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第3話 現政府の実態、そして究極の二択選ぶは

「……巻き込みましたね、助けたつもりが結果的に、申し訳ないことをしました」

 刀を閉まったソラちゃんはこちらへ顔を向けると謝った

「これではおそらくシェルターに帰ってもダメでしょう、どうしたものか」

「あ、それなら大丈夫だよ、私今シェルターに住んでないから」

 考えあぐねている様子のソラちゃんに挙手して伝える

 そう、巻き込まれるも何もそもそも現時点で私は窮地であり何よりもソラちゃんに助けられなければ死んでいたわけで

「……ですがその格好は」

「えーっと、わけあってシェルターを追い出されちゃって、シェルターの人達は悪くないんだけど……だから新しいシェルターとか探していたところで」

 少し訝しそうにするソラちゃんにあわてて状況説明をする

「そこで首を突っ込んで巻き込まれた、ということですか」

「まぁ、そうなるかな……」

 事実ではあるが相変わらず言葉の切れ味が鋭い

「となると、現状この状況で別のシェルターに行っても面倒なことになるだけ、か」

「あの人、そんなにヤバい人、っていうかヤバい組織なの……?」

 ソラちゃんの言葉に先ほどの少女を思い出す

 彼女の言葉からして何か大きい組織が絡んでいるのは当然だろう

 しかもシェルターに行くと面倒なことになるくらいの

 これは、思っていたよりも大事に巻き込まれている気がする

「……この道をしばらく進むといい感じの立地がありますからそこでとりあえず野営を張って、これからのことを話しましょうか」

 ソラちゃんは周りの様子を伺ってから先に歩きだした


「28番、また独断専行した上に逃亡者を捉え損ねたと、何か言い訳はあるか?」

 基地に帰宅して早々ホシノは一人の白衣の女の前に立っていた

 女はそうでなくても女性にしては高い身長に黒のピンヒールを履いておりかけられた縁なしのメガネがより目付きを鋭くさせている

 朱色の長髪もまた威圧感を強くする要因だろう

「言い訳も何も、誰よりも最後まで食らい付く為に追いかけたんですよヨハネ様、ゾンビらしくねー」

 ヨハネと呼ばれた女にホシノはがおーっと噛み付くような真似をする 

「……お前の戯れに付き合ってる時間はない、何か報告があると聞いたが?」

 ヨハネは苦虫を噛み潰したようような顔をして距離を取る

 そんなヨハネを鼻で笑ってホシノは続ける

「そうご報告ですが、逃亡者26番、ソラには逃亡の手助けをしている存在がいることが判明しました、名前はウミというようですが彼女の経歴を見るに色々なシェルターを転々としているという記録があります、その過程で26番と知り合ったものかと」

