やぁみんな、お待ちかねのボクだよ☆!え、別に待ってないとかそんな……もしかしてツンデレってやつ?まぁ、そうゆうのも嫌いじゃないよ!
いやぁ、ごめんね?本当ならボケとツッコミを掛け合わせたコミカルでナイスでテクニカルなボクの魅力を最大限に語り合いたいところなんだけど……実は今はそれどころじゃないんだよねぇ。
え、どうしたのかって?うん、まぁ実は────。
「さぁ、これは」
「どうゆうことなのか」
「ちゃんと説明してもらおうか?」
……今まさに、とある3人の神に囲まれて尋問されてる真っ最中なんだよね〜。しかもめちゃくちゃ怒ってるみたいなんだ。この三人組苦手なんだよなぁ。あぁもう、顔が怖いよ!なんでそんなに目つき悪いのさ?
「ど、どうゆうことって……なにがなにやら……」
三方向からまるで犯人を追い詰めるような疑いの眼差しを向けられているせいでつい目が泳いじゃったよ。え、全員顔が光ってるからわからないって?こんなにわかりやすいのに……。まさか、まだボクの判別すらついてないなんて言わないでよね?
まぁそれはともかくとして、今のボクの内心は冷や汗ダラダラものなんだよ。いくらボクがポーカーフェイスの素敵なイケメンだからって隠しきれない何かが滲み出ちゃったみたいな?ふざけてないってば、ほんとほんと。
だってホラ、もしかしなくてもこっそりやってた事がバレちゃったっぽいしね?
「あなたが、あの時計を勝手に使用したのはわかっているんだ。我々の協力も無く
「確かにあなたは我々より位の高い〈神〉だが、それでも不可侵領域というものがある。
「その管轄の〈神〉の許可なく勝手にその対象を使用するなど言語道断である。これは立派な法律違反だ。〈全能神〉が取り決めた掟は絶対なのだ。それは我々も含めた全ての〈神〉が当てはまる。掟を破ればどうなるか……あなたほどの〈神〉が知らぬはずはあるまいに。さぁ、白状してもらおうか。まさか知らぬ存ぜぬでしらを切ればいいとは思っていないだろうな?」
そう言ってボクにさらに詰め寄って来ているのは〈時間の神〉達だよ。この〈神〉は三人でひとつの〈神〉として扱われているんだ。3人とも同じ顔をしているしわかりにくいだろうけれど、三つ子のユニットみたいなもんだと思えばいいよ。別に歌は歌わないしダンスも下手そうだけどね。
この3人はそれぞれが“過去”、“現在”、“未来”を象徴していて〈時戻しの神〉、〈時止まりの神〉、〈時送りの神〉とも呼ばれているんだ。実はこの〈時間の神〉達は特別な時計を持っていて、各パラレルワールドの時間の管理をしているんだよね。……もちろん、ボクのパラレルワールドの時間もだよ。実はその時計って、もしもその時計の針がわずかにでも狂えば全てのパラレルワールドに影響が出るかもしれないと言われるほどボク達〈神々〉にとっても重要な時計なんだけど……その時計の管理者だからってピリピリしすぎじゃない?
やっぱりこの間、
つまり、ボクはあの世界に〈バタフライ・エフェクト〉を強制的に起こしてみたってことなんだ。
あ、〈バタフライ・エフェクト〉って言うのはね、蝶々の羽ばたきのような非常に小さな出来事が、最終的に予想もしていなかったような大きな出来事につながる 。という意味の言葉なんだよ。ちなみに普段はその〈バタフライ・エフェクト〉が起こらないように監視するのも管理者の仕事のひとつなんだけど……。
だってあのままじゃ悪役令嬢フィレンツェアが死んでしまうかもしれないじゃないか。……だからボクは
きっと
それにしても、バレるの早くない?いや、いつかはバレるとは思ってたんだけどさぁ。でも、せめてこの〈バタフライ・エフェクト〉の結果がわかるくらいまではもう少し時間稼ぎ出来ると思ってたんだよね。え、〈時計の神〉達がボクより優秀なんじゃないかって?まさか、そんなの冗談にもならないよ。
それにしても、時計の針はちゃんと元に戻しておいたしパラレルワールドの監視報告書も偽造して改ざんしておいたんだけどなぁ。結構厳しい監視の目を掻い潜って頑張ったのに、結局はボクの詰めが甘かったのかな。まぁ、どんなにすごいボクでもたまにはそんな事もあるよね!そんなボクも魅力的ってことだよ。
「いいか、誰の」
「どの世界だろうとも」
「
「「「それが例え、
ボクが諦めにも似たため息をつくと、三方向から鋭い視線と共に切っ先が向けられた。そういえばこの3人は〈神々〉の中でも珍しく武器を装備している神だったなって思い出したよ。自分達がパラレルワールドの秩序を護るんだっていつも張り切ってるみたいだからね。しっかし、その武器が時計の針ってどうなの?秒針なんてすぐへし折れそうだしダサくない?
そんな事を考えていると3つの切っ先がボクの首筋にツンと当たる。少しでも力を込めれば八つ裂きにするぞという脅しかな。
まぁ、ボクはそんなことで傷付きはしないんだけど……。
「あなたには罰を与える」
「いいか、これは〈全能神〉のご意思でもあるのだ」
「自分のしたことの罪の重さを反省して思い知るがいい」
その時にふと感じた違和感にボクは首を傾げて「君たち、ボクをどうする気なんだい?」とわざとらしく聞いてみた。〈時間の神〉達は意気揚々と話し始めたよ。でもボクにはわかってしまったんだ。あぁこれは……〈全能神〉に報告していないなって。たぶん、自分達の管理不足を問われるのが怖かったんだろうね。なにせ、
それに、ボクってこの3人には昔から嫌われてたからこれは嫌がらせのつもりなんだろうな。なんかこう、今の〈時間の神〉達、陰険な顔してるもん。(笑)
その罰の内容を聞いてボクは大人しく従うことにした。もちろん、しょんぼりとしおらしい態度も忘れていないよ。ボクの演技力に騙されて〈時間の神〉達はすっかりご機嫌みたいだけどね。
「「「さようなら、〈────の神〉よ」」」
いつもピリピリしている〈時間の神〉達がボクを拘束している時はやたらと嬉しそうだった。やっぱり、絶対にこの3人って性格悪いよね。ボクが突然いなくなった後の事とか、ちゃんと考えてるのかなぁ。
あ。そういえば、後ろの方にチラッと見えた“影”があったけど……もしかして
あの顔は、一体何をしでかすつもりなんだか────。
こうして五感を全て奪われたボクは、暗闇の中に落とされたのだった。