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第20話 無鉄砲の遺伝子




「なんなんですか、貴方は……。またこんなタイミングで現れて……」



『ぐひひぃ〜っ?♥なにこの子、面白い子だねぇ〜♪お硬い帝国には勿体ない☆♥』



視界の端で、赤い髪の少女が私の身体を支えていることに気づきます。

彼女はローズ――――かつての戦友と同じ顔を持つ、薔薇色の勇者。

私より頭一つ小さく、小柄かつ華奢で頼りない印象を受けます。

しかし、その小さな身体に秘められた魔力は底知れず、大槌を担ぐ姿は堂々たるもの。



「ちょっと!何よその顔?!せっかく助けてあげたのに、なんか文句あるのっ?!このドスケベ!!」



「いや、元はと言えば貴女の大槌で空に飛ばされたのがそもそもの元凶……なんですケドね。武器工場で労働を強いられるわ、右腕を斬り飛ばされるわで、いい迷惑です……」



「それはっ!ミズキがわたしの純潔を弄ぶからで……って!!右腕ぇえええ??!!ちょっと、どうしたのよソレぇえ?!!」



「え?今さらですか……?」



驚愕に目を見開き、彼女は今さら気づいたように私の右腕の無い場所を指差さすローズさん。

シンプルにバカなのでしょうか……?

普通なら一番最初に気づくと思うのですが。




「ま、まさかその右腕……あのキモキモ魔獣にやられちゃったのっ?!」



「……まあ、細かい説明を省略するとだいたいそんなところですね」



私は投げやりに返事をします。

息をつくたびに、胸の奥が鉛のように重く沈む。

正直、口を開くのもキツいんです。

しかし……ローズさんは魔獣へ視線を移し、静かに闘志の炎を燃やします。

激しく激怒している――――……。

私以上に、私の身体に起きたことに憤りを感じてくれています。



「ごめんなさい……もっと早く駆けつけてあげられたら、そんな目には遭わせなかったのに……っ!!」



「急に謝られても……困るんですけどねぇ……。でも、助けに来てくれてありがとうございます。」



僅かにですが、絶望的な状況に勝機が見えてきました。

彼女の力を借りれば、”諦めていた命”も救える……。



「ローズさん……力を貸してください……」



「言われなくともっ!!!あんなヤツ、わたしのハンマーでペシャンコよっ!!!一瞬でケリを付けてや――――」



「それは私が一人で請け負います……。ローズさんには”逃げ遅れた労働者さん達の救出”をお願いしたいです……」



「は、え??は???」



『ほよよ〜??💕』




風が炎の熱気を吹き込む中で、ローズさんだけでなく敵であるオリオンも素っ頓狂な声を上げます。

私の言葉が信じられないかのように、眉を寄せ、何度も目を瞬くローズさん。

けれど私からしたら、この選択は至極当然のもの。

勇者として、何を優先すべきか、何を成し遂げるべきかは明白です。



「ちょ、ちょっとなんで?!わたしがカッコよく魔獣を倒す流れじゃないの??!なんでミズキが一人でそんな危ないことっ?!!」



「なんでって……そりゃあ、私は勇者ですから。」 



勇者、という言葉にローズさんは目を見開き、再び叫ぶように反論してきます。



「わけわかんないわよ!!!なにその理屈!!だいたいっ!何でわたしが帝国の人間なんか助けなきゃいけないのっ!!!わたしはミズキを助けに来たのにっ!!!」



ローズさんは苛立ちと怒りを隠そうともせずに大槌を振り回し、ジタバタと地団駄を踏みます。

危ないんで、隣でそういうことするの止めて欲しいのですが……。




「ローズさん、聞いてください。武器工場は今、魔獣の吐いた火球によって辺り一面火の海です……。オイルや武器が次々に引火して、避難もままならない状況なんです……。一番近くの海岸まで5キロ以上あるこの場所から、人々を背負って逃げることは不可能……。でも、あなたの固有魔法なら全員を救うことができる……そうですよね?」





