はどう……サイルと向き合えばいいんだろうか?」
聞いたって意味がない。それはわかっている。だけどつい、口から出てしまった。そんな言葉に……彼は静かにだけど思ったよりも優しい声色で答えてくれた。
「なりたいアンタがぁ、いたはずよぉ?」
なりたい自分。腑に落ちた気がして、僕は決意を新たにした。
「レナジェ……サイルを手伝ってくるよ」
僕の答えに満足したのか、レナジェが頷き僕達は再び図書館へと戻って行った。
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「グシャートたん! レナジェ先生! サイルね、サイルね!!」
中に戻るなり、目を輝かせたサイルが僕達を出迎えた。なにか手がかりを掴んだのだろうか?
「あのねあのね! ルルーシュタさんのお話見つけたのん!」
……やっぱり、サイルには敵わないな。
「そっか。じゃあその話、詳しく教えてくれないかな?」
僕がそう尋ねれば、彼女は一層嬉しそうに手にしている古い新聞だろうか? を手にして、近くのテーブルに広げた。
大きな見出しには竜についての記述はなかったが、サイルが見つけたのは小さな、本当に小さな記事だった。
『小竜を助けた女、ルルーシュタの判決確定』
この記事の内容からはポジティブな情報は得られないだろう。それでも……僕は彼女と共に向き合うと決めた。なにがあっても――。