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第41話 決心③〜side陽向〜

俺、俺、俺!!!何言ってんの!!!

ちゃんと言わないと!練習通りに!

『今日で、最後にします。今までありがとうございました。さよなら』

って……早く、口動け!

動かない口がもごもごする。そんな俺なんてお構いなしに

手首を掴んだままぐんぐんと歩き始める秋斗さん。

足を止めようと思うのに、手を振り解こうと思うのに。

もぞもぞ動かした指を、動かないようにと秋斗さんの長い指にがしっと絡められてしまった。

俺の身体、どうしちゃったの?

全然言う事聞かない。


指を絡められたままの手をぎゅっと握られ、

何度も2人で入ったホテルのフロントを通り過ぎる。


ガチャガチャッ

ドサッ

足が絡まり、ベッドの上に2人で倒れ込んだ。

「ごめん、1ヶ月、してないから……余裕、ない、痛かったら、ちゃんと、いって」

「ん、っぅあ、んっ、」

返事する間もなくTシャツを脱がされ、スキニーのチャックを下された。

胸元に埋まる秋斗さんの頭を抱え込む。

その手を邪魔だと言うように頭の上でひとまとめにされてしまった。

首筋を噛みつかれるかのように秋斗さんの熱い唇が這っていく。

だめだよ、言わなきゃ言わなきゃ、最後に、するって。


「ひなた、陽向、ひなたっ、」

なぜだろう、いつもより余裕のない感じの秋斗さん。

それが、無性に嬉しくて、

今だけは俺のことだけを見ていてくれる、俺のことを抱きたいと思ってくれている。

そのことで胸がいっぱいになって、勝手に涙が溢れて来た。


「後ろ、久しぶりだから、ゆっくり、慣らしたいんだけど、やばい、ほんと、ごめん」

ずるりと指が抜けていくのを感じ、冷房の冷たい空気にさらされたそこに

熱すぎる熱の塊が押し付けられる

「ん、だい、じょぶです、っはぁ、はぁ、おれも、ずっと、したかった、からっ」

「ゆっくり、ゆっくり、挿れるな?」

ふぅ、と秋斗さんが息を吐いた。

とてつもない圧迫感から意識を逸らそうと、目をキツく瞑る。

あ……でも、最後なんだから、ちゃんと、秋斗さんの顔、見たい。

「!!っあっ、っあぁぁぁっ!」

目を開けようとした瞬間、電気が全身を駆け巡ったような衝撃が襲う。

中のしこりを思い切り抉るようにして、秋斗さんの熱がぐぐっと俺の中に潜り込んできた。

「っあ、あっ、んんっ!!」

捕まるところが欲しくて、必死に秋斗さんの身体にしがみつく。

「っ、痛い?一旦抜こうか?」

いやだ、抜くなんて、せっかく繋がれたのに。

必死で頭を振る。やめて、抜かないで、ずっと、俺の中にいて。


「じゃ、ちょっと、このまま、じっとしとく。馴染むまで、な?」

ぎゅっと、まるで宝物でも抱きしめるかのように

優しく全身を秋斗さんに包み込まれる。

この時間、この瞬間のまま、ずっと時が止まっちゃえばいいのに。

このまま、一生、離れられなくなったら、いいのに。


つぅっと勝手に涙が溢れシーツに小さな染みができる。

「陽向?泣いてる。やっぱ、痛い?無理してない?」

ううん、違う違うよ?これは嬉し涙と、さよならの涙なんだよ。痛くなんかない。

痛いのは心の中だ。

ずっと抜けない棘がどんどん増えていって、このまま、心が破裂しちゃいそうなくらい、痛い。


好き、好き、秋斗さん。大好き。

このまま繋がった所から、気持ちが全部伝わればいいのに。

秋斗さんの背中にそっと腕を這わせた。

ぬるっと汗ばむ逞しい背中。それすらもかっこいい。

秋斗さんの汗も欲しい。

全て、全て、秋斗さんの全てが欲しい。


困らせちゃうのなんかわかっているけれど、

最後に、気持ち知って欲しい。

「……っく、……はぁっ、」

秋斗さんが苦しそうに息を吐く、

俺のために待っていてくれてるんだ。

本当に優しい。


「な、陽向?…………キス……しても、いい?」

驚いて目を開けると、そっと唇を親指でなぞられた。

え……?

な、なんで……?だって、キスはしないって、条件……。

え、なんで、なんでなの?

キスしたい、したい……!

何度頭の中で、秋斗さんからキスされる事を想像しただろう。

まだ触れた事すらない唇の感触を想像して。



でも、

でも、

でも……

キスしちゃったら

条件破ってしまったらもう、2度と会えない?

秋斗さんも、今日が最後のつもり、なの?


どうしよう、いや、今日が最後にするって自分で決めたじゃないか、

最後にキスしてもらおうか、思い出に。

でも、

本当に、最後?

この大好きな人に、抱かれるの……

どうしよう、どうしよう、最後って決めたのに

また、会いたいって思っちゃってる。


必死に頭の中でぐるぐると考えているうちに

秋斗さんの綺麗な顔が目の前に近づいてきた。

こんな、こんな至近距離で……わぁ、わぁ、ど、どうしよう!!かっこいい……っ!じゃない、そんな見惚れてる場合じゃない!

何か、言わないと!

「キ、キスは……こ、こ、恋人と、したい!……です」


秋斗さんが目を見開いた後、ふっとなんだか寂しそうに笑った。

「そっか、そうだよな。恋人とするもんだよな……あのさ、陽向は…………っ、いや、違う、今じゃないよな……、うん、ごめん」

何かを言いかけて、いやいやと頭を振る秋斗さん。

何だろう、今日が最後にする、ということだろうか?

気になる……。

「な?そろそろ、動いても、いい……?」

「あ……っ、は、はい」


ぐっと腰を掴まれて身体の奥まで、秋斗さんが入り込んでくる。

気持ち……いい。

「っはぁ、ひなた、ひなたっ、」

今日は何度も何度も名前を呼んでくれる。

嬉しい。

秋斗さんの頭の中が全部俺で埋め尽くされちゃえばいいのに。

「っあ、っんんっ、あ、あきと、さんっ、っあっ!そこ、いや、っああっ」

「ここ?奥がいいんだ?」

ふっと優しく秋斗さんが笑って、執拗にそこばかりを攻め立てられる。

秋斗さんに、ありがとうと、さよならを告げたいのに、

開いた口からは、身体を揺さぶられる度に甘ったるい声しか出てこない。

好き

好き

秋斗さん、好き。

彼氏さんと別れて。

俺を好きになって。

俺だけの秋斗さんになって。


優しく、でも熱く激しく抱かれていると

脳内がどんどん麻痺してきて

欲張りなことばかり考えてしまう。

考えるだけならいいよね。

今だけ、今だけは、俺だけの秋斗さんだよね。


「ひなた、っはぁ、俺、やばい、いきそうっ……」

「っあ、っあっ、お、おれもっ、っあ、そこっ、っやぁぁぁあっ!」


頭の中が真っ白になって一気に雲の上まで飛んでいってしまったような感覚だ。


そのまま真っ白な雲に乗っかって、ふわふわとゆっくり降りてくる。

「陽向?大丈夫か……?」

優しく声をかけられ、頭を優しく撫でられる。

気持ちいい。

このまま眠ってしまいそう。

とろとろとする頭の中、全身を秋斗さんに抱きしめられているような感覚に包まれて

そのまま意識が遠くなっていってしまった。



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