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第16章 秋城とセイラのてえてえはアリですか?③

『バンジージャンプ‼』 

『スカイダイビング‼』

『ローション相撲‼』

『寝起きドッキリ』


「お、お前ら。俺までセイラと同じ芸人道に堕とそうとしているな?」


 加速する貧乏ゆすり。


「ふふ、いいねえ。どれも楽しそうだ……秋城クンはこの中だったらなにがしたい?」

「……お前俺がまかり間違ってやりたいなんて言ったら絶対に用意してくるだろ?」

「ご名答」


 ええ声やなあ、なんて若干気持ちが遠くなりながら痛む額を押さえる。


『ついにお前呼びwwwwwwww』

『手に負えなくなってきましたねえ‼』 

『すげえな、セイラとの距離感が急ピッチで詰められていく』

『逃げ場のない秋城』


「ま、まあでも、だ。どれも3Dモデルがないとできないしなァ‼残念だったな、セイラ‼俺はいまだにLive2Dモデルだ‼」


 まさか未だにLive2Dモデルなんていう古の技術を使っていることに救われる日が来るなんて思ってなかった。だけど、斜め上に飛んでくるのが星羅セイラ。


「じゃあ、秋城クンの3Dモデルを@ふぉーむに発注しよう。なに、ボクがちょっと圧をかければ———」


 そこまで言ってからまた、セイラの動きが止まる。そして、数秒。


「……職権乱用は駄目だってさ!」


『それはそう』 

『なんで通じると思った』

『もう一回社長室に叩き込まれてこい』 

『圧をかけられるのはセイちだよ』


 そりゃそうだ。@ふぉーむのメンバーとコラボするだけでワンチャン3D化してもらえるなんて前例絶対作ってはいけない。他の@ふぉーむのVTuberに迷惑が掛かってしまう。


「でも秋城クンとやりたかったなあ……二人羽織りで超あっつあつおでん食べるヤツ……」

「……ちなみにお前はどっちをやる気だ?」

「食べさせる方‼」

「却下だ‼馬鹿野郎‼絶対にわざと大根やら卵やらを顔に当ててくるだろ!手札透けて見えてんぞ‼」


 そうして、軽い声でごめんごめん~とか言ってくるに決まっている絶対に許さん。


「でも、ほら……ボク女の子だからさ。女の子の顔に火傷とか罪悪感抱いちゃうだろ?」

「人類平等なんで。人間の顔に火傷が生まれそうな自体を等しく心配してくれ」


『もう一周回ってテレビでもやらんようなことを……』 

『まあ、セイちの顔に火傷は許さんなあ』

『秋城の言うことがご尤も』

『でも、秋城実際あつあつおでんセイちに食べさせられる?』


「いや、ぐ……う、無理……あんなん絶対火傷すんじゃん……相手がセイラだろうと怪我させちゃダメだろ……」


『秋城の真っ当な倫理観』

『この間のオムライス放送といい割と倫理観は真っ当な秋城』

『まあ、実際痛いのと汚いのはなー』

『見ててヒッ……ってなっちゃう』 


 此処に来て俺の評価が若干上がっていく。いや、ねえ?流石に火傷沙汰は……。


「じゃあ、二人羽織り超あつあつおでんは駄目だね~……うーん、やっぱり打ち合わせ大事」


 そうだな。打ち合わせなしで持ってきたら一回セイラを陰に連れていくところだ。もちろん、説教目的で。


「じゃあ、逆に秋城クンはやってみたいことあるかい?」

「俺か?んー……あ、エンジョイボクシング耐久レース?」


 エンジョイボクシング、それは輪っかDEフィットより1年前に出た、家でボクシングエクササイズができるゲームだ。輪っかDEフィットが筋トレメインなのに対して、エンジョイボクシングはガンガンに有酸素運動を強要してくる。ちなみに現在発売されているエンジョイボクシング8では離れた場所に居ても一緒にトレーニングができるモードが実装されていて、それを使用してよくVTuberたちがガチンコ耐久レースとかをしている。