「ですよねって!!アンタねぇっ!!!」




耳がキンキンする叫び……。

しかし、そこには怒りだけではなく恐れや戸惑いの感情も見えます。

彼女は心から私の無茶を止めたいのでしょう。



「……最初、私を雲の上まで転移させた魔法がありましたよね。私に紐無し強制スカイダイビングさせやがった魔法ですよ……。その魔法で、どうかみんなを避難させてください……。このままでは工場が崩壊して、誰も生き残れなくなります……」



「そんなの、どうだって……」



「――――”勇者として、救える命を見捨てることなどあり得ない”」



「ぐ……っ!!」



ローズさんは苦虫を噛み潰したような表情で口を噤みます。

私の言っていることが正論だと理解しているのでしょう。

しかし、彼女は納得できないとでも言いたげな表情で私を睨みます。



「……アンタ、その身体であのキモゾンビと戦う気?」



「ええまあ、なんとかなりますよ……限界は超えるものですし」



「その腕で?!!」



「片腕だろうと、私は勇者ですから。それに……」



「な、なに?」



私はローズさんの瞳を見つめます。

本当にそっくりです。

あの人に……私の戦友だった”彼女”に――――……。



「私の命より、誰かの命が救われることの方が大事です。私は”勇者”として死ぬのなら本望……むしろ、納得して死ねる」



「っ?!なんでっ!そこまで出来るのよっ?!!”あんな奴ら”見捨てちゃえばいいでしょっ?!!」



必死に言い募るローズさんの姿はあまりにも純粋で、悲痛なもの。

だからこそ胸の奥に鈍痛を残します。



(その顔で、”そんなこと”言わないで欲しいですね……)



解釈違いです。

まあ、そもそも別人なので解釈も何もないのですが。



「”あんな奴ら”じゃないですよ。みんな、兄さんが命を賭して救った大切な”世界の欠片”ですよ……。そして、その欠片を守るのは私の役目です」




『いいねいいねぇ〜♪♥実に感動的だねぇ〜♪💕魔人のボクも思わず涙ぐんでしまうよぉ〜☆💕でもさァ、銀色勇者ちゃん……キミはもう限界でしょ?片腕が吹っ飛び、魔力も枯渇し、絶体絶命のピンチ♥そんな状態でどうやってボクの足止めをするつもりなの〜?💕どう考えてもそこのツンギレ美少女ちゃんの力を借りた方が得策だと思うけどなァ〜♪♥』



「五月蝿いですね。黙っててくださいよ、私は一人で貴女をブッ倒してやりますから……」



人面魔獣の肉体に憑依したオリオンがニタニタと挑発するのを無視し、私はローズさんの肩から手を離します。

右腕の断面を左手で押さえながら、私は改めて臨戦態勢を取る。



「本当にやるつもり?わたしヌキで……?」



ローズさんの声が震えている。

視線を感じて振り返ると、その目にはどうしても隠せない”失意”が顔を覗かせている。



――――ああ、やはり貴女は”彼女”じゃないんですね……。



当たり前と理解はしていますが、やはり残念です。

だって、私の知る彼女だったら……きっとこんな時――……。



「いや、関係ないですね……。そんなことより、早く行ってください。座標は私が思念を飛ばしてで指示しますので……」



「まっ、待ちなさい!!わたしはまだ承諾したワケじゃ――――」



「私のこと、”お仲間のリコリス”から聞いているでしょう……?」



私の声に含まれる無機質な冷たさが、ローズさんの肩を硬直させる。

視線が鋭く交差し、彼女の顔に一瞬だけ微妙な動揺が走る。

やはり、この都合のいい展開はマッチポンプか……。



「私を使って漁夫の利を狙っていたのか、単純に恩を売りたかったのかは知りませんが……。今だけは”貴方達に協力”してあげますよ。帝国も、あの魔人も、全部邪魔なんでしょう……?害虫駆除は得意です。」



