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第9章 わたあめ配信に新たな来訪者ってアリですか?③

ラスターファイナルがテキスト抜きで告知されたけどどう思う?】


「終わ……?お?」


 首を傾げ、なんのことか理解できていないうぃんたそ。まあ、これは仕方ない、完璧にバトマスの話題だ。この俺たちが水面下で動いていた数日間の間に、告知されたドラゴン終ファイナルという終わりに終わりを重ねた名前のカード。しかもテキストはまだ隠されていて、どんな効果か分からない。故に言えることは一つ。


「終わりの終わりって真の終末みたいでかっこいいよな……」


『お、小学生がいるぞ』

『うぃんたそに分かりやすく説明してやれw』

『分かる、終わりは何度重ねてもいい』

『♰真の終末♰』


「あー!なんか秋城さんが視聴者のみんなと分かり合ってる!ずるい‼うぃんたそにも教えて‼」

「あー、とな」


 ということで簡潔に終ファイナルのことを説明する俺。納得するうぃんたそ。


「えー‼終のシリーズってスタータとか亜種出てたよね?」

「ああ、でも、真の戦いを終わらせるドラゴンとして終の最後の姿ファイナルが実装されるんだ……いやあ、熱いよなあ……」

「それって新規案が出てないだけじゃ……」

「しッ、そんなことありません!」


 決してネタ切れして古いカードのリメイクばかり出しているわけじゃないんだからねっ……だよね?そうだよね?信じてるぞ?そんな一抹の不安に駆られながら俺は次のわたあめを用意する。恒例のSE、デンッ。


【××××××××‼】


「@ふぉーむさん仕事してえええええええええ‼」


 叫ぶ俺。これはだいぶ仕事していないと思う。こんな伏字だらけのわたあめを貫通させるな。


「いや、待って秋城さん!もう伏字で何言っているか分からない……これはあえて貫通させたわたあめだよ‼」

「大量の伏字はアウトの証だろっ⁉@ふぉーむさんになんでこれを通したか俺は真面目に問い詰めに行くぞ⁉」

「警備員さんに弾かれて終わりだよ‼」


『@ふぉーむお茶目だなあ……』

『まあ、伏字だから何言っているか分からないから……』 

『そこを想像するのが俺達の仕事‼』

『でも、此処までなにも分からないってマジで何書いてんだ……』


 そんなこんなで次のわたあめ。デンッ。


【うぃんたそ新規衣装おめでとう!秋城モデルアップデートしろ】 


「あは、伝説の幕開け配信のインパクトで薄れちゃったあたしの新規衣装のことだね⁉」

「すぅ————……サーセン」

「怒ってはいないよ?ただ、ちょっと……寂しいなあってだけで……でも、みんなの記憶にちゃんと留まってくれてて嬉しいよ!っていうことで~~~~?」


 うぃんたそがひらり、と回ればうぃんたその体が謎のきらきらとした光に包まれて、うぃんたそがこんこん、と足の爪先で床を叩けば、その光がはじける。さながら魔法少女の変身シーンのようだ。そうして、現れるのは———水着のうぃんたそ。いつものふんわりもこもことした衣装とは違って、体のラインがしっかり出る水着だ。そりゃもう、地平線の如く真っ平な胸までばっちり。


「む、なんか秋城さん失礼なこと考えてない?」

「ははは、なんのことかな」

「目が泳いでる~~~でも、此処でつつかないのがうぃんたそ。つついたらきっと蛇が出てくるからね!」


 しゃーっ、とうぃんたそは一回威嚇してから、えへんとない胸を張るのだった。


『うぃんたその水着かわええなあ……』

『つつましやかな可愛さだよな』

『胸も控えめで……』

『慎ましやか……』


「コメント欄‼信者のみんなはうぃんたそを泣かせたいのかな⁉かな⁉」


 胸を隠しながら半泣きになるうぃんたそに微笑ましいモノを感じながら、うーん、と声を上げる。


「新しいモデルなあ……」

「およ、なにかお悩みですかあ?秋城さん」

「いやさ、俺がこのモデル作ったの20年近く前じゃないですか?」


 つられて敬語になる俺。


「……さっすがに元の絵師さんやモデラーさんが引退しちゃってるんだよね……」

「あー……」


 そう、これは割と活動再開の序盤に調べたのだが。秋城のモデルを作ってくれた絵師さんもモデラーさんも数年前に加齢を理由に引退していた。まあ、分からなくはない。いくら、パソコン作業で拡大が効くと言っても50,60になって触り続けられるかは別だ。長時間座っているのも苦になってくるだろうし。


「ていうので、新しいモデル問題無茶苦茶悩んでるんだよな……あと、現代のVTuberモデルフルセットの相場が分からん」

「うーん、相場は絵師さんとモデラーさん次第だよね……あたしは@ふぉーむさんがお取引とか全部してくれたからなあ……」


 両方の人差し指で頭の横をぐりぐりしながらうぃんたそは難しそうな表情を浮かべる。


「あれ?でも、うぃんたそママとは仲いいよね?でも、お取引@ふぉーむさんだったん?」

「あー、えーと、お取引は@ふぉーむさんがしてくれたけど、やっぱりあたしの声のイメージとか活動方針とかとデザインをすり合わせるために何回か会議?みたいなのをやったんだよね~で、その時に意気投合して!って感じ」

「ほえ~」


 なるほど。ということは他の@ふぉーむのVTuberさんたちがママと仲いいのもそんな感じなのだろう。ちなみにママとは、所謂VTuberのガワを作ってくれる絵師……イラストレーターさんたちのことだ。ちなみにモデラーさんはパパと呼ばれることが多い。


『あるにゃママむっちゃうぃんたその絵描いてくれるもんな~』

『あるにゃママ溺愛だしな』

『娘にも愛されて……この親子はてえてえ』

『ちな水着もあるにゃママデザインだぜ』


「あるにゃママ紹介してもいいんだけど……今あるにゃママコミットの締め切りで忙しそうなんだよね~」

「ああ、夏コミット近いもんな……て、え、もう提出してなきゃいけない時期では……?」

「秋城さん、特急印刷って知ってる?」

「所謂極道入稿じゃないですかあ……」


『あるにゃ:ロン毛のイケメンが描けると聞いて 1000円』


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