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第21話 やっぱり、ハンターの称号を持っている冒険者は変な人が多いのかもしれない

「嫌だぁぁ、もっと楽しみたいぃぃ」


「カルロさん。貴方用にストックしている依頼が溜まっていますので、そちらを処理してください」


 ギルドに戻って依頼完遂の報告をしたカルロがアルタイルたちに「次も一緒に狩ろう!」と誘ったのだが、受付嬢に「まずこちらを処理してください」と止められてしまった。


 カルロはまだ二人と楽しみたかったようだが、アルタイルに断られてしまい、今こうして駄々をこねている。


 この人は何度、駄々をこねればいいのだろうか。などと、フランは思いながらその様子を眺めていれば、受付嬢が彼の腕を掴んでギルドの奥、事務室へと引っ張っていく。



「悪い子はギルド長に説教していただきましょうねぇ」


「うわーん! それはもっといやぁぁ!」


 あのおじさん怖いんだもんと抵抗するカルロだが、受付嬢の力が強い。成人男性の力に負けず、むしろ勝ってずいずいと前へ進んでいた。


 事務室にカルロを突っ込むと、受付嬢は「アルタイルさん、では」と笑みを浮かべてから扉を閉める。


 これもまた慣れた様子にフランはいつものことなのかもしれないなと察した。アルタイルは疲れたように息を吐いて近くのテーブルへと腰を下ろす。フランも隣に座れば、彼は痛むのか額を押さえた。



「大丈夫ですか?」


「いつものことだが、あいつに付き合うと疲れる」



 魔物を討伐するよりも疲れるのだとアルタイルは頬杖をついた。やっと相手をしなくてすむといったふうに。


 アルタイルの態度を見るに面倒だと感じているのは察することができる。けれど、どうしてカルロに付き合いきれるのだろうかという疑問をフランは抱いた。



「あの、アルタイルさんの苦手な部類の方のようですけど、どうして面倒を見ているんですか?」



 一応は友人なのですよねとフランが聞いてみればアルタイルは眉を下げた。友人であるのを認めたくないような表情をしていて、ますますフランは疑問に思う。


 アルタイルは「あれはしつこいんだ」と教えてくれた。たまたま狩りで一緒になった時に戦闘スタイルや、カルロへの対応、それらを気に入られてしまったらしい。


 カルロが積極的に話してくるのを雑に対応してれば、彼の行動を理解しているのだと周囲に思われて、何かあると「カルロをどうにかしてくれ」などと助けを求められた。面倒ではあったけれど、カルロの言動を理解してしまっているのは事実。


 泣きつかれ、頭を下げられては無碍にもできずに引き受けてしまい、こうしてカルロとまともに話せる数少ない冒険者の一人になってしまった。



「あいつの対応をできるのは俺とハムレット、ギルド長と受付嬢ぐらいだろうさ」


「あ、ハムレットさんもなんですね」


「ハムレットも俺と同じような感じで周囲から認識されていた」



 ハムレットは適応力が高いのでカルロの扱いにはすぐに慣れてしまっていたという。アルタイルが対応できない時は彼に回ってくるらしく、その時に会えば愚痴が聞けるとのこと。


 けれど、ハムレットは女たらしではあるが、面倒見が良いのでついつい構ってしまうのだとか。だから、カルロも彼に甘えてしまうとアルタイルは「あいつの駄々こねが悪化した原因はハムレットにもある」と溜息を吐いた。



「カルロに構うぐらいならばハムレットの頼みを聞いた方がまだいい」


「でも、カルロさんは見捨てないと」


「ギルド長に頭を下げられたら断れないだろう」



 それはそうだとフランは頷いた。この町のギルドを取り仕切っている存在に頭を下げられては断るに断れない。ギルド長の評判は良くて、優しく時に厳しい彼の人柄というのは冒険者からも人気だ。


 どんな相談にも親身になってくれるだけでなく、解決までしてくれることもあるので助けられた冒険者はなかなかギルド長の頼みは断れない。


 アルタイルも自分の戦闘スタイルや他の冒険者への対応などを受け入れてもらっている身としては断りづらいようだ。



「あいつは自分が楽しいと思ったら満足するまでやる。そこが面倒くさい」


「狩るのが楽しいかぁ。不思議ですね、私には分からないです。あと、私のやらかしが面白いとか、楽しいとかも」


「フランのその体質は面白いから問題はない」


「そこがまず理解できないです、私」



 この不幸体質の何処が面白いというのだろうか。下手をすれば迷惑をかけてしまうかもしれないというのに。


 けれど、それをアルタイルは上手く使いこなしている。不幸の連鎖というのもフランから始まるが、結果として魔物が巻き込まれて終わっていた。


 自分のこの体質がアルタイルと一緒にいることでなんだか変わってしまっているような気がするなとフランは思う。



「別にお前が酷い目に遭っているから面白いわけではない」


「それは何度も聞いているので、一応は理解してますけど……」



 不幸の連鎖が面白いという感覚が理解できないだけでと言っても、アルタイルは不思議そうにしてくるだけだった。それは私が一番、思っていることなのですがと突っ込もうとしてやめる。


 ハンターという称号を持っている人は変わっている人が多いのかもしれない。うん、そうだきっととフランはそう納得することにした。



「あいつと絡むと疲れる」


「疲れているようなら宿で休んでいても……」



 疲れているのであれば無理するのはよくないと、宿で休むことを提案するとアルタイルは首を左右に振った。



「この時間が良いから問題はない」


「えっと?」



 何が良いのだろうか。不思議そうにアルタイルを見つめれば、何とも機嫌良さげな表情で返されてしまう。


 暫く見つられてからアルタイルは店員に注文をした。そう時間も経たずにフルーツの盛り合わせがテーブルに置かれる。



「アルタイルさん?」


「フラン、食べるといい」



 ほら勧められるままにフランは林檎を齧る。うん、美味しいと食べながらフランは視線を上げれば、もう楽しそうにしているアルタイルがそこにいた。



「楽しそうですね?」


「そうだな」



 この時間は楽しいとアルタイルに言われてフランは特に何かしたわけでもないけどなぁと思いつつも、彼が楽しいのならいいかと深く聞くのを止めた。


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