「……っあ、っ……!」
何千、何億の鋭い針で頭の先から足の爪の先まで刺されている気がした。今まで体験したことのない重圧感に胸がつぶされる思いで千切れるような息をもらす。
一体何が、どうしたというのだろう…?
わけがわからないままにとにかく立ち上がろうと、俯せになった状態から懸命に腕に力をこめるが、なかなか体が持ち上がらない。
『? ちょっとあんた、どうしたってんだい? まさか病持ちなんじゃないだろうね?』
様子がおかしいことに気付いた中年女が膝をつき、マテアへと手を伸ばす。
「さわらないで!」
ようやく自分の身に何が起こっているのか気付けたマテアは、接近する中年女の手から逃げようと身を起こしたものの――両目から飛びこみ頭内を直撃した激痛に堪えかね、再び雪面へ膝を屈した。
「いたい……いたい!」
頭の中に直接針を突き立てられたかのような激痛に身をよじる。見たのはほんの一瞬だったけれど、彼女の目ははっきりとこの痛みの大元を捕らえていた。すなわち。
「陽の女神よ、どうか、どうか月光神の娘に、お慈悲を……!」
それは太陽光。陽の女神が地上界の生きとし生けるものすべてに投げ与える、恵みの光矢。しかし儚い月光力によって生まれ、生きてきた月光界人のマテアにとって、それはあまりに強すぎる力の矢だったのである。
死んでしまう。
このままでは、死んでしまう……!
「あっ…、ああぁあぁぁあああーーーーーーーーーーーっ!」
我が身を貫く数千もの陽の光矢に太刀打ちできるはずもなく。
マテアは意識を失うまで絶叫し続けた。