さてさて。年末年始のあけおめライブからちょっと時間が経って。うぃんたそにもセイラにも若干の余裕が生まれて、いや、まだまだ忙しいことには変わりはないのだが……それでも、なんとかコラボやらをする余裕が生まれたそんな頃合い。
今日はうぃんたそと久しぶりにタイマンコラボとなった。
「……こうやってコラボするのもなかなか久々な気がするわね」
「最後のコラボが……アールさんを紹介してもらった回か。そんな久々じゃなくね?」
「……忙しい自慢のようなのだけれど違うと前置きをして言うわ」
「おう」
「流石に過密スケジュール過ぎたせいね、これは。決して、忙しい自慢ではないのだけれど」
それはそう。鈴堂うぃん、地上波に公式企画にと引っ張りだこであった。いや、うぃんたその供給が多くて俺は幸せな年始だったけどね?でも、確かにちょっと鈴羽のことが心配になるぐらいの供給量ではあった。
「いや……本当にお疲れさまだ。というか、やっと落ち着いたならおやすみにしてもよかったんじゃ」
「流石に、月の配信量の下限に触りそうなのよね。でも、1人で配信を回すのはちょっとしんどそう、みたいなのを感じたのよ」
「あー……」
なるほど。俺みたいな個人勢にはない感覚だ。下限、ということは多分月の配信時間のノルマがあるのだろう。企業勢本当に大変だな。
まあ、その中で配信をしなければいけないなら単独配信よりコラボ配信の方が気が楽というのも分からなくはない。
……それに。そんなときに俺を選んでくれたって言うのもなかなか悪い気がしなくてですね。
「じゃあ、うぃんたそに負担のない配信を今日はしていくか」
「あ、配信はいつも通りで大丈夫よ。1人じゃない、それだけでいいの」
「なんかの歌詞っぽいな」
そんな言葉に2人してくすくすと笑いを零す。
「というか、それなら協力ゲーとかにすればよかったな」
「でも、鉄は熱いうちに、流行りは流行っているうちに乗っておくのが丸いわ。それに、秋城さんがどうやって私を煽ってくれるのかも楽しみだしね」
「うぃんたそ煽るのキチー……」
今回の配信内容的にそう言う行為も必要なのはわかるのだが、最推しを煽る、結構俺的に心理難易度の高い行為だ。セイラだったらごりごりに煽れるんだけどな。
「私も頑張って秋城さんを煽るのだから頑張って頂戴」
「おー」
なんかそれはそれでご褒美な気がしてしまう。最推しからのメッセージはそれが例えどんな罵倒であってもとっておきたい、それがファン心理ってもんだろ?あ、いや、どんな罵倒でもは言い過ぎたな。今、うぃんたそにガチ罵倒されたら普通に泣くわ。
「もう時間よ。配信を始めましょう?……ううん、配信始めちゃって!秋城さん!」
鈴羽の声からうぃんたその声へのチェンジ。俺はその華麗な変わりようについつい聞き惚れつつもカシュッ、とカフェイン飲料の缶を開ける。そして、それを一口飲み———。
「よし、じゃあ、配信スタートだ!」
「こんしろ~秋城の生放送、はっじまるよーゆっくりしていってね。んじゃあ、お次はうぃんたそ!」
「勝利を運ぶっ、鈴の音鳴らすVTuber‼鈴堂うぃんだよ~~‼お前らの皆さん、あけましておめでとうございます~!」
お、そうか。うぃんたそとのコラボは新年初だもんな。
『こんしろ~』
『うぃんたそあけおめ~』
『わこつ』
『あけおめ~』
「えー、アレだな。まずは音声チェック。どっちかの声が聞こえにくかったりしたら言ってくれ~」
『いや問題ない』
『大丈夫』
『二人ともばっちり聞こえるやで』
『今日も音声良好』
「あ、問題ないって~。流石秋城さん」
「お褒め頂き光栄。えー、じゃあ、今日の配信は6番街を並走していこうと思うぞ~」
6番街、最近流行ってきたインディーゲームだ。内容は簡単、街の中に異変を見つけたら引き返して、異変がなかったらそのまま進む。その行為を繰り返して、0~6番街を脱出するとても簡単なゲームだ。ちなみに異変の数は200種類以上あるらしく、単純に6番街をクリアするだけでなく、異変をコンプリートするのもこのゲームの醍醐味になっているらしい。ま、今回は異変はコンプリートせず、どっちが先に6番街を脱出するか、うぃんたそとの競争が配信の主目的だ。
「ちなみに、負けた方が勝った方の言うことを聞く罰ゲームつきだよ~、まあ、うぃんたそが勝つんだけどね」
「お、俺だって負けねーぞ?ちなみにうぃんたそはなに罰ゲームに要求するん?」
『秋城一日貸出券とか?』
『↑負けなくても喜んで貸し出されそう』
『秋城にできる罰ゲーム……?』
『激辛ラーメンレビュー配信とか?』
「あー!なにかのレビュー配信系もありだねぇ。でも、今回うぃんたそは勝つ予定なのでもっと強欲に行こうと思うんだ」
『強欲……?』
『もっと強欲?』
『秋うぃん方面ですか?』
『秋うぃん方面なのですか?』
「うぃんたそが勝った場合の秋城さんの罰ゲームはね~……」
ごくり。
「うぃんたその配信のサムネイルを秋城さんに作ってもらう券を発行してもらいたいかな!」
ほうほう、……ほう?
