ぐっと言葉につまった者たちを尻目にサナンはマテアの方へ向き直った。はたしてその仮借ない真実の口で何を言われるのか――身を固くして顎をひいた彼女にサナンは顔を近付け、その耳元にやんわりと囁いた。
「いいわね、マテア。こぉんなに役立たずの友人が大勢いて。現実から目をそらして夢ばかり見るには、とっても都合がいいわね。根拠のない楽観的意見でいいように解釈してもらえて、とっても嬉しいでしょう。だって本当に友達なら<
彼女たちはあなたに言ってるんじゃないの。自分を納得させるために口にしてるのよ。あなたがどうなろうと、しょせん他人事なの」
おかしくてたまらないと言いたげにくすくす笑いながら遠ざかる彼女の背に向かい、誰もが非難を浴びせかけたが、サナンはそよ風ほどにも感じないとでも言うように、毅然とした歩みで去って行った。
「マテア、マテア、気にすることないわ」
「そうよ、サナンはあなたを羨んでるだけよ。彼女は昔からラヤが目当てなの。知ってるでしょ? あなたにとられるのが悔しくて、あんなこと言ってるだけなの」
「あなたとラヤが好きあってるのは周知の事実だもの。それに、許しが必要といっても、今まで一対になることを許されなかったのはほんのわずかで、千組に一回あるかないかなのよ? 百年前のときも、二百年前のときも、それ以前だってずっとなかったそうじゃない。――そりゃ、まったくなかったってわけじゃないけど……」
「ばかっ」
無言のマテアに気弱になったイリアに、こそっと脇からサリアルの肘打ちが出る。
「大丈夫よ、マテア。あなたたちに限ってそんなこと、ありえないわ」
懸命に励まし、力づけようとしてくる彼女たちに、マテアは「そうね」と言葉を返した。返すしかなかった……。