「この三年間本当に色々な事がありました。魔族との戦いに決着、私達冒険者学園の生徒は、自らの足で新たな道を歩まねばならなくなりました」
卒業生代表の挨拶を私は黙って聞いていた。こうしていると、一年生の始業式を思い出す。あの時の私は本当に非常識で、会場に入ると同時に干し草を両手に持ってタフガイに飛び掛かっていたっけ。…本当に何をしてたんだ、昔の私は。
まあ、今も非常識な私だけど、あの頃に比べれば分別はつくようになったとは思う。
「…これを持って、卒業生からの送る言葉の締めくくりとさせていただきます。三年A組、リー・ラオ」
リー君の挨拶が終わり、卒業式もいよいよ大詰めだ。大魔王の撃破後、フリーダさんとブーン様が国政に参加し、学園に殆ど来なくなったので、三年生最後の行事となる魂焼覇気は、本命不在の大混戦となった。そして、そのトーナメントを勝ち上がり優勝したリー君が、卒業生代表となったのだ。私も、決勝までは行けたんだけど、リー君がガッチガチに私への対策立ててきたので、準優勝に終わってしまった。
思い返してみると、この三年間で一番のライバルポジションだったのは、フリーダさんでもプリンちゃんでも、ましてやスグニでも無く、リー君だったのかも知れない。ごるびんの死体から二十万エンの古代貨幣を奪われたのを始めとし、その他にも使い魔でドナベさんとフリーダさんの意思疎通の手助けをしたり、対抗戦で勝ったり負けたりもしたし、ドナベさんの取り合いになったりもした。
そして、魂焼覇気決勝での直接対決によって、私達の因縁への決着となったのだった。
「雑炊、悔しいかい?」
頭の上でムッシー…じゃなくてドナベさんが聞いてくる。
「まー、悔しくないって言ったら嘘になるけど、学生時代なんで長い人生のほんの僅か。勝負はここからだよ」
私がドナベさんとヒソヒソと会話するのを見て、卒業式中だから静かにしろと言いたげな目で睨んでくる人はチラホラ居たが、ドナベさんの存在自体を疑問視する人は、どこにも居なかった。
その理由は、これが皆にとって見慣れた光景だからである。ドナベさんが戻ってきた日から卒業式までの間、私は毎日ドナベさんを頭に乗せて冒険者学園に通っていた。ドナベさんの事は、私の新しい使い魔として周囲に認知されていった。
彼女を大魔王と呼ぶ者は誰も居なかった。一般人から見たら人形タイプの使い魔だし、国王等の大魔王の顔だけを知ってる人から見たら新しい使い魔を作り直したと思われるだろうし、全部知ってるフリーダさん達は黙っててくれる。つまりは問題ナッシンだった。
「さーて、こちらでのやる事も終わったし行きますか」
「うん、行かなきゃね。僕のボデーを取り戻しに魔界へ」
卒業式も無事終わり、寮の鍵も返した。私が卒業した事で、ゲームのシナリオは全て消化し、ベストエンドが確定した。なのでもう、ドナベさんが首だけの状態でいる必要も無いと判断した私達は、魔界に置きっぱなしになっていた首から下を回収しに行く事にしたのだ。
既にフリーダさんに話は通している。オフィスさっちゃんもエレベーターも顔パスで通過し、魔界の人達に地上のお土産を渡したら、大魔王の城へレッツゴー。
だが、そこにはドナベさんのボデーは無かった。
「テラワロスさん、ここに置いてあった僕のボデー知らない?」
ドナベさんが団子屋のおばあさんに話を聞くと、彼女は新商品の次郎ダンゴを出しながら答えた。
「武者小路さんが引退して、私が大魔王に復帰した頃に、スグニっていうテリウスみたいな顔をした人間がアイテムボックスに入れて持ち去りましたよ」
「アイツ、アイテムボックス使えたのかよ!私は未だ使えないのに!って、今はそんな事はどうでもいい。モグモグ、そいつは今どこに?」
私は次郎ダンゴを一気に体内に流し込むと、おばあさんにスグニの行方を聞いた。
「安住の地を求めて、妖精さんを連れて旅立って行きましたよ」
「ありがと、ダンゴ美味しかったよ。スグニの奴、見つけ次第ボコボコにしちゃる!行くよドナベさん!」
「ああ、僕のボデーを何としても取り返してやる!スグニとグロリアめ、僕に何の恨みがあってこんな事を!」
私とドナベさんは、怒りで顔を真っ赤にしながらスグニとクロリアの行方を追った。あいつらが、ドナベさんのボデーを持ち逃げしてしまったのは、うっかりなのかワザとなのかは分からないが、見つけ次第ボコるのは確定だ。
「月末に皆でファミレスに集まる約束してたから、それまでに見つけ出したいね」
「そうだね。雑炊、道案内は僕に任せて。元大魔王にして乙女ゲームマスターの土地勘を見せてあげるよ」
「おけ!案内は任せたよ!」
私は便座に飛び乗り、魔界を駆け抜ける。
「スグニー!グロリアー!出てきやがれー!」
「僕のボデー返してー!」
私達はスグニとグロリアを追って魔界中を飛び回り、その道中でまた変な事件に巻き込まれる事になるのだが、それはまたいつか別の機会に話すとしよう。
『ドナベさん・完』