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第16章 秋城とセイラのてえてえはアリですか?

「星よ煌めけ!ボクが届けるみんなの願い星!星羅セイラ!」


 ヘッドフォン越しにいつもの世那の声とは全然違う、ハスキーでかっこいいセイラの声が届く。そして、セイラの口上の後、セイラが画面上に仁王立ちして現れる。コラボ第1回目の放送は俺の放送で。


〝いきなり隼人じゃなくてセイラが現れたらインパクト強くない?〟


との世那の提案だった。そして、その思惑は大当たりし———。


『星羅セイラ⁉⁉⁉⁉⁉⁉』

『え、え、え?????』

『セイちきちゃ――(゚∀゚)――!!』

『うぃんたその次はセイラ⁉⁉⁉』


 今回のコラボ放送、コラボをするとはゆったーに書いたが、誰と、という情報は一切出さずの予告だった。最初は、うぃんまどの時みたいにシルエットも出すことを考えたが、世那曰く。


〝完全不明でいきなりセイラってバチバチに興奮しない?〟


 それはそうだった。うぃんたそ以外との接点が皆無の秋城の放送に突如現れる星羅セイラ、正直それだけでゆったーのトレンドに載れそうなものがある。そうして、俺はゆったーのトレンドにセイラの文字が入ったのを確認してから、真っ暗にしていた画面を明るくしていく。


「えー、ということで。こんしろ~。秋城の生放送、はっじまるよーゆっくりしていってね」


 そうして画面が明るくして、秋城のモデルとセイラのモデルを並ばせる。


『こんしろ~』

『おどれ説明せい‼』

『うぃんたそから乗り換えですか?』

『やっぱ大手にすり寄りニキ』


 おうおう、俺の挨拶への返答少なすぎませんかね。もうちょい、返してくれてもいいんじゃないですかね。そんなことを思いながら口を開こうとすればセイラの声が耳に届く。


「はは、ボクに乗り換えなの秋城クン?」

「いや誰が……俺の最推しはうぃんたそって耳にタコができるぐらい言っただろ」

「聞いた聞いた。聞いてよ~酷いんだよ、秋城クン。ボクと打ち合わせしてるのにうぃんちゃんの話するんだから」


『うわ、女の子対面に置いて別の女の話とか……』

『今すぐセイちに土下座しろ』

『なんで秋城の周りに大手Vが集まるんですかね』

『秋城裏山死ね』


「わお、秋城クンワードブロック機能入れてないの?」

「ないない。俺のところにはまだ実装されてないんだよな。100万越したら実装されんのかね」

「どうだろう。ボクのときは気づいたら実装されてたからね……でも、ボクとコラボしてるんだから今日で100万超えちゃうかもしれないね。超簡単」

「はっはっはっ、それで超えられたら跪いて靴を舐めてやるよ」


 現在80万を達成しようとしているチャンネル登録者数を見ながら言う。え、超えないよな?超えないよな??


『ていうか初コラボなのにかなり仲良さそう』

『セイちとコラボだけでも羨ましいのに』

『打ち合わせで垂らしこんだんか?お?』

『説明求む。理解追いつかなくて発狂しそう』


 コメントの流れにやはり、と苦笑せざるを得ない。そりゃね、いきなり@ふぉーむの人気2トップの片割れとコラボしたと思ったらもう片方ともコラボし始めたのなかなか意味わかんないよな。


「はは、うぃんちゃんともコラボしてるんだ。ボクともコラボしてくれってボクがお誘いしたんだよ。その誘いを秋城クンは快く受けてくれてね。いやあ、バトマスとうぃんちゃん以外に興味あったんだ、って驚いたよ」

「お、配信切るかー」

「冗談‼冗談だよ、秋城クン‼」


『秋城なかなかセイちに強く出るなwww』

『セイちのキャラのせいじゃね?』

『でも、セイちこれで乙女だからな』

『セイちはそのギャップがいいんだよね』


 そう、セイラは破天荒ギャグ売りができるだけじゃなく、普段と乙女のときのギャップの温度差で濃ゆい層を取り込んでもいる。人気VTuberなだけはあるよな。俺も、世那が中身だと知るまでは萌えてたさ。


