2週連続で、会えないと連絡が来た時……
もう、会うのは終わりなのかと思った。
仕事と書いてあったけれど、もしかしてこの前のエッチの時、何かしてしまったんだろうか?
最中は何をされているのか、ほとんどわけもわからず、秋斗さんに身を任せてばかりの俺のこと、気持ち悪くなったのだろうか?
それとも、彼氏さんに会っていることがバレてしまったのだろうか。毎日メッセージしていたから、怪しまれているかもしれない。
その夜は不安で、悲しくて、一睡もできなかった。
いつの間にか明るくなっていた外。覗いた窓に映る自分の酷い顔。こんな顔じゃ……接客できない。
今日は店長にお願いして、キッチンメインでさせてもらおう。
酷い顔を店長に軽く叱られながらも、今日は裏方をさせてもらえることになった。
お客さんから隠れるように、キッチンでクッキーやベーグル、サンドウィッチやベーグルに使う野菜を仕込んだり、熱の取れたマフィンなどをラッピングしていると、なんと、秋斗さんが店に来てくれた。
こんな酷い顔で、会いたく無かったんだけど……でも、でも月曜の夜でもないのに、会えるのはとてつもなく嬉しい!
コーヒーを買うついでだと思うが、仕事で会えないということを、わざわざ伝えに来てくれたんだ。
秋斗さんの顔を見ただけで安心できた。なんて優しい人なんだろう。
秋斗さんに触れられた指先と、頭が熱くて、しばらくぼおっと痺れていた。
その秋斗さんの熱を思い出しながら、その後の会えない2週間を乗り切れた。
待ちに待った7月最後の月曜日。
最後にエッチをしてから3週間ぶりだ。
次に会うときにガッカリされないように、2日に1回はきちんと後ろの準備をした。 やっぱり自分ですると、何も気持ちよさなど感じないのが変だ。
なんで、なんで秋斗さんに触られると、どこもかしこも気持ち良いんだろう。
「お疲れですっ!お先失礼しますっ!!」
18時の退勤時間になってすぐ、店を出て東口の待ち合わせ場所へと急ぐ。
じとっとまとわりつく熱気で冷房に冷やされていた肌がじんわりと汗ばんでくる。
秋斗さん、居てくれているだろうか?
前回会った時は雨だった。でも会えない3週間の間に、だらだらと続いていた梅雨は終わり、本格的な夏に季節は変わっていた。
いつもの柱の所……いたっ!!!
思わず駆け寄っていた。
「秋斗さんっ!お待たせしました!」
「お、陽向、仕事お疲れ。なんか、久しぶりだな、こんなして会うの」
目の前に大好きな人がいる。抱きつきたくて、触れたくて仕方がない。
秋斗さんは俺の顔をじっとみると
「んじゃ、いくか」
とすたすたと歩き出した。
どこへ行くかなんて決まってる。俺たちの会う理由なんて、それ以外、何もないのだから。
隣を歩くこともできない。いつも、秋斗さんの後ろ姿を追いかけるだけだ。
恋人でも、友だちでも、セフレでもない。ただの、エッチのためだけの、知り合い?
この関係は、このままずっとなのかな……。秋斗さんが、俺に飽きるまで?
なら、絶対に飽きられることのないように、秋斗さんの条件をきちんと守り続けなくてはいけない。
……好きになってしまっただなんて、絶対にバレてしまわないように。
ねぇ、秋斗さん。
秋斗さんは、
好きな人に、どんなキスをするの……。