『あー』
『地味に大変と聞くやつだ』
『凄い実用的な秋城の使い方w』
『うぃんたそ実はかなり忙しい?』
「いや、それは構わんが。……え、というか罰ゲームじゃなくて普通に作るが?うぃんたそが忙しいのまだ続いているだろうし……」
「それをやったらうぃんたそきっと秋城さんに甘えっぱなしの駄目駄目になっちゃうからそれは駄目かなー。きっちり勝って、その権利を手にするんだから!」
こう言うところ本当にいい子。いい子。
『でも、うぃんたそに甘えられるの秋城ご褒美では?』
『これ秋城に対して罰ゲームになってるのか?』
『いや、ある意味労働ではあるのだが……』
『普通に「おー」とか言って作りそう』
コメント欄の俺に対する解像度が高い。多分、普通にうぃんたそが「ごめん、サムネイルお願いしていい?」とか言って来たら俺は普通に受けると思う。余程……明日が期末テスト1日目とかでない限りは。
「ちなみに秋城さんが勝った場合うぃんたその罰ゲームは?」
「そうだな……ちなみに聞くがうぃんたそNGは?」
『NGを聞く、だと……?』
『何か凄いモノを振る気なのか?』
『秋城、何を言う気だ』
『ほう……?』
「んー……うーん、……あ、昆虫食」
「あ、それは俺も無理。絶対に振らんから安心してくれ」
「いや、うん、振られたらやるけど……秋城さんへの好感度はダダ下がりするよね」
ひぃ、それは嫌だ。うぃんたそに嫌われるとか凹むどころではない、いい歳した大人が全力でギャン泣きするレベルに凹む話だ。
「それでも振られたらやるはプロ根性だな……」
「企業を背負ったVTuberだからね!で、秋城さんの罰ゲームは?」
「そうだな……うぃんたそがよければ2人で激辛鍋とか食いに行かね?」
『2人で?』
『それは罰ゲームなのか?』
『うぃんたそだけにやらせるのではなく?』
『最早それは2人で鍋をつついているだけなのでは?』
「激辛鍋!え、しかも2人で?」
「そうそう、たまたまこの間ゆったーで広告が流れてきてな……それから妙に赤鍋さんの激辛鍋が食いたくてな。でも、あれだ。1人鍋って寂しいからうぃんたそが巻き込まれてくれたら嬉しいよなー……あ、もちろん、喉的に激辛NGだったら断ってくれて大丈夫だ」
俺のその返答にうぃんたその表情がパァアア、と明るくなっていく。そして、嬉しそうに微笑むのだ。
「そんなの普通に誘ってくれれば行くよぉ……!でも、そうだね。うぃんたそと赤鍋さんいく権利ちゃんと勝ち取ってね!あ、手加減はしないけど~」
『最早お互いが好きすぎて要求ダダ通りでは?』
『罰ゲームが罰ゲームじゃなくて草ァ!』
『もう2人でサムネイル作って2人で鍋行けばいいんじゃ?』
『相変わらずてえてえが過ぎる』
「俺も手加減はしねえ!全力でうぃんたそと鍋に行く権利を勝ち取ってやるぜ!……ということで、ゲーム画面ドーン」
配信の画面にゲーム画面を乗せる。ちなみにこの配信は俺視点の枠とうぃんたそ視点の枠で双方の動きが見れるように配信している。
「ルールは特にチートなんかを使わなければ何してもいい感じで。早くこの街を脱出した方が勝ちだ」
「はーい」
「じゃあ、始めていくぞ~……スタートだ!」
そうして、2人同時にゲームスタートを押すのであった。