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第2話 連絡②〜side陽向〜

駅からチャリで10分、ワンルームのアパートで今年から一人暮らしをし始めた。

本当は高校卒業と共にしたかったんだけど、進学もせずにフリーターを選んだ俺に、

『二十歳になるまできちんと働き続けられたら一人暮らし許可する』と親に条件をつけられ、まぁ、結局アパート探しが大変になる年度末になる前に、と今年の1月から一人暮らしをOKされた。

一人暮らしも半年が経ち、二十歳にもなり、まもなく夏がやってくる。今年も、バイトと家の往復の夏かぁ。周りの友だちは彼女彼女で、すっかり男友達とつるまなくなってしまった。たまの飲み会でも話題は女の下トークばかりで正直ついていけないし、つまんない。そんな感じで、断っていたらだんだんと友だちから誘われなくなってきてしまった。

このまま一生独りなのかな、俺。



チャリッ。

家の鍵と自転車の鍵を靴箱の上の木で出来た楕円形のトレーに置く。

どさっとリュックを2人掛けのソファに投げると冷蔵庫から冷やしておいたビールを取り出す。キッチンの棚から味噌味のカップ麺を取り薄いビニールをむいていく。

「出会い系かぁ。運命の相手なんて、バカらしいけどな。一度くらい、一度でいいから、抱かれてみたいわ。」

ぼそっと独り言を言いながらお湯が沸くのを待つ間に、ゲイ、出会い系をスマホで検索する。

「うわ、結構あんだな。1番登録者数多いやつなら安心かな。」

俺、何してんだろ。こんな、出会い系なんて、ヤリ目のヤバいやつしかいないだろ?それこそ病気なんてうつされたり…。

でも、もしかしたら…


インストールしているうちにお湯が沸いた。

3分を待つ間だけ、と興味半分で自分の情報を登録していく。タチ、リバ、ネコなど実生活では使わない単語がここには溢れていて、意外とゲイって多いのかもと錯覚しそうになる。

条件検索をしていると、ふと目に止まる人がいた。何故だかわからないけれど。 住んでるのも、この近くだこいつ。

『AKITO 23歳、タチ ◎恋人は作らない ◎セックスだけの関係希望 ◎唇へのキスNG ◎泊まりなし ◎ノーマルプレイのみ』

つまり、セフレ関係?泊まりもなしなら、すぐ解散して、割り切った関係でしてくれるかな。キスって俺、好きなやつとしたいなんてアホな願望があるから、初めて会ったやつとキスってやっぱハードル高いし、あっちから拒否ってくれてんなら助かる。

こいつ、連絡してみよっかな、ダメ元で。今日の夜とか?

返事もなくてダメならもう2度としない。このまま登録消そう。今日だけ。こんな出会い系なんてすんの。そうだ、なら恥なんか関係ない。


『初めまして。ネコですが、まだ抱かれたことがありません。経験してみたいです。初めてなので優しく抱いてくれる人を探しています。良かったら連絡下さい』

連絡が来るのを期待しているのか、していないのか、自分でもわからなかった。ガッとビールを一気飲みして、送信ボタンをぐっと押す。


紙の蓋を開けたラーメンは、すっかりお湯を吸って膨らんでしまっていた。

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