「……わぁ、ねぇこれっ……」
怖いくらいに凝視されている。
「こっ!これっ!莉奈が憧れてるあのブランドの指輪!!」
「あぁ……そ、そうなの?」
わぁぁあ……!と目を輝かせる莉奈さんを意外に感じた。
だってお嬢様ならこういうものに憧れるなんてことないと思っていたから。
世の中の何もかもに手が届くはずなのに、やっぱり彼女も女の子……ということだろうか。
「萌ちゃんって、結婚してたの?!」
「えっ、あっ、婚約はしたの……ついこないだ…」
「じゃあその人から貰ったんだ!いいなぁいいなぁ〜…莉奈も欲しいよォ……」
私の指を持ち上げまじまじと見回しながら、まるで子供のように目をキラキラとさせている。
背景がちょうどピンクと白の薔薇で、彼女の空間だけが切り取られたように異質だった。
まるで異国のお姫様みたいに。
「……。莉奈ちゃんは、恋人とか好きな人とかいないの?」
ピタリと突然動きが止まり、表情が固まった。
が、それも一瞬だった。
「ふふっ、いるよ!」
すぐにフニャッと笑顔になって頬を染め、なにかに恋い焦がれるような表情をした。
「優しくてかっこよくて…すっごく素敵なの。莉奈をお嫁さんにしてくれるって、小さい頃に約束してくれたんだ。」
「へぇ、幼なじみなんだ!じゃあ将来その人に貰えるね」
「……うん。そう…だといいな。」
目を細め、突然静かな声のトーンになったので首を傾げる。
どうしたんだろう。あんなに恋する乙女の調子だったのに。
「萌さん!こんなところにっ!!」
その声にビクッと体が反応した。
ハァハァと息を切らして焦った表情で近寄ってきたのは村田さんだった。
「何度も電話したんですよ!勝手に居なくならないでください!」
「えっ、あ!ホントだ!すみません!」
スマホをチェックすると、なんと20件近くの着信が入っていて驚いた。
というか、すごく申し訳ないが、彼のことがすっかり頭から離れてしまっていた。
「いや違うな…こちらこそすみません。目を離してしまって……本当に…」
「えぇっ!ちょっとやめてください!」
深く頭を下げ出したので私は慌てた。
村田さんが謝る必要はないし、そもそもそこまで付きっきりになってもらうこと自体がおかしい。
「あのえっと…っ!私はお嬢様でも子供でもないんだから放っておいてもらって結構ですし、この中でくらい村田さんも自由に…」
「何言ってるんです!あなたは加賀見昇の妻なんですよ?」
ハッと息を飲む音が聞こえ、莉奈ちゃんがいたことに気がついた。
村田さんも今更気がついたようで、目を見開いた。
「りっ!な、なぜここにっ?!」
「庵さん……それ本当なの……?」
え、知り合い?!