僕達は冒険者ギルドの許可を得て、
……当然というか、レナジェもお目付け役として付いてきたけど。
「竜たん♪ 竜たん♪」
ちなみに、当事者であるサイルはと言えばお気楽にも自分の相棒となる竜のことで頭がいっぱいらしく、難易度のことなんてお構いなしみたいだ。
これ、本当に大丈夫なのかなぁ……?
痛む頭をおさえていると、横からレナジェが声をかけてきた。
「あの子のフォローはぁ、任せときなさいねぇ? だからぁアンタはぁ自分のやるべきことをやりなさいなぁ?」
「……わかってるさ」
短く答える僕の肩をレナジェが叩く。痛い! 痛いって! 力加減ん!!
痛みのせいで涙目になる僕と楽しげに前を行くサイル。その様子をクスクスと笑いながらレナジェが見つめていた。
****
「ここ……だね」
思わず生唾を飲み込む僕の横で、サイルが目を輝かさせる。今僕達がいるのは、最近ここら辺で竜の目撃証言が多い山岳地帯だ。
ここに竜が……。
テルスやスセがいた頃でも、苦戦していた竜と戦うどころか……仲間にするなんて、ねぇ……?
思わず尻込みする僕に、サイルが不思議そうな顔で見つめてくる。えっ?
「グシャートたん、行かないのん?」
そうでしたね……僕が先行しないと進めないですね……。
「行くよ! ……本当に、行くよ?」
「早く行くのん! 竜たんが待ってるのん!」
うん、ダメだこの子。竜のことしか頭にない! 本当に大丈夫なのか……?
一抹の不安を胸に僕は装備を持ち直し、歩を進める。山間を抜けて行く間に、モンスターは出て……来なかった。一匹も。
そう、一匹も!
あまりにも不自然な状況に、僕とレナジェは顔を見合わせる。これは……明らかにおかしい!
さすがのサイルも気づいたようで、不安げに僕達の方へ視線を彷徨わせる。
「サイル! 臨戦態勢だ! 何が来るか……わからないぞ!」
「わ、わかったのん!」
緊張感に包まれる僕達の頭上にソレは現れた。風を切り、物凄い風圧で僕達の前に降りて来たのは、大きな体格をした銀色の竜だった。
その竜は紅い瞳で僕達を睨みつけながら、こう告げた。
【……なに用か?】
静かな、それでいて威厳たっぷりな声。それに答えたのはサイルだった。
「ウチ、サイルって言うのん! 竜たん! 相棒になってほしいのん!!」
汚れの無いまっすぐな瞳を向けるサイルに、竜の目がわずかに細くなった気がした。
【我を知らずに相棒とは……笑わせる……。だが、そうさな……。我をその気にさせてみよ、人間】
つまり、僕達を試す。ということか……。竜が与える試練って、一体?
不安になる僕とは裏腹にサイルはやる気満々みたいで、意気揚々と竜に声をかけていた。
その姿がまた眩しくて……僕は……。