「似ていますね、萌さんと僕は。」
「え?似ていますか?」
「えぇ。僕だって傷つけられたくないけど癒されたいとは思っている、傲慢な奴ですからね」
「……昇さんも……癒されたいんですか?」
「そりゃあもう常に…。癒しを渇望してますよ」
昇さんの指が、私の指輪を転がすように撫でている。
「あぁ……癒しといえば……私昔は犬を飼うのが夢だったんです」
「ペット…いいですね!盲点でした!飼いましょう!」
「え?!」
そんな簡単に?!
ペットを飼うことってかなり大きなイベントの一種だと思うんだけど……。
「でも萌さんは猫派じゃないんですか?」
「はい?私そんなこと言いました?ずっと犬派なんですけど」
「いえ、なんか萌さん自身が猫っぽいから」
隣からクスクスと笑い声が聞こえ、なんとなくムッとなる。
猫っぽい性格という表現はよく聞くが、私はその度になんだそりゃと思う。本当は猫が何を考えているのか、どれだけ繊細な生き物かなんて何も知らないくせに。
「そういう昇さんこそ、猫派っぽいですよね」
何も見えない隣を睨む。
「あぁ、いえ。僕はれっきとした犬派ですよ?飼ったことはないのですが、兄夫婦や親戚が飼ってまして。羨ましいなと思って見てますよ。」
「犬って賢いところが可愛いんですよね。
賢すぎるからこそ繊細な感情があると思うと、一人ぼっちにさせる時間が長いのに気が引けて、飼えないんです」
まぁ他にも理由はあるけど。
昇さんは少し唸るような息を吐いてから、
「じゃあ、僕らが仕事のときは、数時間だけドッグシッターさんに来ていただくというのはどうでしょうか?」
「え……でもそれって……どうなんですかね。まるで私たちは可愛がるためだけに飼うみたいな…」
「そんなことありません。帰宅後や休日は一緒に散歩したり遊びに行ったり、めいっぱい僕たちと一緒の家族の時間を過ごせばいい。」
家族の時間……
2人と1匹の家族像を思い浮かべて、思わず胸が高鳴った。
「それに僕も犬を飼うのが夢だったので、2人の夢は叶えましょうよ。ひとつ残らず。」
「ひとつ残らず……」
「はい。」
自然と笑みがこぼれている自分に気がついた。
なんだかじんわりと胸がざわつくこの感覚……
ワクワクするとはまさにこういうことなんだろうなと感じた。
「どんな犬がいいですかね~……萌さんは好きな犬種とかあるんですか?」
「そのことなんですけど………」
その後の私の話に、昇さんは驚いていた。