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第七十二話【ダイエットだよ全員集合な模様】

 このエクストラダンジョンのゴールで待ってるかも知れないドナベさん、お元気ですか?私達は多分全員ドナベさんの事を忘れて、次郎食べたさでダンジョン攻略しています。


【プレミア付きガマおやびん】

 身体の模様が反転している、世にも珍しいガマおやびん。その皮膚から作ったコートは魔法を高確率で反射するという。


「テリウス流剣術三百六十五の太刀!」

「ガマー!」

 最強のガマはブーン様の剣術でバラバラになった。


【メモリーマン】

 冒険者の死体に入った霧状の魔物が鍛錬を続け、本物を超えた達人となった。見た目は完全に白骨死体だが、その立ち姿は正に武を完成させた者である。


「重力極大化でぶわ」

「せ、せめて殴り合いをしたかった!」

 最強のロストマンは、フリーダさんの重力魔法で自重に耐え切れず粉砕骨折で死んだ。


【ミミックのミミック】

 冒険者達が、『もうミミックなんて怖くない』と思った頃にミミックに擬態して現れる。その手口で数多の冒険者を屠りたいけれど、活躍する機会は中々得られない。


「おし、後ろに回り込んで開けるか」

「ギャギャー!」

 最強のミミックは、背後に回り込んだタフガイによって、口を可動域以上に開かされて死んだ。

「うーん、順調!最初の次郎が鬼門だったけれど、そこを抜けると一気に進めたね」

「ブヒブヒ」

 やはり最強…!ヒロインと悪役令嬢と攻略対象と魔王のパーティに隙はナッシン!

「さてと、そろそろ次のフロアへの階段と思うんだけど」

 私も色んなダンジョンに潜って来たから、階段までの道程は大体勘で分かるようになって来ていた。

「多分、ここを曲がれば、ほらあった。ってアレ?」

 次のフロアへ降りる手段は確かにあった。だけど、それは階段じゃ無かった。

「え、エスカレーター?」

「雑炊さん、これはエレベーターでぶわ。箱に入るのがエレベーター、階段が動くのがエスカレーターでぶわ」

「し、知ってるよ!」

 そう、これはエレベーター。ラスダンにフリーダさんが設置したのと同じやつだ。そして、近くに階段は見当たらないから、これで降りるしか無い。私達は罠に気を付けながらエレベーターに入る。

 ブー!

「雑炊さん、こんな狭い場所でオナラはご勘弁でぶわ」

「私じゃないよ。おっかさん?」

「ブヒブヒ」

 私でもおっかさんでも無い。なら、このオナラみたいな音は一体?

 ブー!

「…これ、制限重量オーバーしてるんじゃ無いかな?えーと、このエレベーターの制限重量は」

 私はエレベーターの中を確認すると、開閉ボタンの上に制限重量についての注意書きがあった。


『ここまて良く辿り着いたね。このエレベーターを使えば、僕の所まで後一息。でも、このエレベーターには君とその仲間達のデータが登録してあるんだ。君達がここに来るまでに次郎でデブ化していたら、動かない様にしておいた。まあ、君達ならこんな罠に引っ掛からないと思うけど…もし、次郎を食べてデブってたなら、ダンジョンに入った時の体重に戻してからまた来てね。うぷぷぷ。大魔王より愛を込めて』


「全部大魔王の掌の上ー!」

 踊らされていた事に気付かされた私達は、次郎を食べたいという欲求を完全に失い正気へと戻った。そして、デブになってしまった己を振り返り愕然とした。

「私達は一体何をしていたの!何だよ、このハラは!?」

「雑炊さん、落ち着くのでぶわ。一旦、帰りましょう」

「ブヒブヒ」

 エレベーターに書いてある事を全面的に信用して良いかは疑問だが、ダイエットしなきゃならないのだけは確かである。なんせ、莫大なレベルアップで誤魔化されてはいるが、このボデーでは私達の本来のポテンシャルを出せる訳が無い。逆に言えば、ここから痩せて更に強くなれるって訳だ。

「フリーダさんの言う通りだね。このダンジョンに攻略時間制限がある訳じゃ無いし、戻ろう」

 こうして、エクストラダンジョン攻略はラスボス手前で中断、私達はダイエットという未知の敵との勝負に挑む事となったのだった。

「でもさ、元の体重って言っても、私、自分の体重なんて学校とギルドの身体測定でしか測って無いから覚えて無いよ」

「二年生になった時点で、ブーン様62キロ、リーさん55キロ、タフガイさん90キロ、雑炊さん48キロ、サフランさん不明、そして私が43キロでぶわ」

 フリーダさんが、めっちゃ早口で全員の体重を言ってくれた。

「フリーダさんスゴイ!でも、何で知ってるの?」

「ブォーフォフォフォ!公式ガイドブックに書いてあるデータを丸暗記していたのでぶわ!後は、今の体重を知るだけでぶわね。でも、普通に測るのもつまらないでぶわ」

 オフィスさっちゃんかフリーダさんの家で測れば良い話だと思うのだが、フリーダさんに考えがあると言うのならそれに従おう。ドナベさんが居なくなった今、攻略情報を持っているのはフリーダさんだけなのだから。


