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第25話 関係③〜side陽向〜

歩きながら勝手にニヤけてしまう頬を止められない。

わぁ、わぁっっ!!!3時間、3時間も一緒にいられた!しかも、笑ってくれた!

秋斗さん、秋斗さん!

嬉しくてたまらない。この3時間だけは、秋斗さんが自分だけを見ていてくれたのかと、自分とだけ、いてくれたのだと思うと、胸がぎゅっとなる。







パタン……。

よろよろと靴を脱ぎ、冷蔵庫の前に座り込む。



トートバッグからすっかりぬるくなってしまった、ペットボトルを取り出した。



プシュッ!!!!シュワシュワシュワ!!!!

「あっ……」

振り回されて逃げ場を失った炭酸が溢れ出てくる。


どんどん溢れ続け、ジーパンの染みを広げていく泡をぼーっと見続けた。

なんか、なんか、俺みたいだ。

溢れて止まらない、好き、の気持ち。


秋斗さん、やっぱり、大好きだ。

抱かれれば、抱かれるほど

どんどん好きが溢れていってしまう。

このまま抱かれ続けたら、俺はどうなって、しまうんだろう?



溢れきって、3分の1ほど減ってしまった炭酸飲料が、小さな泡を立てて、静かにゆれた。

溢れ出過ぎたら……無くなっちゃうのかな、こんな風に……。

この気持ちも、いつかは、消えていくのかな?

だと、いいんだけど。








『今んとこ、次の月曜、予約2件だけだから、大丈夫そう』

『いつも通り18時すぎに、いつもの場所で』

『陽向、仕事終わりだから、なんか食べたいのあったら買っとくけど。』


 秋斗さんから送られてくるメッセージを宝物にして、次の月曜日を心待ちにする。

秋斗さんと会えることを考えたら、何でも張り切って頑張れた。すごい、秋斗さんパワー。


月曜日の仕事はいつも以上に時間が経つのが遅くて、つい時計ばかりみてしまう。

 早く18時になれ!でも、仕事に手を抜くわけにはいかない。

退勤時間丁度に来たお客さんの接客を終えると、急いでバックヤードへと向かった。

早く、早く。秋斗さんが、待っててくれる。

2週間連続で会える!!!やった、やったぁ!!!今日は……今日も、延長、してくれないかなぁ……なんて。欲張りすぎ、かな?






「いただきまーす!」

ラブホのベッドで、秋斗さんが買ってきてくれたハンバーガーに齧り付く。こんなもの食べる場所じゃないし、せっかくの2人きりの時間を無駄にしたくなかったから、家に持って帰ると言ったら、

「いーから!腹減ってんだろ?食え。食わないとセックス中へばるぞ?」

 と包み紙を剥かれた具が沢山入ったハンバーガーを目の前にぐいっと出された。


「んーーー、おいしいっ、すごい野菜たっぷりだぁ」

「野菜好きなんだ?甘いのは?」

 秋斗さんは俺の隣に座り、俺が食べているのをじっと待ってくれている。

ここはこんなのんびりハンバーガーを食べる場所じゃない。少し焦りつつ、口についたマヨネーズを、紙袋に入っていた紙ナフキンで拭った。


「甘いのも好きです!ケーキとか、タルトとか、パフェとか!見た目も可愛くて食べるのもったいなくなっちゃいますよね?」

「ははっ、ぽいわ。俺は甘いの苦手だから、もったいないとか、わかんねーけど」

秋斗さん、甘いの苦手なんだ。一つ秋斗さんの事、知れた。嬉しい。今度、何かいつものお礼に、甘くないものお返ししよう。

 ハンバーガーをあと2口くらいで食べ終わりそうになった時、

ピリリリリリ、ピリリリリリ、ピリリリリリ……


秋斗さんの黒いジーンズの尻ポケットに入れていたスマホが鳴った。

「あ……わり、ちょっと、出るわ」

スマホの画面を見た途端、秋斗さんの表情が険しくなった。


ガチャ……。ガチャン。

スマホを持って部屋を出て行ってしまう。……なんだろ、俺に、聞かれたらまずいこと、なのかな?

いけない事とはわかっていても、何を話しているのか気になって耳を澄ませてしまう。

誰だろ……?




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