「それじゃあ、サイル……さん? 行こう……ますか?」
いけない。あまりにも追放してしまった後のみんなの僕への扱いがひど過ぎて、言語がおかしくなってしまった。そんな僕をレナジェが哀れみの目で見つめてくる。その目やめろ、マジで。傷つくから!
「あのん? 早くいかないのん? ウチ、お金……」
「そ、そうだったね! 行こうか?」
僕が先導してサイルを連れてクエストの場所へと向かう。ちなみに、レナジェは後方から召喚獣に乗ってのんびりとついてきた。……羨ましいな、くそ!
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「……久しぶりだなぁ。ここに来るのも……」
僕が思わず呟けば、横からサイルが声をかけてきた。
「グシャートたんはここに来たことあるのん?」
……え、今なんて言ったこの子? ……たん? えっ……方言? そんな方言ある!?
動揺を隠せずにいる僕の横で、レナジェが口元を隠して肩を震わせているのがわかった。そこ、笑うんじゃない!
「あ、えっと。一応、僕は元々……ランクが上だったからね。ここには君くらいの頃……それこそ初心者だった頃に来たことがあるんだよ。まぁ、そもそも初心者用のクエストだしね……」
改めて口にすれば、すでにかなりボロボロにされた僕のプライドが更に砕けた気がする。そんな僕をサイルが不思議そうな顔でのぞき込んで来た。
「初心者じゃないのに、なんでこのクエスト受けてるのん?」
そっかー知らないかー。知らなかったから僕のパーティに入ってくれたのかー。あぁどうしよう、辛い。
思わず額に手を当て、遠くを見る僕のかわりにレナジェがご丁寧に説明をしてくれた。
数分後、事情を知ったサイルは……特に興味もなさげに答えた。
「ふぅん。でも、お金が入るなら関係なし! 早くクエスト、行くのん!」
この子、とんでもない守銭奴だ!? 僕よりお金かよ! ちょっと傷つくぞ……泣いていい?
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僕らのクエストは、予想以上に苦戦した。まず、僕自身の弱体化による動きの鈍さ。そして、サイルの威力は高いが不慣れな槍術士の動きにより、モンスター一匹倒すだけでもかなりの時間を食ってしまったからだ。
正直、こんな初級の雑魚モンスター一匹に、これかぁ……。悔しい気持ちと情けない気持ち、両方が湧き上がって来て、僕の心は沈んでいく。その空気を壊したのは、サイルだった。
「モンスター、倒せた!? 嬉しいのん! この調子でお金稼ぐのん!」
嬉しそうな声を上げる彼女を見て、僕は初心を思い出した。あぁ、そうだ。僕はどうして……忘れていたのだろうか?
彼女、サイルの姿が眩しく見えた。そして、感じた。わずかな希望を。