でも、実際のところ。
きっちりうぃんたその疑問に答えていけば、うぃんたそは屁理屈を捏ねずに納得するわけで。
こういう飲み込みのいい人間は上達も早いぞ~なんて思いながら俺は自分の作業を進めながら指示を出す。
そうして、チキンライスを作り終わり、チキンライスをお皿の上に成形して、卵液の準備をして……オムライスは最終工程に辿り着く。尚、肉じゃがは綺麗に作り終わりましたとさ。
「さて、うぃんたそ。俺がお手本にうぃんたそのオムライスの卵を作る。んで、うぃんたそが俺のオムライスの卵を作る、おけ?」
「おっけいっ‼あ、あと、ケチャップ係はうぃんたそに任されよ!」
「おう、任せた」
『秋城のオムライス美味いんだろうな……』
『肉じゃがも美味そうだったしな』
『うぃんたそが秋城にハート書いたら……うっ……』
『ウッ……』
「んじゃあ、第一工程。フライパンを強火で温める」
「強火で温める」
ピ、ピ、とIHの設定を強火にする。待つこと30秒もないぐらいフライパンが温まって白い煙が立ち始める。
「んで、弱火に戻す」
「え⁉なんで?」
『なるほど、秋城……とろとろにする気だな?』
『うわ~~~絶対美味い~~~』
『うぃんたそを羨めばいいのか秋城を羨めばいいのか』
『火を通したくないなら強火、火を通したいなら弱火』
「お、お前らよく知ってるな。その通り、火を通したいなら弱火でじっくり、火を通したくないなら強火でサッとやるのがいいんだ」
なんて口を動かしながら、バター一切れをサッ、と落としてフライパンになじませる。そして、用意した卵液をフライパンに入れ———。
「此処からが時間との勝負だな。菜箸で卵を混ぜながら、……これはマジ、こうしか言えないんだけど……いい感じにする!」
『投げた!』
『だけど、マジでそう‼』
『なんかこういい感じに』
『説明しろ!秋城!』
「いや、無理無理!マジ無理!お、卵がいい感じに固まってきたな……?そうしたら、フライパンを揺らして」
フライパンを揺すって卵がフライパンにくっついていないことを確認して俺はチキンライスの上に……とろとろのオムライスのオムの部分を着地させる。
「こんなもんだな」
『888888888888888』
『お上手‼』
『ブラボー‼ブラボー‼』
『ナイス秋城』
「すっごーいっ。え、とろとろつやつや……え、え、あたしできるかなあ……⁉」
うぃんたそが拍手をしながら俺とオムライスを交互に見る。
「できるできる。まあ、多少火が通り過ぎても食べれない訳じゃないしな」
『そうそう』
『秋城を踏み台にしていこうぜ‼』
『運動もできて料理も上手いとか腹立つからな‼』
『私怨乙wwwwww』
「うっせ、人生2週目なんだから多少チート臭くてもいいだろぅ?」
料理は前世からの引継ぎだとしても、運動は前世での後悔から学習して積み重ねたものだ。なので、許されてほしい。そして、そんなことを言っている間にうぃんたそがコンロを強火にしてフライパンから白い煙が立ち始める。そして、弱火にして———。
「あ、秋城さぁん。バター行くよぉ……‼」
「そんなに怯えなくてもフライパンは襲い掛かってこないぞー」
「ひゃあい……‼」
『火傷に気を付けて』
『初めては怖いよね』
『秋城盾になれ』
『火傷したらお前の責任だからな⁉』
「ははは、うぃんたそが火傷したら信者として指切断配信をしてやろう」
「秋城さん駄目だからね⁉駄目だからね⁉」
うぃんたそは逃げ腰になりながらも、しっかり手はフライパンの柄を握り、涙目になりながらもしっかりフライパンを見つめている。
「た、卵さんいくよお……‼‼」
俺がやったように卵を一気にフライパンに広げるうぃんたそ。
「こ、こうだよね……⁉」
「もっと勢いよくやっても大丈夫!」
「はいぃっ!」
『うぃんたそ頑張れ』
『頑張れ!頑張れ‼』
『できてる!初めてにしては上手いよ‼』
『うぃんたそのオムライス食べたい‼』
応援コメントに背中を押されてなのか、だんだん逃げ腰が直ってくる。
「うぃんたそ、そのままこっち!」
「行くよぉっ!」
フライパンを揺すって卵が張り付いていないのを確認したうぃんたそは俺の指示に従い、卵をチキンライスの上に綺麗に着地させた。
「で……できたあっ!」
「お、うぃんたそフライパンは置け~」
フライパンを持ってぴょんぴょんと跳ねそうになるうぃんたそに微笑ましいものを感じながら、手からフライパンを奪おうと近づけば。
「できたよ‼秋城さんッ‼」
至近距離でにぱっと微笑むうぃんたそ……いや、降夜さん。
「っ、お、おう‼まあ、あとは一人でできれば一人前だな……‼」
声が僅かにうわずる。喉が引き攣るのを感じて、それを一生懸命取り繕う。
「ひ、一人で……これを、一人で……?」
うぃんたそはと言えば、フライパンをコンロの上に置いて顔を青くしたり、嬉しそうに屈まないようにオムライスを見つめたり。
(や、やべえ……)
心臓が心音が全速力で走った後のように勝手に走り出す。うぃんたその、降夜さんのさっきの笑顔が脳みそに張り付いて、離れない。全身がどくどくと脈打って、カァアアと熱くなる。
「えー、次もまた一緒に作ってよ。秋城さん」
そんな甘えるように振り向かれれば、返事なんて一つしかなくて。俺はうぃんたそに今の全てが勘づかれないようにいつものように返すのだ。
「またオフコラボするにしろ、同じメニューは作らんぞー」
バレてないよな?な?何度も自分に問いかけながら俺はいつも通りで俺を覆う。
「えー、また作ろうよーオムライス!」
「うぃんたそが完璧に一人で作り上げるならいいと思うが」
「それオフコラボの意味ないじゃん!」
『秋うぃん成分すげえ……』
『これが公式からお出しされるてえてえ……』
『うぃんたそ一人はまだ怖いけどな』
『まあ、秋城に監視させとけばまあ』