「死に損ないのクセに、何様……?いいから黙ってわたしに助けられてなさいっ!!!そしたら――――」



「そしたら、私が仲間になるとでも思ってます?この世界を破壊しようと工作活動に勤しむテロリストの仲間に?」



「っ?!な……っ!」



「ローズさん、貴女……頭の中の思考がダダ漏れです。私と同じ感応魔法を扱うリコリスも一緒にココへ連れて来るべきでしたね」



ローズさんは何か言おうとしましたが、私はそれを遮ります。

これ以上は時間の無駄です。



「難しい話はしてませんよね……。私の力では助けられない人をローズさんの力で助けて欲しいだけ……」



「い、イヤッ!!わたしにメリットがないっ……!!わたしは、人助けなんて、もう……」



「いいから!早く行ってください、ローズさん……」



私は強く言い直します。

目を逸らさずに彼女を見据え、決意を揺るがせないように……。

もしこの一瞬でも迷いを見せてしまえば、彼女はきっと私を止めようとするだろうから。

重い沈黙が降りる中、彼女は苦々しい顔をして、ようやく視線を逸らす。



「……わかったわよ。あ〜もうっ!!!やればいいんでしょ?!やればっ!!ミズキの実力を信じるわっ!!でも戻った時に死んでたらぶっ殺してやるからっ!!!」



どうやって――――……?

なんて聞く前に、ローズさんはポコンっ!と大槌で自身の頭を叩いてその場から姿を消しました。

瞬間移動の魔法……。

より正確に言うなら、大槌で叩いた物体を”何処か遠くにぶっ飛ばす魔法”。

単純ですが、一度この身で体験したのでその恐ろしさは身に染みています。



「これでまた、二人っきりですね……」



火の粉が舞い上がり、汗が背を伝う。

心臓が荒々しく脈を打ち、身体の震えが止まりません。

いわゆる、武者震いというヤツですね、たぶん。



『見せつけてくれちゃって〜☆💕銀色勇者ちゃんは魔性だねっ♪♥ああやって言えば、薔薇色の勇者が断れないって知っててやったのかな〜?💕』



「さて、どうでしょうかね……。ともあれ、貴方をブッ倒せば私の勝ちですよ」



『ん〜?♥』



人面魔獣に憑依したリコリスは首を傾げると、ニヤリと笑いました。

慢心、油断、余裕……。

自信過剰も度が過ぎると滑稽ですね。



『借り物の身体とはいえ……そんな死にかけの身体じゃ、ボクを倒すことは出来ないよ?♥』



「いいえ、殺ります。その算段も、戦略も、私の頭の中にはあります」




私は血が滴る右肩を力強く掴みます。

そして――――……



「”刃の軍団(ブレード・レギオン)”!!!」



『わ〜お♥すごいすごい☆♥血が剣になった♪♥』



血が一気に沸騰し、私の魔力と共鳴し、渦を巻きながら凝縮されていく。

物質を刃に変え、操る魔法。

私の意志の元、血が鋭い刃に変わっていく。

かつてアメジストさんが使用していた固有魔法で己の血液を巨大な刃に変え、”真紅の大剣”を生成しました。



「勇者の武器は、全て自身の血液から創られれている。緋色の勇者の長剣も、茜色の勇者の番傘も、薔薇色の大槌も……」



大剣を肩に担ぎ、私は一歩前に出る。

狙うは、人面魔獣の首一つ……。



「なぜなら、”勇者の血”は魔獣や魔人にとっては身体を焼く猛毒。だから、私の血で創ったこの大剣も、貴女にとってはどんな魔法や武器よりも最悪な一撃になりえる……例え即席の急造品でもね」



『ほぉ〜?♥面白いね、銀色勇者ちゃん……♪☆♥それが最後の”秘策”ってワケね?♥でもさぁ〜、そんなのあったのなら何でさっきの人面魔獣戦で使わなかったの??♥銃一丁で闘うなんて、いくらなんでも無謀でしょ???』



リコリスが嘲笑しながら問いかける。

しかし、自信満々に挑発してくるその声が、逆に私を冷静にさせる。



「秘策とは使いどきが肝心です……。魔法で勇者の武器を生成する――――――血液を依り代にする以上、戦闘後に貧血で倒れるリスクは避けられない……そしたら、労働者さん達も助けられない……」