 で、フリーダさんの指定した体重を測る場所なんだけど、それが何と冒険者学園の体育館だった。

「おい、見ろよ!二年A組のトップ5と知らないオバハンが壇上に居るぞ!」

「男子はブリーフで女子は水着姿で体型の誤魔化しようの無い見た目だ!そして、中央には体重計が置いてある!い、一体何が始まるって言うんだー!?」

 緊急の全校集会で集められた生徒達がざわめく。それはそうだ。冒険者学園の華にして、王国に多大な影響を与えてきたフリーダさんとその仲間が別人の様になって現れたもんね。

「ごきげんよう、フリーダ・フォン・ブルーレイでぶわ。本日皆様にお集まり頂いたのは、ダンジョン攻略のお手伝いをして貰いたい為なのでぶわ」

 私達と学生の皆に向けての、フリーダさんの説明が始まった。

「現在、この壇上に居る私達六人は、新発見されたダンジョンに挑んでますわ。ですが、敵の卑劣な罠に掛かりこの様な姿となり、完全攻略一歩手前で足踏みしている状況でぶわ」

 私達が全員太っている原因を知り、学生達に不安が走る。フリーダさんが激太りする程のダンジョン、それを聞いただけで普通の学生は近付くのも嫌になっただろう。

「あの〜、もしかして、太っちゃった皆さんに代わって、私達にそのダンジョンを攻略して欲しいって話ですか〜?」

「ではありませんわ」

 プリンちゃんが手を挙げて質問する。が、それはシッカリと否定された。

「そのダンジョンの最深部に行くには、ダンジョンに入った時の体重に戻らなくてはならないのでぶわ。皆様には、私達のダイエットのお手伝いをして欲しいのでぶわ」

 学生達の間に安堵のため息が漏れる。だけど、質問したプリンちゃんの他にトムやボルトやらの数名は不満気な表情を浮かべていた。きっと、自分達がそのダンジョンへ行くメンバーに選ばれ無かった事が不満だったのだろうけれど、戦闘力とチームワークを考えるとこの壇上の六人にならざるを得ないのだ。

 許せ、君達。完全攻略したら、一般にもダンジョン開放出来ないか相談してみるから、もうちょっと待ってくれい。

「それでは、これより体重測定を開始しますわ!まずは私から、ハーッ!」

 ズシーン!

 フリーダさんが体重計に乗った途端、針が大きく揺れ動き、76キロを指して止まった。

「フリーダ・フォン・ブルーレイ、記録76キロ、元の体重43キロより33キロプラス!」

 校長先生が記録を全校生徒に聞こえる様に発表する。成る程、こうして皆の前で体重を伝える事でダイエットへ自分を追い込むのか。…って、コレ凄く恥ずかしいんですけど!

「皆よ臆するな、フリーダに続け!」

「おう!」

「分かりましたよ、やるしかありませんね」

 ズシーン!

「ブーン・フォン・アークボルト、98キロ。元の体重62キロから36キロプラス!」

 ズシーン!

「タフガイ・マキシマム、180キロ。元の体重90キロから90キロプラス!」

 ズシーン!

「リー・ラオ、60キロ。元の体重55キロから5キロプラス!」

 ああっ、躊躇してる間に男どもが計量済ませやがった!こーゆーのって、最後に残される方が恥ずかしいのに!

「おっかさん、先に行くね!」

 オチ担当だけは嫌だと思った私は、体重計に向かおうとしていたおっかさんを押しのけて体重計に飛び乗った。

ズシーン!

「雑炊、50キロ。元の体重48キロからプラス2キロ!」

 良かった、思ったより増えて無い。そう思ったのも束の間、フリーダさんが私の肩をガッシリと掴み、体重計の方へと押し戻した。

「雑炊さん、もう一回測り直しなさい。見た目がそんだけ変化したのにプラス2キロはおかしいでぶわ」

「何よ、自分がデブったのに私が変化少なかったのが許せないの?まあ、そこまで言うならもう一回乗っても良いけど」

 フリーダさんに勝利した気分になった私は、今度はゆっくりと体重計に乗る。

 ズシーン!

「雑炊、50…いや、60…70…これは、針がどんどん進んでおる!」

 体重計の針はどんどん進んて行き、グルリと一周した後に50キロで止まった。

「この体重計は300キロまで測れる。よって、チミの体重は350キロ。元の48キロから302キロプラスじゃ!」

 校長先生が目を見開き驚き、学生達からは悲鳴が溢れる。皆が私の事をおかしいという目て見ている。

「私の体重がおかしいって皆思ってるよね?それって…少なす」

「「「多すぎー!!!」」」

 ちゅどーん!

 会場に居るほぼ全員が私をデブだと叫んだ瞬間、真横で爆発が起こった。おっかさんの体重に、体重計が耐えきれなかったのだ。

「雑炊のお母さん、測定不能。元の体重なんて知らんけど、多分凄いプラス!」

 爆発に巻き込まれた校長先生が、黒焦げになりながらも最後まで仕事をやり遂げ、体重発表会は終わった。さあ、痩せるぞ!

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