――――魔王は討ち滅ぼされ、世界に光が戻りました。80年ぶりの太陽が世界に顔を出したのです……。
どこからか声が聞こえる。
女の人の声……。
けれど瞼が上がらないので、その姿形を捉えることが出来ない。
――――貴女の兄のお陰で長い夜が明けたのです。しかし、彼の者は死んでしまった。その身を犠牲にして、魔王と刺し違える形で。
は……?
急に何を言って……。
っというか、兄さんが死んだ??
――――勇者のいない世界は再び暗雲に閉ざされるでしょう。今度は人と人の争いが始まる。そして力を求める余り、倒したハズの魔王すら戦争に利用されてしまうでしょう。死してなお、ヤツの力は巨大です。世界を奪われてしまう。
だから、何を言って……?
――――だから貴女が為すのです。貴女の兄がやり残してしまった物語を、代わりに妹である貴女が紡ぐのです。貴女にも……その素質がある。
「っ!」
私は勢いよく飛び起きた。
……が、そこは知らない部屋だった。
大きな窓と天蓋つきのベット、見たこともない装飾の家具やら絵画やらが並べられている異質な空間……。
「ここ、は……?」
「お勇者サマ〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!」
「にゃんにゃんにゃ〜〜〜〜〜んっ!!!!」
「ぐぶぇあっ?!!」
突如……二つの影が私の身体に乗しかかり、私は白目を剥く。
一体全体なんなのだろう?
私はさっきまで某動画サイトで配信していたハズなのに……。
勇者ってなんのこと???
このオタクが考えた乳のデカいアニメキャラみたいな二人は誰??コスプレ???
頭の中でいつくものはてなマークをグルグルさせながら、私は再び意識を手放した……。
これが始まり……。
引きこもりのニート女配信者が異世界に召喚され、勇者になるお話。
その最初の一歩だった。