『はい???』



正直、ローズさんが来てくれなかったらこの策は使えなかった。

無鉄砲に戦って、”救える命を見捨てる”選択を取らざるを得なくなっていた。

だからこそ、私の尻拭いをしてくれているローズさんの救援には感謝します。



『あっははははははははは!!!☆♥くひっ、ハハハ♪♥まさか、労働者の救出を優先させて不利な戦いを、劣勢な戦いを選ぶなんて……!♪♥』



「元々、それが私の”勝利条件”です」



冷たく言い放ちながら、片手で大剣を構えます。

血の刃が空を切り、私の決意を刻むように、刃の切っ先が鈍く光る。

戦いは、もう始まっている。




『見捨てればいいのにぃ〜♪♥どうせアイツラは下層民!!!西大陸の勇者ちゃんは知らなくて当然だけど、アイツラは最初からいてもいなくても変わらない、”ゴミみたいな存在”なんだよ〜?💕女神からだって見捨てられてるぅ〜♪♪♥』



「私は見捨ててません……オマエの言う”ゴミ”に、兄さんは命を賭けたんですから……ねっ!」



正面から跳躍し、私は大剣を人面魔獣の頭部目掛けて振り下ろします。

対するオリオンは、呆れたように「はぁ……っ」とため息をつきながら両腕を前に構えました。




『愚かだねぇ〜♥銀色勇者ちゃん……そんな甘っちょろい考えで、今まで戦ってきたワケ?!』



「だぁぁああああーーー!!!」



ズドンッ!!と、鈍い音が響き渡ります。

大剣はオリオンの腕ごと頭部を叩き割ったハズなのに――……



――――ニュルニュル♥ニュッルルルン♥💕



『無駄だよぉ〜☆♪勇者の武器がどんなに強力でもぉ〜、ボクの魔法を突破することは出来なぃい〜♥』



「くっ!!」



私の大剣がナニカに絡みついて離れない。

人面魔獣の肉体が一部……数多に蠢く触手に”変化”して、私の創った真紅の大剣を絡め取っている……!!

引き抜きとも、切り落とすことも出来ない……。



『”肉体変革(ボディ・トランスフォーメーション)”……♥喰らった生物の特性や能力を解析し、自由自在に改造するボクだけの固有魔法さっ☆💕すごいでしょ〜☆♪♥今は、人面魔獣の腕をウニョウニョ触手に改造しました〜♥💕』



触手が私の大剣を絡め取り、ぎぎぎ、と不穏な音を立てながら、刃の部分を無理矢理に捻じ曲げていく。

力を込めて引き抜こうと努力しますが、その触手は一向に離れようとせず、むしろ私の武器を粉砕する力を増している。



「くっ、離してっ!」



私は叫びながら、大剣を握る力を強める。

しかし、私が決死の想いで創り出した真紅の大剣はあっさりと、棒切れのようにへし折られてしまう。

私は息を呑み、その光景をただ呆然と見つめます。



『勇者の血で創ったと言ってもぉ〜、所詮は急造品♪♥つまりは紛い物☆♥簡単に壊れちゃうんだよねぇ〜♥まっ、キミの細い身体はもっと簡単に壊せそうだけどねっ!♥💕』



「や、やめっ――――……!!」



叫ぼうとするも、痛みと苦しみに声すら絞り出せない。

触手が絡みつくたびに、私の体は硬直し、どんどんと身動きが取れなくなっていきます。




『ああ〜♪♥銀色勇者、磔の刑〜♥💕触手で四肢を拘束されて動けないねぇ〜?♥あっ、今のキミは三肢かっ♪💕右腕、なくなっちゃったモンねぇえ〜♪♪💕♥』



「うぐ……っ!!こ、こんなもの……っ!!」



私は必死に抵抗しますが、左手と両足に絡みついた触手はビクともせず。

それどころか、さらに私の肉体を締め上げます。



『んひひっ♪♥ああ〜💕いいよぉ、その苦痛に歪む表情……☆💕なんだっけ、キミたちの世界じゃこ〜ゆ〜の同人展開って言うんだっけ?♥💕滾っちゃうなぁ〜♥いいなぁ〜、その絶望感溢れる瞳……!!♪♥キミの”死”は、いったいどんな味なんだろうね……??♥♥』



オリオンはニタニタ笑いながら私に近づいてきます。

ああ……コイツは私を”食べる”気だ――。



『んふふ〜♪☆💕それじゃあ、いっただっきまぁす〜♪♥』



「掛かりましたね……マヌケっ!」



――――ズパァアアアンッ!