「さて、今日はこんな感じのゆるゆる雑談枠だ。わたあめ回答枠とかもいいと思ったんだけど、ゲストを伏せる都合上な」

「どうせなら、秋城クンの視聴者……これボクもお前らって呼んでいいのかな?」


『あ、どうぞ』

『お前らで大丈夫です』

『セイちのお前ら来るぞー!』

『備えろー‼』


「爆弾か何かなのか?」

「ふふ、お前らに受け入れられているようでボクは嬉しいよ。で、そうそう……お前らの皆さんに驚きを提供しようとね。みんななかなか驚いてくれているようで嬉しいよ」


 ちなみにどれぐらい驚かれているかというと、ゆったーのトレンドの3位辺りに食い込んでいる。俺もびっくり。ついでに、同接数も伸び続けている。これが、お茶の間19時を沸かせるVTuberの暴力か!


「そういえば、決めてなかったんだが」

「うん?」


 セイラが首を傾げればきらきらとしたエフェクトが目元の辺りに漂う。こいつ、顔面の良さをこれでもかというほど押し付けてくるぞ⁉


「なんて呼べばいい?星羅さん、とか?」

「はは、秋城クンにさんづけされるのなかなかキモいな」

「いや、ほら、一応初対面だし?」


 いやまあ確かに、今更世那を朝雉さんって呼んでいるようなものなのだが。


「ボクのことは、是非セイラと熱を込めて言ってくれたまえ」

「よし、任された…………せ、セイラ……」


 精一杯のかっこつけたイケボにもなれてない声でセイラを呼べば、セイラの3Dモデルがぷるぷると揺れ始める。


「……笑ってるな?」

「ふ、はは、ふ、ふふふふ……笑ってないさ、ボクは努力を笑ったりなんかブフッ」

「ころして……ころして……」


 あーもー、絶対これもまとめwikiに載るんだろ⁉知ってるよ‼


『秋城、振り回されてんな……』 

『そりゃ、@ふぉーむの暴走列車だし……』

『セイちが楽しそうで俺も嬉しい』

『コロシテ……コロシテ……』


「ふふ、ふー……ぶふっ……ふふ……」

「笑いすぎだろ」


 セイラの笑いが止まらず1分が経っただろうか。それでも同接数は伸びていて。え、これいまセイラが笑ってるだけだぞ?


「んふ、……録音しておけばよかった」

「安心しろ、セイラ。残念なことにアーカイブが残る」


 非常に残念なことにな。俺の言葉にセイラの3Dモデルがガタッと揺れてセイラが口元に両手を寄せて大声で叫び始める。


「切り抜き師さん~ボクのDMにさっきの部分の切り抜きのmp3データ投げといてくれるかい⁉」


『任された』

『なんならBGMつけようか?』

『3分ぐらいに編集する?』

『ループの切れ端分からないようにしとくね』


 お、俺の視聴者たちは俺を辱めることに余念がないぞ。全く、こいつらめー。


「ありがとう、お前ら。ボクのLEINの着信ボイスに使うよ」

「お、次は身バレで@ふぉーむさんの社長室行きか?」


『むしろ、俺ら全員でその着信ボイスを使えば……』

『木を隠すなら森の中、つまり……⁉』

『セイち、俺達とおそろやで』

『秋城、辱めていこうな』


「お前ら……‼」


 なんかお前らとセイラの間に妙な絆が生まれている。俺を全力で置き去りにして。


「いやいやいや。マジで使うなよ?それ最悪、俺も@ふぉーむさんの社長室に呼ばれるじゃねーか⁉」

「怒られるときは一緒だよ」

「巻き込むなァ—————‼‼」


 セイラは大分、自分の顔面の良さでごり押せば自分の思い通りになることを知っているのか、きらきらとしたエフェクトを漂わせ———いや、最早押し付けてくる。顔面の良さと一緒に。


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