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第72話 中枢会議の始まり

 早朝からのミカエルとの話し合いが終わり、時刻は朝食の時間に差し迫っていた。

 それにともない、アルにも焦りが見えた。

 その原因は昨夜と今朝聞かされた話が原因である。

 世界の破壊と創造には四大天使の力が必要で、その影響でジブリールが消えてしまう。しかし、ミカエルの算段では、アルがジブリールにルシフェルの魔力を吸魔し続ければ消えないで済むかもしれないという話だ。

 吸魔とは、簡単に言えばキスである。ミカエルから多く吸魔をしろと言われたが、どのタイミングで、どういった理由で吸魔するかが問題だった。

 その事を意識するがあまり、ジブリールの顔をちゃんと見れる自信がなくなっていた。


「ああ~、どういう態度で接すればいいんだ? というか、俺から吸魔に誘うっておかしくないか? それに、ジブリールは嫌がったりしないかが心配だ。吸魔に誘ってキモイとか思われたらどうしよう!」


 部屋の中をグルグルと回りながらあーでもないこーでもないと言いながら既に数十分過ぎている。

 まだグルグル回っているアルの部屋のドアがノックされた。

 そして、アルが返事をする前に部屋のドアが開き、ジブリールが入ってきた。


「アル―、起きてますかーって、起きてるじゃないですか」


 突然のジブリールの訪問に驚く。


「お、おう。どうしたんだジル? こんな朝から」

「どうしたも何も、いつも私がアルを起こしてるじゃないですか。まぁ今日は自分で起きられたみたいなので良かったです」

「あ、ああ! そうだな! 自分で起きられた! うん、起きられたから大丈夫だぞ!」

「? 何が大丈夫なのか知りませんが、もうすぐ朝食なので食堂に来てくださいね」

「わ、わかった! 行く行く!」

「??」


 アルの挙動不審に首を傾げながらジブリールは食堂へと向かった。

 ジブリールが居なくなった部屋でアルが頭を抱えていた。


「さっきのは明らかに可笑しかったよな! もっと自然にしないとジルに気づかれる! いつもの様に接しないとだめだ! え? いつもはどう接してたっけ? やばい! 頭が混乱する! ってか早く食堂に行かないと不審に思われちゃうじゃないか! 急がないと!」


 ひとり言が多くなっている事には気づかず、アルは足早に食堂へと向かった。

 食堂にはアル以外の全員が揃っており、若干気まずい雰囲気を感じながら朝食となった。

 幸い食事の席順のおかげでジブリールを直視するという事は無く安堵していると、ジブリールがミカエルに話しかけた。


「今日の会議では私やクレアはどうすればいいのですか?」

「まず私がジルとクレアの素性を明かします。おそらく皆直ぐには信じないでしょう。ですから、私が合図を出したら魔力を高めてください。その聖魔力を感じれば皆信じるでしょう」

「それじゃあアルもそんな感じなのですか?」


 自分の名前がでたことにビクッと一瞬反応するが、ジブリール達には気づかれていないようだった。ミカエルを除いて。


「アルファード様も基本的には同じです。ただ、アルファード様はダルク教の新しい信仰対象なので、それっぽい事を言ってください」


 ミカエルの無茶振りにアルが反論する。


「それっぽ事ってなんだよ。もっと具体的に言ってくれ」

「う~ん、『四大天使は我が生み出した。これからダルク教は我を信仰せよ。さすれば安寧の時を過ごせよう』とかどうでしょうか?」

「どうでしょうかと言われてもな。とりあえずそれを言うことにするよ」

「畏まりました」


 ルシフェルとしての挨拶まで頭がまわっていなかったので、ミカエルの考えた言葉をそのまま引用する事にした。

 その後は衣装の事などで女性陣が話しているのを聞くだけで食事が終わった。



 昼の鐘が鳴る少し前、会議室に繋がる控室に皆が集合していた。

 それぞれ用意して貰ったドレスやシスター服に着替えている。アルも白い生地に金の刺繍ししゅうがこれでもかというほど施された法衣を纏っている。

 そしてシスター服で一番揉めたナーマだが、今はおとなしく普通のシスター服を着て退屈そうにあくびをしている。


「緊張とかしないのか?」

わたくしはただ立っているだけですもの。緊張しろという方が難しいですわ」

「ナーマの役目は怪しい奴を見定めて情報収集をする事なんだぞ、しっかりやってくれよ」

「分かっていますわ。後ろ暗い感情は読み取りやすいので大丈夫ですわよ」

「ならいいけど」


 ナーマと会話して少し緊張が取れた。

 そしてとうとう大聖堂の鐘が響き渡る。


「では皆さん、行きましょう」


 ミカエルの号令で会議室へと全員が入って行った。


 会議室のテーブルは大きな円卓になっており、一度に13人が座れる。

 上座にミカエルが座り、その左隣にアルが座る。そしてアルの左隣にクレアが座る。そしてミカエルの右隣にジブリールが座る。ナーマはミカエルのお付きのシスターという事でミカエルの後ろに控えている。


 アル達が席について間もなくして、会議室入り口に待機している聖騎士から報告が入る。


「皆様が御到着なされました」

「分かりました。開けなさい」

「はっ!」


 ミカエルの了承を得た聖騎士が会議室の扉を開く。

 一番最初に入ってきたのは枢機卿だ。次いで大司教のシドが入ってくる。

 シドの次から入ってきたのは全員同じローブを纏った7人の人物だ。おそらくこの7人が大罪司教なのだろう。

 枢機卿がジブリールの横に座り、シド大司教がクレアの横にすわる。大罪司教達はそれぞれの席順があるのか左右交互に座って行き、全員が着席した。

 それを確認したミカエルが皆に声を掛ける。


「今日は皆よく集まってくれた。感謝する」


 こうして緊急の中枢会議が始まった。


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