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第135話 一人目~五人目

「ふふんっ、どう? 可愛い?」


「あはは、恥っず」


「ね〜」


「だ、大丈夫だよね? 私変じゃないよね!?」


 さて。せっかく月美さんがこだわり抜いて作ってくれたメイド服だ。俺が責任を持って彼女の気持ちを代弁し、解説パートを務めるとしようか。


 では早速。教室に入ってきた順で、まずはあの四人からだ。


 まずは一人目ーーーー月美玲那さん。


 濃い紫色にウルフカットが特徴の彼女が纏うのは、「ミニスカ」なメイド服。俗に言うジャパニーズメイドスタイルである。


「可愛いよ玲那ちゃんっ! 似合いすぎ〜!!」


「ほんと? ふふっ、そう言ってもらえると家庭科部冥利に尽きるってもんよ!」


 普段はだぼっとしたニットセーターを萌え袖気味に着こなしている彼女の、普段のイメージとは裏腹にふりふりを全開にした可愛らしいメイド姿。まるで本当に隠れてメイド喫茶で普段からバイトでもしていたのかと思うほどの完成度の高さと、そのギャップに。女子からは黄色い声援が、そして男子からは怒号にも近い歓喜の声が。それぞれ飛び交っていた。


「玲那っち大人気じゃ〜ん。ま、私たちもなんか大歓迎はされてるみたいだけど?」


「特に男子からね〜。キモ〜い」


 次に二人目と三人目ーーーー夏目有紗さんに、冬木楓さん。


 二人は所謂ギャルである。夏目さんは金髪ロングヘアで、冬木さんは黒髪ロングに青のインナーカラー。そのうえで耳のピアスも何個も開けている、まさに典型的な存在なのだが。そんな彼女らにチョイスされたメイド服は「クラシカル」。伝統的なメイドスタイルを残しつつも現代的なアレンジを施した一品だ。


 こちらは月美さんの着ているものとは違いロングスカートで、ふりふりは少なめに構成されている。なるほど、どうやら彼女は今回メイド服を作るうえで″普段とのギャップ″を意識したらしいな。


 しかしギャップを生むというのはそう安易にできることではない。なにせそれを意識してコーディネートするということは即ち、「似合わない」という危険性を孕むことに他ならないからだ。


 だというのに。なんだ、あの圧倒的完成度は。


「なあ、夏目と冬木さ」


「思った。あの二人、あんな清楚全開の服装できるんだな。めちゃくちゃ可愛いしよ」


「ヤバい。俺冬木のこと好きになりそう……」


 そりゃあ恋に落ちる男子の一人や二人、な。現れて然るべきというか。月美さんの技量、恐るべし。


 っと……まだ三人目だったな。次だ次。


 既にクラスに一人いるだけで充分にメイド喫茶としてやっていけそうなほどに完成度の高いエース級が連立している中。ここで迎える四人目はーーーー江崎小町さん。


「うぅ。やっぱり私のだけ全然みんなと違う。玲那ちゃんのばかぁ……っ!」


 オレンジ色のセミロングな髪を後ろで小さく左右二つに分けて纏めており、そのうえで童顔や低身長といった特徴からも年齢より幼く見える彼女に選ばれたのは、「和服風メイド服」。


 本人もぼやいているとおり、たしかにこれまでの三人とは全く違う、まさに異色と言って遜色ない選定だ。しかしこれが中々どうして……めちゃくちゃ似合っている。


 普段はイメージで言えば中山さんに近く、健康的でハツラツなイメージのある女子だ。それがまさか和服メイドになった途端、これほどまでに別方向の破壊力を得るとは。思いもしなかった。


「ぐっ……な、なでなでしたいっ!!」


「なんだこの感情? これはまさか、恋?」


「合法ロリメイド!! 合法ロリメイドッ!!」


 おっと、犯罪者予備軍が湧き初めているのは一旦見なかったことにしておこうか。


 ま、まあその、なんだ。それだけ、彼女の幼い部分も含めた魅力を全面的にこの和服メイドがしっかりと押し出しているということだよな、うん。


(これでようやく半分、か。濃いな……)


 さてさて。初登場キャラも織り交ぜながらのメイドさん紹介も、いよいよ折り返し。


 月美さんの圧倒的手芸スキルに、そもそもの顔面偏差値が高い女子たち。このコンボによってめちゃくちゃレベルの高いメイドさんが四人も生成されたわけだが。ここで終わらないのが我が一年三組だ。


「「「「「おぉっ……!!」」」」」


「うむ、くるしゅうない。中々悪くない反応だぞお前ら」


 ここで満を持して登場した五人目はーーーー桜木芽衣先生。見た目だけは良いと普段から裏で言われ続けている先生の大人な身体を包むのは、「バニー風メイド服」。


 全男子を釘付けにする豊満な″果実″を強調するかのような若干露出の多い上半身に、露出こそ少ないものの逆に露出しないことを武器として振るう網タイツを装備した下半身。そして極め付けに、普段は下ろしている黒髪をポニーテールにして結んだその頭のてっぺんに付けられた兎耳カチューシャ。これは……男子としては、目を奪われないのは無理ってものだろう。


 普段のだらしない先生を知っている俺たちからすれば非常にムカつく話だが。……駄目だ、めちゃくちゃ似合ってる。


「はは、この劣情に塗れた視線を浴びせられまくってる状態で煙草が吸えたらさぞかし美味かっただろうになあ。学内が禁煙なのが残念だよ」


「クソッ、台詞はブラ◯ク◯グーン出れそうなくらいやさぐれてるのに! めちゃくちゃ美人だ……っ!!」


「教師のしていい姿と似合い方か!? これがっ!!」


「ふ、踏まれたい……」


「早まるなお前っ! あれに貢いだら終わりだぞ!?」


 さて、残るメイドさんはあと三人。もう既に男子どもはその総数の半分以上が色々な方向に歪まされているが。まだ、終わらない。終わるわけにはいかない。



 来たる、六人目はーーーー

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