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第72話 これから②〜side陽向〜

はぁ、

はぁ……。

幸せすぎる。

大好きだ、秋斗さん。


うっとりとスマホを眺め夢見心地でいると

ピンピロピン!『お風呂が沸きました』と軽快な音楽がして、現実世界へ連れ戻された。


お風呂、お風呂……っ!

そうだ……

付き合うなら……


その、準備、しなきゃ、かな?

3ヶ月ぶりで……

うまく、できるかな、俺。



頭の中が秋斗さんでいっぱいだ。

でも今までとは違う。

それを無理やり仕舞い込まなくても、忘れたふりしなくても、いいんだ。

好きって、言って、いいんだ!



カチコチカチコチ……

ずっと止まったままだった心の中の時計の針が、動き始めたのを感じた。



お風呂から上がった時には0:30を過ぎていた。

疲れた身体を温められて眠気で頭がふわふわとする。

でも、明日、いや、もう今日だ。

また秋斗さん会える!

洗面台のラックから長谷川さんが韓国土産にくれた、1番良さそうなパックの封を切った。

少しでも、綺麗な肌で、会いたいな。

ま、また

触ってもらえたら……ふふふっ、

深夜に鏡を見ながらニヤけるなんて。

相当怪しい奴だろう。

でも、いいんだ、

だって、俺、世界一幸せなんだから、今。







11時42分……早く着きすぎちゃった。

お昼時の花⚪︎駅は仕事のお昼休憩時間なのだろうか、

多くの人が特に急ぐでもなく駅構内へと吸い込まれていく。

駅構内にはサラダショップ、ドーナツやさん、中華料理やさん、お惣菜屋さん、タコスのお店など様々なお店が入っている。うちのカフェはお休みだけど、少し休憩がてらな食事処が沢山ある。

さらに駅構内を通り抜けた南口はいわゆる飲食店激戦区だ。

お客さんがあまり入らなかったお店は一年以内で違うお店に変わってしまっていることもザラだ。

一人暮らしをしてすぐの頃、二宮さんに教えてもらって、何度も夕飯代わりにしていた大好きなうどん屋さんが……ある日突然無くなって、立ち飲み串カツ屋に変わっていた時は、あまりのショックで5分くらい立ち尽くしていたっけ……。


ファミレスは徒歩5分圏内に3軒もあり、ラーメンやさんも何軒もあり、カフェ、ファストフード、ピザ、パスタ、タイ料理、韓国料理、昔ながらの洋食屋さん……食べたいものならなんでも揃う。

 夜には軒並み並ぶ居酒屋の看板で日付が変わってもなお明るくライトアップされている。

 秋斗さんや俺が住んでいる東口は、大きな大学もあり、どちらかというとアパートなど住宅が多く立ち並ぶ。

その分、コンビニ、スーパー、ドラッグストアなど生活必需品が揃いやすい。


いつもの……いや、3ヶ月ぶりの東口の柱での待ち合わせ……。

ふふ。

今までの待ち合わせとは、全然違う。

秋斗さん……俺のこと……好きって。

ふふっ、夢じゃ、ないんだよね、また、今日も聞いたらしつこいだろうか。


付き合おうって言ってくれた答え、ちゃんとしないと。

でも……待って。

付き合うのと、今までの身体だけの関係と、何が変わるのかな……。


連絡も、前まで毎日してた。送る内容は当たり障りのないものだったけれど。

デート?ケーキビュッフェは行った。



秋斗さんは、俺と付き合って、何がしたいんだろう。

今までみたいな、身体だけだったら……

いや、でも、付き合ってたら、するよね。

というか、したいし……。



それじゃ、何をするんだろう。

誰かと付き合った事なんてないから、わかんないな。


秋斗さんの気持ち、聞いてみてもいいのかな。

うん、秋斗さんから付き合おうって言ってくれたんだし!

聞いてみても、いいよね。

うんうん!


「陽向!お待たせ!」

胸の前でぐっと握り拳を作っていると

大好きな声が聞こえて、慌てて顔を上げた。


「秋斗、さん。……えっと、あの、こ、こんにちは!」

「っは、なにそれ、なんで急に他人行儀になっちゃったの?」

優しく笑う秋斗さんは、今までこっそり見た事のあるどの笑顔よりも柔らかかった。

ふわっと大きな手で髪の毛をぽふっと触られる。

ん……。

……触られた所からじわっと熱が広がってくるのを感じた。


「よ、よし、陽向、何食いたい?こっちじゃなくて、店いっぱいある南口に移動するか?」

「はいっ!俺、秋斗さんの好きなもの、食べたいです!俺、好き嫌いないのでっ」

ふっ、とまた秋斗さんが笑いかけてくれる。


もう、それだけで胸がいっぱいに膨れてしまって、

呼吸が出来なくなりそうだった。



平日の昼時、南口のロータリーからあちらこちらの店へと向かう人の流れを止めてしまいそうなくらい、

秋斗さんはゆっくり歩いている。

今まではスタスタ歩いていく秋斗さんの後ろを追いかける事が多かったから……

きっと、俺のペースに合わせてくれてるんだ……。

「嬉しい……、ありがとうございます」

「へ?」

思わず心の声が出てしまった。

秋斗さんは不思議そうに俺の顔を覗き込んできた。

ぼっ、と頬が一気に熱くなった。


「えっと、一緒にまた、こんな風に、歩けて……俺、すんごく、嬉しいです……っていうことです」

「……そっか、そうだな……。俺も、昨日、家帰ってからさ、……夢かと思って、何回も頬叩いてみたわ。んで、恐る恐るメッセージしてみて、陽向からの返信みて、やっと実感わいたわ。さっきも……待ち合わせに、陽向来なかったら、どうしようって心配だったから……陽向がいてくれて……まじ、ほっとしたわ……」


秋斗さんが俺と同じような事を思って、同じような事をしていたなんて……。

秋斗さんて、いつも冷静でクールで、何でもさらっとこなして、落ち着いていて……だから、そんな事するイメージが全然わかなくて

何だか急に可愛く思えてしまった。


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