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第34話

そして会議には当然、最も苦手とする人物……叔父の清隆もいる。

確かに言われてみれば……髪が不自然に増えて艶も出ていて若返った感じがする。

希美さんはなんでも気がつくから凄い。


父の遥彦とその秘書を中心に会議は進み、1.5時間ほどで思っていたよりも早く終わった。


「昇は残りなさい」


即刻退散しようとしていたのだができるわけがなかった。

父に呼び止められ、会議室には父と兄と叔父が残る。なぜ叔父まで……と少々眉間にシワが寄った。

彼が僕を見る目はいつも蔑んでいるような、見下しているような、嘲笑っているような、そんな目だ。


「要件は分かってるな、昇。」


「……。すぐに対処しますよ。だから今日は帰ります」


「待て。それに関しては清隆が対応するからお前はいい。下手に出るな」


「はい?清隆叔父さんがなぜ……」


清隆叔父さんに視線を移すと、嘲笑うような視線をまっすぐこちらに突き刺しながら口を開いた。


「黒宮COは俺の子会社と提携している重要企業なんだよ。あの社長は溺愛している娘の我儘っぷりに振り回されて何度も経営不振になったから、現在は篠原を入れて管轄にしてんだよね」


篠原というのは清隆叔父さんの右腕的存在であり、若干33歳にして恐ろしいくらいに仕事のできる男だ。


「だから篠原を通して社長にハッパをかけるようにしてあの娘さんの機嫌取りをさせておくからお前は何もしなくていいよ、昇。今まで通り、極力目立たずにいなよねぇ」


こういう見下したような物言いも、この人のことを好きになれない理由の一つだ。


「しかしっ、これは私の問題ですし、」


「お前が下手に動いたら、あの娘さんは尚更執着するのが目に見えてる。そんなことも分からないのか?」


兄が腕を組んでキッパリとそう言い放つ。


そんなこと分かるわけないだろ……

僕はアンタらと違って女性の扱いに慣れてないんだから。


「そもそも許婚だったはずの女性を切ること自体がありえない。こういったリスクや周囲にかかる迷惑の可能性を考慮してのことだったんだろうな?」


父の厳しい視線に、僕はあえて目を逸らさない。


「すみません。しかしこれは私の人生なので。絶対に何も支障の出ないようにしてみせます。だから結婚は認めてください。」


来週末、父の元へ萌さんを連れてくる約束をしている。


「お前がそこまで言うなんて一体どこのどんな娘なのか見ものだな。」


「加賀見の者が恋愛結婚なんて、前代未聞だねぇ。」


いちいち口を挟んでくる叔父にイラついてしまう。


「……そうですよ。そのくらい魅力のある方ですから。そろそろ帰してもらえますか?その方の元へ。」


立ち上がる僕に、3人とも少し目を丸くしていた。

そろそろ僕はもう、誰の言いなりにもなりたくない。


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