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第24話

「昇さん」


コーヒーを入れ、テーブルにセットする。

彼はいつも、砂糖もミルクも入れる。

てっきりブラックとばかり思っていた。

こんなところも、知らなかった彼の意外な一面だ。


「これからいろいろやっていきましょうね。一緒に。せっかく家族が増えたんですから。」


彼が買ってきた高級そうなコーヒーの良い香りが部屋に漂う。


「萌さん……」


昇さんの前にコーヒーを置き、離れていく私の手が掴まれた。

驚いて顔を上げ、目を見開いた。


まるで子供みたいな、そんな表情をするところも、彼の意外すぎる一面だ。


「ありがとうございます。初めてのことばかりで…これから楽しみです…」


すごく…

と、静かに響く声。


「昇さん……。私も全部初めてですよ。ていうか、結婚自体初めてなんだから、お互い全部初めてだらけに決まってるじゃないですか」


どうしてなのか分からない、うるさい心臓を誤魔化すように笑ってみせた。

隣で茶菓子のクッキーを盗ろうと跳ねているチコに視線を移した昇さんが、初めて笑った。

これが初めて、私が見た彼の笑顔だった。


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