「なるほど、では協力者として手配に加えるように全隊員に通達を」

「了解しましたー」

 ヨハネの決定を聞いてやる気のない敬礼をしてくるりと踵を返したホシノは、緩く口角を上げた


「真っ暗になる前に準備終わって良かったね、本当に時計がないと何時なのかわからなくって困るよ」

 シェルターから貰ったリュックの中身で簡易的な野営を張ると用意したそこらの木の棒を焚き火に投げ込む

「今は、夜の6時半を過ぎたところですね」

「え、時計持ってるの?」

「……はい、昔支給されたものを」

 的確な時間を教えられてとっさにソラちゃんのほうを向けば腕に巻かれた簡素なバンドをこちらへかざしてくれた

 そのバンドには時間以外にも何か記載されていたがそれを確認する前にソラちゃんは腕を戻してしまった

「そっか……あ! ソラちゃん食料持ってる? 見た感じ荷物持ってないけど……もしかしてさっきの人と何かあった時に落としてきたとか、それなら暗くなる前に探しに……」

 確か初めて会った時からすでにリュックのようなものは持っていなかったように思うが彼女の先ほどの反応からするにシェルターなどには住んでいないように見える

 だから逃げる時にどこかに落としてきたのかと心配したわけだが

「元々これ以外携帯していませんので」

 刀に触れながらそう言ったソラちゃんにそれ以上の追及は出来なかった

 もしかしたら何処かに寝床のような場所があって今日は何かの用事で出ていただけでだから荷物を持っていないとかそういうことだろうか

「じゃあ食料……そうだ、私がシェルターで貰った缶詰め一緒に食べようか、どれがいい? 皆優しくて結構色々な種類の缶詰め――」

「必要ありません、あなたは食べながらでいいですからさっさと話しますよ」

 かと言って今日は帰れないことが決定している訳でなにも食べなければお腹も空くだろうとリュックの中の缶詰めを漁っていればまた表情もなくピシャリと言い放たれてしまった

「あ、ごめん……」

 咄嗟に謝って視線を焚き火に戻した

 彼女とはこれからについて話す為に一緒に野営しているだけなのにあまりに馴れ馴れしかっただろうか

 今だって私は焚き火の前に座っているがソラちゃんは少し離れた木にうつかっているし

「……まず、ゾンビイーターという組織をご存知ですよね」

 ごほんっと咳払いをしてからソラちゃんが話し出す 

「あ、うん、国がゾンビ殲滅の為に組織した部隊、だったよね、国からの配給がある時も何人か来てるから」

 ゾンビイーター

 その名の通りゾンビを殲滅する為の組織であり所属する者は皆特異な人体改造を施されており軍隊などでは救出の難しい場所にいる民間人の保護や配給時の護衛などにも関わっていると聞いたことがあるが私自身が見たことがあるのは配給を受け取りに行った時ぐらいで確か迷彩のマントで身体を覆っていた気がする

「……私を追っていた彼女、彼女達はゾンビイーターです」

「……え、でもっ、ゾンビイーターは国の機関で、そもそもあんな女の子がゾンビと戦って……それに何でただの女の子を追いかけてるの?」

 追手がゾンビイーターである

 そのたった一言で頭が混乱する

 聞きたいことは沢山あったが一番気になるのは国に追われる理由だ、しかも何故軍ですらなくゾンビイーターなのか、たった一人の少女を捕まえる為にしてはあまりにもやりすぎに思える

「私が、ゾンビイーターの研究に関する国家機密に携わっていたから、ですね、私は嫌になってあの組織を抜けましたが情報漏えいを恐れる上層部から今度は命を狙われることになりこうして逃げているわけです」

 私は嘘には敏い方だと自覚している

 ソラちゃんは嘘は、言っていないと思う

 でも言葉の端々に何か、意図して隠している、気がする

「それにしてはホシノっていう子は、なんか、あまりにも……」

 でもそれ以上踏み込むのはためらわれて別の方へ話を振った

「彼女は私が嫌いですから仕方ありませんね、あなたと一緒にいるところを見られたのが彼女でなければもう少しスムーズに物事も進んだでしょうが……」

「……成る程、国からの追手だから国の建てたシェルターには戻れないってことなのね」

「ホシノがなんと報告したかにもよりますが十中八九真実をねじ曲げて悪い報告をしているでしょう、捕まれば私の情報を聞き出すために拷問か、悪くて処刑ですね」

 拷問、処刑という言葉にひゅっと息を飲む

「……こんなことになってしまってはいるけど、国が一般人にそこまでするの……?」

 パンデミックが起きて荒れに荒れた世界だそれでも一応国として存在しているのに政府がそこまでするという言葉をそのまま飲み込むには大きすぎた

「これだけ荒れた世界です、裏を見ればそんなことも沢山ですよ、そしてあなたには選択肢があります、一人で何処か地方へと逃げてシェルターを使わずにひっそりと生きていくか、私と共に来てゾンビイーターから逃げ、私に守られながら生きるかの二択です、後者であれば私は命を賭けて守りましょう、巻き込んだのは私です」

 だがあくまでソラちゃんは至極冷静で

 そんな究極の二択を簡単に投げて寄越した

 でも、意外と迷ったのは一瞬だった

「私は……」

 私が選んだ、究極の二択は……

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