私は目を見開き、全身に力を入れて最期の魔力を解き放つ。

次の瞬間……鋭い痛みが私の胸元を斬り裂き、肉を裂く音が頭にまで響いてきます。




『……か、ひゅ?あ、アれ……?』



驚愕に目を見開くオリオン。

口内を鋭利な刃で貫かれ、例の喧しい高笑いがピタリと止んでいます。

”私の胸元が裂け、刃が突き出している”からです。




『あ、がが……な、に……??こひぇ???』



「がふっ!くっ……!さっき、言ったでしょう??秘策とは……使いどきが、肝心。これは、私の”心臓で創った刃”……名付けるならば”息吹の血斬り(ブラッド・ブリンガー)”」



『いひ、ひっ……??』 



刃が突き出している感覚で胸が苦しい……ですが、決して音を上げずに言葉を続けます。

絶対に、ここで倒れたりはしない。

私は胸から生えた刃に力を込め、無理に息を吸い込む。



「げほっ!はぁ……っ、はぁ……。絶対、喰いにくると思ってました……。だから、罠を張れた……。アメジストさんの、物質を刃に変換させる魔法……。心臓を刃に変換させて、私の胸元から……刃を突き出させた……。おかげで上手く身体が動かないです……かふっ……!」



『い、ぎぃいいいいいいっ?!!あが、はぁあああああああーー――ッ?!!』



オリオンの口内から真っ赤な鮮血が溢れます。

死体に憑依してるっぽいですが、痛覚を共有しているのでしょう。

どんな魔法にもデメリットはありますからね。




『なん、でっ……?!ボクが、キミの身体を喰らいに来るって分かったの???だって、だってキミの感応魔法は――――』



「?何か対策を立てていましたか……?だとしたら、この状況では無意味です。”彩喰”のオリオン……。感応魔法が通じなくても、異名からだいたい推測出来るでしょう?あぁ、コイツは人を喰らって攻撃する系の敵だって……というか、固有魔法も生物を喰らって〜とか言ってましたし……」



『い、ぎっ……ぅ!!』



オリオンは口から血反吐を撒き散らしながら、触手で私の胸元の刃を掴みます。

まだ自我があるみたいですね……ですが無駄です。

もうチェックメイトは覆らない。

刃が突き刺さった魔獣の頭部を残った方の手で鷲掴みにし、メキメキと力を込める。



「私の勝ちです……。近い内に本体も”この世界”から永遠に葬ってヤルから……首洗って待ってろよ、メスガキ……っ!!」



『ミ゜』



――――グシャッッッ!!!!!



虫が絶命する時の断末魔と共に、人面魔獣の頭部が飛散します。

長い戦いでした。

私は力尽きたようにその場で膝をつきます。

もう一歩も動けません……

右腕を失い、血で大剣を創ったせいで貧血気味。

身体がどんどん重くなって、脈も弱りきり――――……あっ!私の心臓、刃に変えちゃったから動いてないや。



「やば……どう、しましょ……う???」



戦いに夢中でそこまで考えてませんでした。

これ死にます、絶対死にます……。

だってもう急速に意識が遠のいて、視界が暗転し始めてますもの。



(ああ……ローズさんは上手くやったのでしょうか?せめて労働者の皆さんが無事ならいいのですが……)



私は覚悟を決めて、目を閉じます。

今際のきわ、最後の光景は――――――……

バゴォオオンッ!!と凄まじい爆音を響かせながら工場全てが吹き飛ぶシーンでした。

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