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第96話 警戒区域

 あのあと少しだけ話をしてから次の日の為に早めに寝ることにした

 本当は寝れないソラちゃんと一緒に起きていたかったがいざという時に寝不足ではい力が出せませんで逆に迷惑をかけてしまっては意味がない

「……妙ですね」

 起きてから朝食を取ってすぐに出立し、昼頃には研究所がある森の入り口まで到達していた

 森から先には監視カメラや警備用のセンサーなどが張り巡らされているということだったがここに住んでいたことのあるソラちゃんと研究者側だったアカネさんの二人で擦り合わせてそれらの場所は既に把握済みだった

 隠れながら道を進むなかソラちゃんが訝しげに顎に手を当てて呟く

「どうしたのソラちゃん」

 私はソラちゃんのうしろについて聞き返す

「おかしいとは、思いませんか?」

「えっと、何が?」

 今日起きてからのことを思い出してみるものの特におかしいと思う点は思い付かない

「今までのことですよ」

「……?」

 そんな私にソラちゃんはもう一度言う

 今までのこと、となると今日のことだけではないのだろうか

 そうなると二人でアカネさんのシェルターを出た時からのことか、私は何とか思い返してみるもののやはり何も思い付かない

「ここまで来るのにかかった日付は?」

「約3日……だね」

 シェルターで一泊した後にここを目指しはじめて深夜に発ったことを加味すれば約3日、それぐらいの計算は流石に出来る

「では、それまでで出会ったゾンビの数は?」

「……最初のほうは何体かいたような気がするけど、ここ最近は、見てない……?」

 自分で言葉にしていてその違和感にやっと気付くことが出来た

 そうだ、以前も一度同じような状況を経験しているではないか

 今回は敵の拠点に近付けば近付くほどにどんどんと徘徊しているゾンビに出会う数が減っていっている

 今日に至ってはまだ一度も遭遇していない

 最後の戦いの場に近付くにつれて自ずと緊張が増してきてそこまで考える余裕がなかった 

「そうです、研究所に近付くにつれて野良のゾンビが減っていっている、それに……」

「それに?」

 だがどうやらその話には続きがあるようで

「おかしいんですよ」

「……何が?」

 ソラちゃんの言葉に息を飲んで聞き返す

「この近辺から警戒区域に入るんですが、警戒区域

は知能指数の中程度のゾンビが基本的に警備を兼ねて徘徊しています、ですがそれが全く見当たらない」

「それは……」

 流石におかしい、ということは私にも簡単に理解出来た

 私達が侵入しようとしたタイミングで丁度野良のゾンビどころか警備用のゾンビすらいないなどどう考えてもあり得ない

 私達がここを訪れることがバレているのか、はたまたもう一つ理由を考えるのであればゾンビイーター達がアカネさんのシェルターに向けて進軍を開始したことが何か関係しているのか

 どちらにしろいい雰囲気はしない

「少し警戒度合いを上げましょう、嵐の前の静けさと言いますが……不気味でなりません」

 ソラちゃんは言いながら背中の刀の柄に手を掛ける

「……分かった」

 私は強く頷くと手に持っているバールに強く力を込めた


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