『エンジョイボクシング耐久wwwww』

『秋城、セイちに容赦がねえ……』

『うぃんたそには絶対振らないセレクション』

『あ、で思いつく気軽さじゃねえwwwww』


「ふ……秋城クンボクにならなにしてもいいって思ってないかい?」

「おまいう。二人羽織あつあつおでんよりかは遥かにマシだろ」

「そ————だけどさ————ボク女の子なんだよ⁉手心とかないのォ⁉」

「怪我の心配もおおよそない時点で大分手心加えてるけどな⁉」


 マジで。あつあつおでんみたいな火傷の心配もない、健全にボクシングをしようと言っているのだ。俺の神采配に感謝してくれ。


「でも、ボク流石に秋城クンに勝つビジョンが見えないよ、はっ、まさかボクに対する罰ゲームが目的……⁉」


 セイラのはっ、とした声。


「罰ゲームでボクにあ~んなことやこ~んなことをする気だねえ⁉」

「しねえよ、なんでノリノリなんだ。おい」


 俺の覇気のないツッコミに、「ちなみに」なんて付け足し始めるセイラ。マジで自由だな。


「お前らの皆さん知らないと思うけど、ボクの輪っかフィット負荷MAX配信……ワールド2の敵キャラ1体目でダウンだからね?流石にドラゴンまで倒しきった秋城クンには勝てないってぇ———‼」


 必死の叫び。


『「ハイクソー、二度とやらんわこんなクソゲー」ってぶん投げたらしいことは知ってる』

『セイんちゅですが、その後すぐ負荷を下げて2枠目取ってました』

『↑綺麗な4コマ再現やん……』

『大体その台詞いうやつ、5分後にはやってるよな』


 お、セイんちゅさんが名乗りを上げてくれている。ちなみに、セイんちゅとは秋城で言うお前ら、うぃんたそでいう信者に該当するものだ。正しくはセイ人って書くらしいが、んちゅ、の方が可愛いということでセイんちゅ。


「ちなみに何の技やってぶん投げたんだ?」


 俺の問いかけにセイラは斜め下を見て言うのだ。


「……ニートゥチェスト」

「ああ……」


 これは思わず同情してしまう。あれは本当にきつかった。腹筋が痛い上に、持ち上げている足がぷるぷるして、全身が悲鳴を上げる技だった。


「気になったお前らの皆さんは是非ボクのアーカイブ見てね。……秋城クンは汚い声を上げてクリアしてたけど、爆速でゲームをぶん投げるボクが見れるよ」


 こういう時にもアピールを忘れない流石プロ。


『ちなみに動画時間は20分ぐらい』

『本当に爆速で投げてるやんけ……』

『セイちの悲鳴をちょっと期待したんやけどな』

『セイちの悲鳴聞きたいならバラエティ見ろ』


「まあ、それはそれとして秋城クン」


 セイラが俺の方を向いて、左腕の手首を人差し指でトントンと叩く。ああ、時間ね。俺は配信時間を見て1時間回っていることを知る。


「時間が来たようだな。ということで、これからはガンガンセイラともコラボしていく予定だから、セイんちゅの皆さんは俺のチャンネル、お前らはセイラのチャンネルを登録してやってくれ~」

「ちなみにボクの今月のメン限はくさやを食べるASMRなので、気になったらメンバーシップにも入ってくれると嬉しいな。じゃあ、おつしろでいいのかな?」


 なんかとてつもなく面白そうなASMRの告知が入ったが、ツッコんだら終われないのでツッコまない。


「おう、おつしろで。んじゃあ、いくぞ。せーのっ」

「「おつしろ~~~~」」


『おつしろ~~~』

『セイちメンシ入ったやで』

『くさやASMR……』

『おつしろ!』


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